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膝栗毛文芸集成 第1期 (十返舎一九作品) 全12巻

膝栗毛文芸集成 第1期 (十返舎一九作品) 全12巻

[編集・解題] 中村正明

揃定価237,600円(揃本体216,000円) 
ISBN 978-4-8433-3354-9 C3393
A5判/上製/クロス装/函入
刊行年月 2010年06月

関連情報

本書の内容

滑稽本、合巻、雑俳・狂歌、絵本、歌謡など、「膝栗毛もの」の文学作品を現存する最良の底本で集成。

刊行によせて    中村正明
 いつのことだったか、ある古典文学に関する調査において、「あなたの知っている古典文学作品の登場人物を書いて下さい」という設問があり、その回答は「光源氏」と「弥次郎兵衛・喜多八」の二つが群を抜いて多かったという。光源氏と並んで広く名の知られた弥次喜多は、十返舎一九が『道中膝栗毛』で産み出した主人公の二人である。
 『道中膝栗毛』は、享和二(一八〇二)年の刊行当初から非常に人気を博し、何十年にもわたって続編が書き継がれて大流行した滑稽本である。そればかりか、メディアミックスも盛んに行なわれ、合巻化されたり、一枚摺の錦絵化、歌舞伎化や落語・講談の種にもなった。明治以降になると、映画、ドラマ、漫画など様々なメディアでも描かれるようになっていった。現代においても弥次喜多の知名度は高いと言えよう。
 そうした膝栗毛人気に乗じて、『道中膝栗毛』刊行と同時代においても、非常に多くの影響作・亜流作が産み出されたことは案外知られていない。それら、所謂「膝栗毛もの」は、一九自身の作品を除いてその全貌はほとんど解明されておらず、どのような作品がどれほどあったか全く手つかずのままなのである。
 本企画では一九作品を手始めとして、数多い「膝栗毛もの」の文学作品を現存する最良の底本で紹介していく。それは、滑稽本に限らず、合巻や雑俳・狂歌、絵本、歌謡に及ぶ。
 かかる「膝栗毛もの」文芸の通史的な集成によって、それを享受した読者層—江戸庶民という新興の文学読者たち—の興味嗜好が判明していくわけであり、文化遺産としても珍重されるものとなるであろう。

膝栗毛文芸集成 第1期 第1回 全7巻

刊行年月 2010年06月 揃定価141,900円 (揃本体129,000円) ISBN978-4-8433-3355-6 C3393

※解題は、第1巻・第3巻・第7巻の巻末に収録。

◆第1巻〜第3巻◆
 南総紀行旅眼石
 道中膝栗毛(1)〜(3)

『旅眼石』(国立国会図書館所蔵)滑稽本。一冊。享和二年刊。改題本「馬士の歌嚢」(文化四年刊)。『膝栗毛』に先駆けて刊行された旅行記で、先年、従僕太吉を連れて下総を旅した一九自身の体験が可笑しみを交えて描かれる。その体験が、後の『膝栗毛』の発想や趣向にも活かされることになる、注目すべき先蹤作である。

『道中膝栗毛』(岐阜大学図書館所蔵)(含発端)滑稽本。全八編十七冊・発端一冊。村田屋治郎兵衛ほか。享和二〜文化六年刊・発端は文化十一年刊。神田八丁堀の長屋に住む弥次郎兵衛と喜多八が、伊勢参りと称して江戸から逃げるように東海道の旅に出る。東海道から伊勢参詣を経て京・大坂に至る道中の滑稽を描く、日本古典文学史上の人気作品である。

◆第4巻〜第7巻◆
 続膝栗毛(1)〜 (4)

(都立中央図書館加賀文庫所蔵)(含二編追加)滑稽本。全十二編二十五冊・二編追加。喜多川月麿ほか画。村田屋治郎兵衛ほか。文化七〜文政五年刊。弥次喜多の旅のその後を描く続編。大坂から、金比羅参詣、宮島参詣を経て、江戸への帰途に善光寺を詣で、草津温泉を経由して江戸へと戻る。

