HOME > ゆまにだより一覧

ゆまにだより

検索すると見えてくる、新しい書籍の魅力(第一営業部 H.K) 投稿日:2018/05/09 NEW!

検索すると見えてくる、新しい書籍の魅力(第一営業部 H.K)

 先日、ふと「電子書籍元年」という言葉があったなあと思い、それはいつのことを指すのか調べてみました。
2010年のことを指す言葉のようですね。
あれから早くも8年が経ったのですね。

 ゆまに書房では比較的に早くから電子書籍を提供させていただいたと自負しておりますが、現在ではネットアドバンス、丸善雄松堂、EBSCO JAPAN、紀伊國屋書店の各社が運営されているプラットフォームに電子書籍を搭載していただいております。
最近電子書籍のご注文を頂くことが増えてきているなあと実感できるようになりました。
本当にありがとうございます。

今回改めてどのプラットフォームにどのタイトルを搭載していただいているかをまとめてホームページに掲載してみました。
http://www.yumani.co.jp/np/searchresult.html?lgen_id=16

ホームページに今まで「電子書籍」の項目はありましたが、あまり使っておりませんでしたので、ページがとても賑やかになりました。
各プラットフォームに搭載していただいているタイトルも少しずつではありますが増えてきており、ちょっと誇らしい感じがします。

 もうみなさんご存じのことでしょうが、電子書籍の魅力はその検索にあると思います。
実際に使ってみると本当に面白くて色々検索してしまって、時間が過ぎていきます。
その中には思わぬ発見があるのも少なくありません。

例えば小社の電子書籍には「社史で見る日本経済史 植民地編」や「社史で見る日本のモノづくり」というシリーズがあります。
企業の歴史を研究される方がよく使われる資料である社史ですが、それのみならず様々な周辺情報が入っているのも社史の魅力です。
それを引き出すためには検索してみるのが一番ではないかと思います。

今回1つの例を御案内しますね。
小社では最近観光、ツーリズムに関する書籍を多数刊行しております。
「社史で見る日本経済史 植民地編」シリーズの中にも「東亜旅行社満洲支部十五年誌」という社史が収録されていますが、その他の社史にも何か観光に関する情報が無いか調べて見るために「観光」という用語で検索してみました。


すると「朝鮮瓦斯電気株式会社発達史」の中にこの会社の電気の供給地域の特色や名勝を紹介した章を見つけることができました。
(上の図を参照ください。丸善雄松堂さんの電子書籍プラットフォーム Maruzen eBook Libraryでの検索結果をご紹介します。)

何故この会社の社史に観光に関する記事が?と不思議に思いましたが、この会社は温泉の開発や電車の経営も行っていたそうなので、そのアピールのためだったのかも知れません。
とても興味深い結果を得ることができました。
さらにこの「社史で見る日本経済史 植民地編」シリーズ全体で「電車」というキーワードで検索してみると他の電気会社である「京城電気」の社史の中にもやはり電車の経営に関する記述がありました。
そしてこの社史を読んでいくと朝鮮と満洲の旅行プランなども載っていて…などなど、色々な関連も見えてきて、興味が尽きることがありません。

このような結果が得られるのは全文検索できる電子書籍ならではないでしょうか。
楽しいので是非みなさんにもトライしていただけたらと思うのですが…

 また最近、北米の大学図書館のライブラリアンの方たちとの共同企画で小社の学術書籍目次データを少しずつですが公開しております。
こちらはこのプログラム(http://current.ndl.go.jp/node/27968)の成果として作られたもので、マルチボリュームセットと言われる他巻に及ぶセットの目次をPDF,テキスト化して公開することで第何巻の何ページに必要な記事や文が載っているかを検索して知ることができると言うものです。
ゆまに書房からは18タイトルの目次データを提供いたしました。
https://digital.lib.washington.edu/researchworks/handle/1773/41429
もちろん1巻ずつ読んで行って必要な記事などを発見した場合の喜びはひとしおでしょうが、お忙しい方には是非検索していただきたいですね。
目的に早くたどり着けると思います。
他の出版社さんのタイトルも載っていますよ。

