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関連情報

• 「日本旅行文化協会「旅」　全61巻＋別巻1 」のカタログはこちらです。（pdf/3,061KB）（pdf/5,156KB）

本書の内容

日本旅行文化協会が発行した戦前を代表する、総合旅行雑誌！

※各本体22,500円

●最もポピュラーな旅行雑誌
1872（明治５）年の鉄道開通から50年が経ち、観光旅行が一般にも広まり、全国的に旅行団体が設立されるといったなかで、日本旅行文化協会（1924年設立）が設立。『旅』はその機関誌として1924（大正13）年４月に刊行が開始された。

●作家などによる紀行文や随筆等を掲載
創刊号には田山花袋が寄稿しているように、作家・評論家による、紀行文・随筆が多く掲載された。充実した観光地案内、歴史、情報、ルート紹介。また、鉄道省の官僚や協会役員による論説なども掲載された。昭和９年にはその活動内容の重複を理由にジャパン・ツーリスト・ビューローと合併する。1935（昭和10）年には年間24万部ほど発行されたという。太平洋戦争中は「旅行指導雑誌」という副題が付けられ、1943年（昭和18年）には一時休刊するが、1946年（昭和21年）に復刊。

●大正〜昭和戦前期における旅行形態を
知るための貴重資料

本企画では、休刊される1943年（昭和18年）までを復刻する。日本の近代ツーリズムが形成される過程、大正〜昭和戦前期における旅行形態を知ることのできる貴重資料である。

●錚々たる執筆陣

巖谷小波　住井すゑ　森田草平　海音寺潮五郎　松岡洋右　深尾須磨子　山口誓子　井伏鱒二　村松梢風　平山廬江　馬場弧蝶　佐々木茂索　河東碧梧桐　深田久爾　木村荘八　丹羽文雄　田河水泡　岡本綺堂　高浜虚子　三木露風　林房雄　江馬修　飯田蛇笏　新居格　平田禿木　水島爾保布　杉村楚人冠　壽岳文章　武者小路実篤　三田村鳶魚　宇野浩二　内田百閒　岡本かの子　正岡容　三宅やす子　近松秋江　生田春月　上司小剣　大宅壮一　式場隆三郎　藤森成吉　水野葉舟　石坂洋次郎　吉田絃二郎　与謝野晶子　木村伊兵衛　伊藤整　黒田初子　生方敏郎　中村星湖　恩地孝四郎　大町圭月　岡本一平　野尻抱影 （順不同）ほか

刊行のことば　　　　　　　　　　 荒山正彦

　ジャパン・ツーリスト・ビューローの機関雑誌『ツーリスト』（大正二年創刊）の復刻に続き、旅行雑誌『旅』の復刻がはじまった。『旅』は、東京アルカウ会の同人誌を継承する形で、大正一三（一九二四）年四月に創刊され、戦前期においては昭和一八（一九四三）年八月までのおよそ一九年間にわたって月刊雑誌として発行された。昭和一八（一九四三）年一〇月には『旅』の後継雑誌として『交通東亜』が創刊されたが、やがて戦時下において終刊を迎え、戦後の昭和二一（一九四六）年一一月に『旅』は復刊された。
　『ツーリスト』は、外客誘致を掲げて創設されたジャパン・ツーリスト・ビューローの機関雑誌であり、和文欄に加えて英文欄を持ったのに対して、『旅』は旅行団体の同人誌からスタートし、発行の団体名称と組織は複雑に移り変わるものの、戦前期においては一貫して旅行のクラブ組織から発行され続けた。雑誌『ツーリスト』と雑誌『旅』は、戦前期を代表する二大旅行雑誌であり、戦前期における両雑誌が復刻出版される意義は大きい。
　ところで、日本における旅行団体の歴史は近代以前にさかのぼる。たとえば近世における伊勢参宮参詣の伊勢講や、富士詣（富士登山）の富士講などの旅行団体はすでに組織されていた。こうした旅行団体としての講組織は明治期以降にも継承されたが、一方で、明治期以降には、信仰を軸とした旅行団体とは異なる旅行や登山の団体が各地で組織された。
　現在の大阪市では、明治三九（一九〇六）年六月に「大阪探勝わらじ会」が創設され、関西近郊をはじめ日本各地へ団体で旅行を行い、わらじ会旅行集『道づれ』が発行された。また大正三（一九一四）年二月には、現在の神戸市御影に「日本アルカウ会」が創設された。日本アルカウ会は、六甲山をはじめ近畿地方での山登りを目的とした旅行会を組織した。明治期から大正期、そして昭和戦前期にかけて、こうした旅行団体や登山団体が全国各地で数多く誕生した。
　大正一〇（一九二一）年四月、現在の東京都荒川区日暮里において「東京アルカウ会」が誕生する。東京アルカウ会では日本アルカウ会と同様に、定期的な旅行会を催し、会員による団体旅行を組織していた。東京アルカウ会では、設立の翌大正一一（一九二二）年に、講演会や展覧会、出版などを行うためあらたに「日本旅行文化会」を立ち上げた。この日本旅行文化会では、大町桂月、木暮理太郎、谷口梨花、田山花袋などを顧問とし、月刊の会報誌『旅』が発行された。しかしながら会報『旅』は、大正一二（一九二三）年六月の第三巻第六号をもって終刊となり、日本旅行文化会は、鉄道省、南満洲鉄道、日本郵船、大阪商船、ジャパン・ツーリスト・ビューローなどの大きな機関が加盟する日本旅行文化協会へと改組された。
　新たに組織された日本旅行文化協会は、関東大震災の翌年、大正一三（一九二四）年に発足し、ここで新たに月刊雑誌『旅』が創刊された。『旅』創刊号の編集後記には、「考へれば日本旅行文化協会が、日らしい日の光を見るまでには随分骨を折らされて来た。今日が来るまでに足かけ四年」と、日本旅行文化会創設から日本旅行文化協会への改組までの労苦が綴られている。
　月刊の旅行雑誌『旅』の編集部は、鉄道省運輸局内に置かれ、大正一五（一九二六）年には日本旅行文化協会は日本旅行協会へと名称を変えるが、『旅』はコンスタントに発行され続けた。他方で、日本旅行協会の主要会員でもあったジャパン・ツーリスト・ビューロー内において、昭和七（一九三二）年に旅行団体「ツーリスト倶楽部」が設けられ月刊雑誌『旅行日本』が創刊された。ジャパン・ツーリスト・ビューローは、鉄道省、南満洲鉄道、日本郵船、大阪商船などによって組織された機関であったため、結果的にこれらの組織が二つの旅行雑誌を持つこととなった。
　そこで昭和九（一九三四）年に『旅』を発行する日本旅行協会と『旅行日本』を発行するツーリスト倶楽部は合併し、日本旅行倶楽部として再スタートを切り、雑誌『旅』の発行は日本旅行倶楽部によって継続された。この時、雑誌の判型はそれまでの菊判から四六倍判へと大型化された。また日本旅行協会の名称は、ジャパン・ツーリスト・ビューローによって発行される旅行案内書や汽車時間表（時刻表）の出版時に継続して用いられることとなった。
　雑誌『ツーリスト』の復刻に続き、『旅』の復刻においても公益財団法人日本交通公社「旅の図書館」からデジタルデータの提供を受けた。日本旅行文化会の会報『旅』の発行からおよそ一〇〇年を迎える節目に、戦前期の雑誌『旅』が印刷出版物として再び刊行されることにも大きな意義があると考える。なお、この度の復刻では別巻に、日本旅行文化会『旅』の一部と、戦前期における『旅』の後継雑誌『交通東亜』創刊号を収録する。