膝栗毛文芸集成 第1巻 南総紀行旅眼石 道中膝栗毛(1)発端・初編〜3編

刊行年月 2010年06月 定価23,100円 (本体21,000円) ISBN978-4-8433-3357-0

膝栗毛文芸集成 第2巻 道中膝栗毛(2)4編〜6編

刊行年月 2010年06月 定価22,000円 (本体20,000円) ISBN978-4-8433-3358-7

膝栗毛文芸集成 第3巻 道中膝栗毛(3)7編〜8編

刊行年月 2010年06月 定価14,300円 (本体13,000円) ISBN978-4-8433-3359-4

膝栗毛文芸集成 第4巻 続膝栗毛(1)初編~3編

刊行年月 2010年06月 定価25,300円 (本体23,000円) ISBN978-4-8433-3360-0

膝栗毛文芸集成 第5巻 続膝栗毛(2)4編~7編

刊行年月 2010年06月 定価23,100円 (本体21,000円) ISBN978-4-8433-3361-7

膝栗毛文芸集成 第6巻 続膝栗毛(3)8編~10編

刊行年月 2010年06月 定価18,700円 (本体17,000円) ISBN978-4-8433-3362-4

膝栗毛文芸集成 第7巻 続膝栗毛(4)11編~12編

刊行年月 2010年06月 定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-3363-1

膝栗毛文芸集成 第1期 第2回 全5巻

刊行年月 2010年12月 揃定価95,700円 (揃本体87,000円) ISBN978-4-8433-3356-3 C3393

※解題は、各巻末に収録。

膝栗毛文芸集成 第8巻 続々膝栗毛

刊行年月 2010年12月 定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-3364-8

(東洋大学図書館所蔵 古典文庫旧蔵書)滑稽本。全三編六冊(三編は二世一九作)。美濃屋甚三郎。天保二〜六年刊。初・二編は、江戸に戻った弥次喜多の神田八丁堀長屋での生活の滑稽を描く。二編を執筆してまもなく一九が病死したため、三編は二世一九の手によって継承された。その三編は鹿島詣に旅立つ弥次喜多が描かれるが、刊行は途絶して未完のまま終わった。

膝栗毛文芸集成 第9巻 滑稽江の島土産

刊行年月 2010年12月 定価16,500円 (本体15,000円) ISBN978-4-8433-3365-5

(蓬左文庫尾崎久弥コレクション所蔵)滑稽本。全三巻五冊。勝川春亭画(初・三編)、喜多川月麿画(二編)。村田屋治郎兵衛・鶴屋金助。文化六〜七年刊。当時江戸庶民に人気のあった江の島参詣を題材に採り、ね助と頓太郎という二人の主人公を軸に、道筋や参詣の庶民の行動・風俗を描く作品。

膝栗毛文芸集成 第10巻 串戯教諭六あみだ詣

刊行年月 2010年12月 定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-3366-2

(東洋大学図書館所蔵 古典文庫旧蔵書)滑稽本。全三巻五冊。、喜多川月麿画。中村屋幸蔵。文化八〜十年刊。本作も、当時の江戸庶民に流行していた府内近郊の六阿弥陀(豊嶋村西福寺・下沼田村応味寺・西ケ原村無量寺・田畑村与楽寺・下谷長福寺・亀井戸常光寺)参詣に取材した作品。場末の平長屋の大屋と、その長屋住人の一行が巡る滑稽な参詣の様子を描く。