 目次のデータも検索してみると新たな発見があるので楽しいですよね。
まだこちらは公開していないのですが、私も編集担当者に「ジャパン・ツーリスト・ビューロー
ツーリスト 第Ⅰ期 大正篇 」の目次データをもらったので色々並べ替えてみたりしています。
http://www.yumani.co.jp/np/isbn/9784843351833

どんな著名な人が執筆しているのだろう?当時の外国人旅行客は日本の何に興味を持っているのか?外国人旅行客が沢山滞在しているのはどこ?などなど目次を見てみると分かることが沢山あります。
このデータを見ることによって私もセールストークが増えましたし、どのお客さんにお勧めしたら良いのかイメージが湧くようになりました。
時間があったら目次にキーワードを付けて並べ替えてみたいとも思っていたりします。
今後もじっくり見てみます。

 電子書籍も目次データもゆまに書房の刊行物のおもしろさをより伝えることができ、違ったおもしろさを見つけていただく良いツールだと思っています。
今後も引き続き電子書籍タイトルや目次データをご提供できるように努力して参りますので、是非ご支援ください!

『昭和天皇戦後巡幸資料集成』の刊行に際して(出版部 M) 投稿日:2018/04/10

『昭和天皇戦後巡幸資料集成』の刊行に際して(出版部 M)

 弊社は、今年4月より3回に分けて、昭和天皇の戦後巡幸に関する公式資料を収集したシリーズ『昭和天皇戦後巡幸資料集成』を刊行する。
 現在、今上天皇の生前退位の影響から、昭和天皇の事蹟への関心も高まり、ドキュメンタリー番組の放送やノンフィクションの刊行が相次いでいる。
 こうした一連のブームにあやかったわけではないが、資料出版として戦後巡幸にスポットを当ててみようと思ったのは昨夏のことである。きっかけはほんの些細なことで、「歴史の教科書で読んだ、戦後巡幸とはなんだったのだろう」とふと思い出したに過ぎない。
 明治から昭和戦前期にかけて、巡幸のあった地方ではこれを記念する「巡幸誌」を刊行していたことは知っていたため、国会図書館等で戦後の「巡幸誌」を探して見た。最初は、20点程度、復刻版にして10巻で収まるかと思っていたが、徹底的に調べてみると40点ほどあり、これを収録すると全18巻という、やや長めのシリーズとなることが判明した。
 そのため、秋からは全国各地の図書館に電話して、資料借用のお願いをする日々が続いた。突然の依頼を受けた職員の方からは、困惑されるやらあきれられるやらで、ご迷惑をおかけしたが、最終的には多くの図書館より利用を承諾していただいた。また、近現代の天皇制を専攻されている瀬畑源長野県短期大学助教にこの企画を提案したところ、快く監修を引き受けてくださった。その他、このシリーズの刊行には、数えきれないほど多くの方よりご協力をいただている。心より感謝を申し上げる次第である。
 「巡幸誌」は記念品として、県や市の担当課が精魂を込めて作成したものである。とはいえ、その多くは図書館の隅に埋もれ、長い間読む人もいなかったようである。しかし、これらの忘れられた資料であっても、テーマを定めて根気よく探求していけば、新たな価値を発揮するということは、意外な発見であった。
 本シリーズは、こうして昭和21年から30年までの「巡幸誌」を収集し、再び世に出す目処がついた。
 昭和30年代以降、天皇の地方巡幸は国民体育大会や植樹祭といった定例的な行事を中心として継続されることとなる。平成に入ってからは、大規模災害の起こった地域において、被災者の慰問のために行われることも多くなった。こうした定例行事や慰問が終了したあとも、「巡幸誌」はその記録として続々と作成され続けている。最近の「巡幸誌」においても、天皇と国民との直接対話の出発点として、戦後巡幸は必ず言及される。
 こうして見れば、戦前、戦後、そして現代という時代の変遷はあれ、「巡幸誌」は天皇制のあり方を記録した重要な資料であることは間違いない。
 本シリーズが民主・平和国家の建設へと踏み出そうとした戦後の一時期を検証する資料として活用されれば幸いである。

〝ざんねんな〟?陳列(第二営業部 T) 投稿日:2018/03/12

〝ざんねんな〟?陳列(第二営業部 T)

 以前、外商専門書店に勤めていたときに、優秀な営業マンになるには、とにかく類書との違いがきちんと説明できること!と、教わったことがある…。そのことをふと思い出した場面に最近遭遇した。