膝栗毛文芸集成 第11巻 滑利諭言大師めぐり  滑稽臍栗毛  秋葉山鳳莱寺一九之紀行  滑稽三人生酔

刊行年月 2010年12月 定価26,400円 (本体24,000円) ISBN978-4-8433-3367-9

『大師めぐり』(関西大学総合図書館所蔵)滑稽本。全三冊。関玉・玉東画。平野屋宗七・河内屋太助・河内屋嘉七。文化九年刊。大坂にある弘法大師の霊場二十一ケ所参詣(大師めぐり)の様子を描く作品。特定の主人公を設けず、大師めぐりをする様々な人々の人情・風俗が滑稽に綴られていく。

『滑稽臍栗毛』(蓬左文庫尾崎久弥コレクション所蔵)滑稽本。全二冊。画工不明。村田屋治郎兵衛・鶴屋金助。文化十一年刊。本作は膝栗毛ものではないが、『道中膝栗毛 発端』『続々膝栗毛』等にも通じる長屋を舞台にした住民たちの滑稽譚である。稀覯書であり、外題も『膝栗毛』の流行に肖った影響作であるため、ここに収録する。

『一九之紀行』(蓬左文庫尾崎久弥コレクション所蔵)滑稽本。全二冊。十返舎一九画か。鶴屋金助・松屋善兵衛・河内屋太助。文化十二年刊。作者の一九自身が主人公となって、供の清治とともに、鳳来寺から秋葉山へと経巡る旅の滑稽を描いている。

『滑稽三人生酔』(國學院大學図書館所蔵)滑稽本稿本。全二巻一冊。十返舎一九自筆草稿である。神田八丁堀の長屋に住む佐次郎兵衛のもとに集った三人の男たちが酔って騒いだ挙句、旅に出かける様子が描かれる。『道中膝栗毛』発端や『滑稽臍栗毛』同様の長屋ものでありつつ、膝栗毛ものへと発展していくような終結を見せるが、未完。

膝栗毛文芸集成 第12巻 誹語堀之内詣 堀之内詣後編雑司ケ谷紀行 旧観帖発端奥州道中之記 滑稽旅賀羅寿

刊行年月 2010年12月 定価22,000円 (本体20,000円) ISBN978-4-8433-3368-6

『誹語堀之内詣』(東洋大学古典文庫旧蔵書)滑稽本。全二冊。角丸屋甚助・村田屋治郎兵衛ほか。文化十三年刊。神田八丁堀の長屋に住む佐次兵衛が、堀の内妙法寺に参詣する様子を面白おかしく描く。『江の島土産』『六あみだ詣』『大師めぐり』に続いて、霊場めぐりに出かけた人物の滑稽な行動・見聞などを綴った作品である。

『雑司ヶ谷記行』(東洋大学古典文庫旧蔵書)滑稽本。全二冊。葛飾北斎画。伊藤与兵衛。文政四年刊。前書『誹語堀之内詣』の後編で、佐次兵衛が雑司ヶ谷の鬼子母神法明寺を参詣する滑稽が描かれる。後年、『堀之内詣』と『雑司ヶ谷記行』を併せて改題本『千社の多和武連』も刊行された。

『奥州道中之記』(蓬左文庫尾崎久弥コレクション所蔵)滑稽本。全二冊。十返舎一九画か。鶴屋金助・伊勢屋忠右衛門。文化十四年刊。感和亭鬼武作『旧観帖』(文化三〜六念刊)の発端篇として、一九が描いた作品。奥州渕黒村の農夫福助とその老母が江戸見物をする様子を描いた『旧観帖』であるが、その二人が奥州から江戸へと向かう道中の滑稽を、『膝栗毛』の手法に倣って描いている。

『滑稽旅賀羅寿』(蓬左文庫尾崎久弥コレクション所蔵)合巻。全三冊。歌川国直画。鶴屋喜右衛門。文政三〜五年刊。『金草鞋』と並ぶ合巻形態の膝栗毛ものである。江戸から八王子、富士山、箱根、小田原、横浜への道中が描かれる。『大師めぐり』と同様、特定の主人公を設けず、道中の能楽者たちの滑稽談が綴られていく作品である。