 ゆまに書房は、日本ライブラリー出版会(明石書店・岩波書店・河出書房新社・三省堂・日本図書センター・平凡社・丸善出版・山と溪谷社・ゆまに書房・吉川弘文館の10社からなるグループ。全国の学校・公共図書館に営業・巡回販売を行っている)に所属しており、先日、たまたま営業先の学校で、二社の類書パンフレットを案内する際に、その違いが全くわからなかった。
 
 もし、一方でも自社の本であれば、きちんとその違いが説明できたであろうに、全くの勉強不足だったことを反省している。

 まあ、このご時世、類書でごった返してることの否めないのが現在の書店業界ではあるのだが・・・。
 何か一つ本がヒットすれば、そこに二匹目のドジョウを求め、ここぞとばかりにたちまち類似の本が群がり、溢れ返るのである。

 例えば、高橋書店の「ざんねんないきもの事典」という本が、シリーズ2冊で累計160万部を突破するという大ヒットを記録している。
すると、すかさず書店の店頭には、同じようなタイトルの本が一緒に並ぶ。
それがまた、相乗効果で売れてしまうというのだから、決して侮れない。
  
 完全な類書ではないのだが、そこには、ゆまに書房の「日本人と動物の歴史(全3巻)」は並んでいなかった…。
 ここからが本題なので、もう一度だけ言う。
ゆまに書房の「日本人と動物の歴史(全3巻)」は並んでいなかったのである。

 なぜなら、我々営業マンの宣伝不足なのか、冒頭に書いた類書との違いを説明し、新旧問わず店頭に並べてもらえてないことが要因なのかもしれない。
相乗効果で類書も併せて売れるのであれば、もちろんスペースに限りはあるが、そこにありったけの類書を並べてもらえたらな・・・と思わずにはいられない。

 「日本人と動物の歴史」には、他社ベストセラーに負けない雑学要素もたっぷりと盛り込まてていて、読んでいて実に面白いのだ。
 例えば、みつばちは、法律上は家畜に位置づけられているとか、カモシカは、シカの仲間ではなくウシ科の動物であるとか、クジラは、DNA分類ではカバの仲間であるとか、アシカとアザラシの決定的な違いはこうであるとか、どれを取っても写真や図版と一緒に歴史的な事柄とを結びつけた、大変ためになる情報ばかりで、子どもはもちろん、大人が読んでも楽しめる本になっている。

 しかも、代表的な50の動物を取り上げており、そこには、現在、上野動物園を賑わせているシャンシャンこと、パンダも登場する(残念ながら、シャンシャンの記述はないが・・・)。
 それもそのはず、著者は上野動物園の元園長さんなんです!

 「ざんねんないきもの事典」シリーズが、現在も書店の店頭で展開して売れているので、「日本人と動物の歴史(全3巻)」も一緒に並べていただいたり、紹介をさせていただいて、是非、多くの人に手に取ってもらって、見比べていただきたいと改めて思った次第です。

二冊の本(出版部 K) 投稿日:2018/02/09

職場の同僚が一冊の本を見せてくれた。『戦争調査会―幻の政府文書を読み解く』(井上寿一著・講談社現代新書)である。小社刊行『戦争調査会事務局書類』(全15巻)(広瀬順皓監修・長谷川貴志解題)が活用されているようだ。
 幣原喜重郎が、「今次ノ戦争敗北ノ原因及ビ実相ヲ明カニセムガ為二」1945年11月に創立し、活動を始めた戦争調査会は、委員と職員合わせて約100名という大プロジェクトであった。英知を集めて、なぜ戦争を始めてしまったのか、なぜ、途中でやめられなかったか、そしてなぜ負けたか、を研究しようとしたのだ。しかし翌年には連合軍に解散させられることになった。ただし、その記録は「戦争調査会事務局書類」という形で残された。その史料を読み解くことにより、得るものがさまざまにあるということである。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 同じ同僚が、また別の一冊の本を見せてくれた。『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(吉田裕著・中公文庫)という本である。その「はじめに」に、小社刊行『マッカーサーと戦った日本軍―ニューギニア戦の記録』(田中宏巳著)からの引用がある。

  日本では、開戦に至る経緯と終戦およびその後の占領政策に関する研究が盛んで、
政治史や近代史の研究者が非常に沢山の成果をあげてきた。しかし開戦と終戦の間、つまり煙管の筒の部分である戦争そのものを取り上げる研究者は少ない。戦争を対象にするのは「戦史」で、それは政治学や歴史学を専攻する研究者のやることではないとでも考えているのか、まったく手をつけようとしない。

 この投げかけに応えるため、「歴史学の立場から「戦史」を主題化してみたい」としてまとめられたのが『日本軍兵士』である。1章で、兵士の戦病死、餓死、海没死、自殺などを述べ、2章では、体力、栄養、装備などに注目する。3章では軍事思想、軍の組織的欠陥、また、国家としての立ち遅れを指摘する。
 そうしたことに関心がある読者には、あらためて『マッカーサーと戦った日本―ニューギニア戦の記録』をお勧めしたい。様々な史料に当たり、現地の土を踏んで、一つ一つの作戦・戦闘を解説し、全体の戦況をについて述べる「史書」であるが、無謀な行軍の果てに泥濘に立ってまま死んだ兵士、移動する将軍を警護する台湾原住民出身の兵士たち、また、日本の漁村から徴用され最後はどこでどうなったかわからない漁船乗り組み員など、ひとりひとりの人間にとって戦争とは何だったのかを考えさせる本である。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 今そこにある危機としての北朝鮮問題、そして米軍基地問題、世界各地の戦闘やテロ、今後の政治の動きの中で大きな問題となる憲法問題、国際的な場で進められている核兵器廃絶の動き等々、日本国民として考えるべきことがたくさんある。そのために、今、小社の出版物がなにがしか役に立てれば、と思う次第である。

 追記:小社刊『15歳の短歌・俳句・川柳』③には「どうして戦争があるの?」という章がある。そこに載っている半田良平の一首を思い出した。
若きらが親に先立ち去(い)ぬる世を幾世し積まば国は栄えむ (半田良平)

新春のご挨拶 投稿日:2018/01/12

新春のご挨拶

 新春のご挨拶を申し上げます。
 旧年中は格別のご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
 
 昨年9月、プライベート旅行でフランスに行った。3回目の訪問である。パリのSAINT-GERMAIN-DES-PRES(サンジェルマン・デ・プレ)が特にお気に入りで、その大通りは今でも昔の良きパリの面影を残し、今では唯一パリの知性と文化を醸し出すところである。そのSAINT-GERMAIN-DES-PRESはセーヌ川の左岸にある大通りで、オルセー美術館からソルボンヌ大学やコレージュ・ド・フランスなど多くの大学があるQUARTIER LATAIN(カルチェ ラタン)に続く。その大通りの中心的な場所に「LES DEUX MAGOTS」(レ ドゥー マゴ)や「Café de FLORE」(カフェ・ド・フロール)、「Brasserie LIPP」(ブラッスリー リップ)などの有名なカフェが居並ぶ。これらの三つのカフェは第二次世界大戦後、サルトルやボーボォワール、カミュ、グレコ、ゴダールたち哲学者や芸術家、文学者たちのたまり場で日常的に議論を交わされたことで世界的に著名なカフェである。特に「LES DEUX MAGOTS」は1933年に「DEUX MAGOTS賞」を、「Café de FLORE」も1994年にフロール賞をそれぞれ設立し、無名作家たちを支援している。

 私は「LES DEUX MAGOTS」の通りに面したテラスでワイン(やはりここでは白ワインがいい)
を飲みながら過ごす時間がたまらなく好きである。かつて20代の中ごろ私は「LESDEUXMAGOTS」にあこがれて出版社を立ち上げた。もう44年も前のことである。理想ばかりが先行して、思いの半分も目標を達成することが出来ていない。理想と現実の乖離に戸惑うばかりである。
 
 昨年暮れの12日、『大人になるまでに読みたい15歳の詩Ⅱ⑤たたかう』(谷川俊太郎・巻頭文、和合亮一・編エッセイ)を刊行した。本シリーズは「第Ⅰ」が好評のため続編として『④あそぶ』(谷川俊太郎・巻頭文、青木健・編エッセイ)、『⑥わらう』(谷川俊太郎・巻頭文、蜂飼耳・編エッセイ)の全3巻本として刊行したものである。
 
 本書の和合亮一氏のエッセイの中に

「きみはいま、何かと闘っているだろうか。
 拳をかざそうとするとき、きみの背中を後ろから押すものがある。
 それは何か。
 泉のようにやまない情熱だ。
 熱い炎を背負い、本当に闘いたいものと思う存分向き合いたまえ。
 そのために、いつでも詩を傍らに。
 共に闘う親友のように、隣に置いておくのがいい。」
 
 の一文がある。
  
 齢を重ねるとなかなか厳しいが、いつもそのような姿勢で出版活動に携わっていきたいと私は思っている。

 本年も倍旧の御支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

 2018年 正月

                           株式会社ゆまに書房
                             代表取締役社長 荒井秀夫

大人になるまでに読みたい15歳の詩 第Ⅱ期(出版部 T) 投稿日:2017/12/15

大人になるまでに読みたい15歳の詩 第Ⅱ期(出版部 T)

この12月に、好評だった『15歳の詩』の第Ⅱ期が刊行になります。
今回の3冊は『あそぶ』(青木健・編)、『たたかう』(和合亮一・編)、『わらう』(蜂飼耳・編)です。
今回も巻頭文には谷川俊太郎氏の玉稿をいただいています。『わらう』の巻頭文、「詩への入りかた」にシリーズの概要すべてが集約されています。
私のヘタな言葉より、それを引用させていただくことで、刊行のお知らせとさせていただきたく思います。

「この『15歳の詩』シリーズはいわゆるアンソロジー(詞華集)の形で、古今東西の詩が集められています。各巻の巻頭文を書くために通読を繰り返して、私はこれまで味わったことのないのびやかな気持ちに襲われました。それは「詩人たちはみんないい詩を書いているなあ」という、同業者同士(!)の仲間意識に支えられたなんとも素朴な感動でした。過去に何度も読んで知っている詩も多いのですが、たとえよく知っている詩であっても、受ける感動が初めてのように新しい。その点では詩は音楽に通じていますし、年齢によって好きな音楽が移り変わるように詩の好みも年齢、経験によって変わりますが、いったん好きになった詩を嫌いになることはまずありません。」
『わらう』巻頭文「詩への入りかた」より

この1冊が、読者のみなさまに心に残る詩篇との出会いとなることを願います。

ヨーロッパの学会に参加してきました(第一営業部 K) 投稿日:2017/10/04

ヨーロッパの学会に参加してきました(第一営業部 K)

8/30から9/2までポルトガルのリスボンで開催されたEAJS 2017 に参加して来ました。

ヨーロッパ、北米、日本などの幅広い地域から日本語教育、日本研究の研究者の方、図書館の方が参加され、会場は多数の人で賑わっておりました。
ゆまに書房はこの学会は初めての参加です。
今回は紀伊國屋書店ロンドン事務所の方にいろいろお世話になり、カタログや本のサンプルを展示させていただきました。

会期中は多数の研究者の方が小社ブースに訪れていただき、ご挨拶することが出来ました。
お話しさせていただくとご勤務なさっている国も様々でしたし、ご研究なさっている内容も様々でしたが、一番みなさんが御興味を持って頂いたのは新刊の「ツーリスト」でした。
観光について研究されている方も沢山いらっしゃいましたし、中にはパンフレットに載っている表紙のサンプルを見て「タイトルの字が横組みなのに縦書きの伸ばす字を使っているのが面白い」という反応もあって研究者の方って色々な観点に興味をお持ちになるんだなあと感心しました。
確かにこのデザインがいつぐらいまでに使われているか調べて見たくなりますね。(右上画像)

また学会の前後ではヨーロッパの図書館や大学を何カ所か訪問させていただきました。
訪問した各機関でも沢山の本を紹介させていただきましたが、やはり電子書籍に対する御興味が高かったように感じました。
ゆまに書房の電子書籍と言えば「Web版 風俗画報」ですが、評判はとても良かったと思います。
そんな「Web版 風俗画報」はカラー画像を現在掲載している物からより高精度の物に差し替えるべく、作業を進めております。
かなり鮮明になる予定ですのでご期待ください。


今回訪問させていただいたある大学ではとてもお世話になっている研究者の方とばったり会ったりして、お互いにびっくりしました。
日本研究のネットワークは世界中に広がっていることを改めて実感しました。
ゆまに書房の名前も世界中にもっともっと広げていきたいですね。

ゆまにだより(関西オフィス K) 投稿日:2017/09/06

 ゆまに書房は社員が交代で夏休みを取ります。
 大阪に拠点を置く私は、雨ばかりの東京の様子を写し出すニュース映像を尻目に、例年以上に暑いお盆を過ごしました。
 旅行の予定もなく、元々「涼しい室内でゆっくり読書でも」と思って臨んだ夏休みですが、あれこれ普段できていない家の雑務(草引き等々)をして大汗を流すと、そのあとは決まってうとうと寝てしまう、そんなゆったりした何の変化もない夏休みとなりました。

 浅田次郎先生の作品はほとんど読んでいる(文庫版に限る)と思っていたのですが、2013年に刊行済みの文庫版「マンチュリアン・リポート」は読み損ねており、やっと読む機会に恵まれたのがこの夏休みでした。
 読み出すや、さすが浅田先生!その文章力と流れの小気味よさに引き込まれ、あっという間に読了となってしまいました。
 この「マンチュリアン・リポート」は、「治安維持法」に反対したため禁固の身になってしまった陸軍中尉が、昭和天皇の密命により張作霖爆殺事件(奉天事件)の真相を調べ、その報告をするために大陸に赴くことになるのですが、そのリポート第1信の冒頭に『昭和四年に大型客船に乗り「北京駅」に降り立つとその足で「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」の窓口を訪ねる』という文章が出てきます。当時の旅行に「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」(JTB)はなくてはならない存在でした。
 「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」は1912年3月(明治45年)、時の鉄道院官僚木下淑夫の「外客誘致論」に木下の直属上司である鉄道院副総裁平井晴二郎が共鳴、鉄道院の協力で創設されました。創設当初は日本を旅行する外国人の斡旋を主な業務としましたが、日本人旅行者への斡旋も時代を経て行われるようになります。
 創設の翌年、1913年(大正2年)には旅行雑誌「ツーリスト」が創刊されます。
 この「ツーリスト」を見渡せば、当時の日本各地・外地・植民地の様子を感じられるだけでなく、当時の旅行の状況、政策にも触れることができます。
 ゆまに書房では、この「ツーリスト」を公益財団法人日本交通公社「旅の図書館」が所有するデジタルデータの提供を受け、この秋から刊行を開始します。
 大学・研究機関・公共図書館には是非揃えていただきたい当社一押しの企画です。

20世紀の検索エンジン(出版部 M) 投稿日:2017/08/08

 インターネットは今や、私たちの生活に欠かせないものになっている。特に、グーグルのような検索エンジンは、多くの人が日常的に利用するツールではないだろうか。例えば、何かの用事で、1990年の東京都の人口を調べなければならない、ということがあったとしよう。その時、検索窓に「1990年 東京都 人口」と入力し、「検索」をクリックすれば、瞬時に情報が提供される。しかし、これはつい最近の話で、長い間、信頼できる情報がどこに存在するかという情報が重要であった。つまり、情報についての情報を確保しておくことは切実な問題だったのだ。
 今日、図書館の蔵書もOPACと呼ばれるインターネット上の書誌目録で検索することが一般的となった。私が大学に入学した21世紀初年には、レファレンスの棚には製本された蔵書目録が、なお鎮座していた(もっとも、私も利用したことはなかったが)。当時は、紙による目録からネット上の目録への過渡期であった。
 図書館は、十進分類法に沿って図書を分類する。国立国会図書館は約4,188万点(2015年度調査)の資料を所蔵しているが、各資料はいずれかの項目に分類されている。例えば、プラトンの著作集であれば100番代に、解析概論であれば400番代に、夏目漱石の小説であれば900の項目に入っているという具合である。このように夥しい数の書籍が一つの秩序に従って図書館という小さな世界を形成する。これを書誌的宇宙と呼ぶこともある。
 かつて日本は、「満洲国」という国家を作り上げた。現在の中国東北部に位置したとはいえ、中国、ロシア、日本の要素が混在した領域で、新たに統治を担った官僚たちの苦労は並大抵ではなかったはずだ。初めてやって来た土地で、◯◯省の小麦の生産量は何トンか、◯◯年に◯◯市で何があったか等、政策策定の根拠となる情報を把握するのは至難の業であっただろう。
 昨年、弊社は『「満洲国」公的機関収蔵図書目録』と題して、「満洲国」国務院や民生部等の図書目録を復刻した。同国の院や部(日本の省庁に相当)は独自の図書室・資料室を備えており、利用者のためにそれぞれ図書目録を編纂していた。これらの目録には、各省・市の人口、経済の統計情報や商業習慣についての報告書、現地の歴史に関する漢籍等のタイトルがぎっしりと詰まっており、執務の情報源として重視されていたことがうかがえる。
 さらに今年、弊社は満鉄等の国策企業の目録を集めた『「満洲国」政府系企業による蔵書目録』を復刻する。満鉄調査部は戦前期最大のシンクタンクであり、日中戦争に関する多数の報告書を作成したが、同部もまた1500頁以上にも及ぶ『資料分類目録』を編纂している。この目録は、マルクス主義の理論書から中国の一農村の統計に至るまでの書誌情報を集めた、近代アジア・中国に関する最大級の目録である。
 インターネットのなかった時代、こうした目録こそ現代の検索エンジンに相当するものであり、国家・企業の情報活動を支えていた。文献を探すためではなく、当時の情報の精度を測る面から、これらの目録を読んでみるのも面白いだろう。

変わるもの、変わらないもの。(出版部 K.Y) 投稿日:2017/07/05

風景が変わる、ということに、これほど違和感を覚えるとは。
2020年の東京オリンピック向けて、「変わらなければならない」という強迫観念に囚われすぎているのじゃないかと思う。
神田もここ1、2年で急激に変わった。アーチを描く赤煉瓦の高架下も、道のかたちも。綺麗に舗装された歩道と、植えられたばかりのまだ細くてたよりない街路樹。そこにのっぺりと並び立つビジネスホテル。新しいホテルは神田に在っても「〇〇ホテル 大手町」という。ただ、変わらないものも、確かに、ある。古くからそう呼ばれている通りの名前、商店街のお稲荷様、神輿を担ぐ威勢のいい掛け声。昔ながらの間口の狭い個人商店も神田の風景のひとつ。酒屋、八百屋、豆腐屋、文房具店。そこで毎朝交わされる「おはようございます」の声も。

考え続けなければならないことも多くあるというのに。
なにかを考え続けたり、深く掘り下げたりすることすら困難だ。
平日。選挙が近づけば、家のポストには毎日、選挙チラシが無造作に突っ込まれる。仕事から帰って、まずは候補者の顔のシワのばし。
週末。小学生になった姪から「おばちゃん、なんで? なんで?」攻撃を受ける。
そこでおばちゃんはその場しのぎの答えを必死にこしらえる。軽い罪悪感に襲われつつ、素直に疑問をぶつけるまだまだ弱くて小さな存在に豊かな未来を見る。

8月が近づくと、戦争や沖縄、戦後についてなんとなく考えているつもりになる。この歴史への想像力の欠落と貧困に向かう頭をどうにかしなければと思い、通勤の行き帰りだけでも時事につながる本を読む。新聞やインターネットニュースに目を通すのは簡単だが、一体どれだけ読めているのか。甚だ心もとない。まずは初心者向けの本をと地元の書店に向かい、樋口陽一『「日本国憲法」まっとうに議論するために』など手に取る。

このメルマガを書く前に、あらためて渡辺憲司先生の『江戸遊里の記憶 苦界残影考』を読む。『江戸遊女紀聞 売女(ばいた)とは呼ばせない』に続く著作。遊廓という世界で人生を送った女たちの現実を前に、研究者である著者自身のためらいや迷う姿が織りまれるノスタルジックではない歴史紀行。チラシと本の挿絵に使った絵葉書は、新吉原大文字楼の遊女柏木の花魁道中を写したもの。セピア色の人の群れのなかで、彼女はひとり、前を見据えて歩む。編集作業で帰りが遅くなった夜など、神田駅に向かう道すがら商店街で客引きに立つ若い女性たちの姿に、単なる過去として片付けられる事など何もないと、いきどおった気持ちを思い出す。これも神田の変わらない風景、である。