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血の報復―「在満」中国人作家短篇集

血の報復―「在満」中国人作家短篇集

[訳編] 岡田英樹

定価2,700円(本体2,500円) 
ISBN 978-4-8433-5031-7 C3093
四六判/並製/376頁
刊行年月 2016年07月

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本書の内容

「満洲国」時代に書かれた、中国人作家たちの内なる抵抗と表現の結晶──珠玉の作品群。

序文より──
 異民族の支配下で、憤怒と苦悩を呑みこみながら生活を送っていた中国人作家には自由な言説が許されていたわけではない。「言うべきこと」が「言い得ない」、「言い得ないことを無理に言わせる」——これが「在満」作家を取り囲む厳しい言語環境であった。したがって中国人作家は、「言い得る」範囲のなかで、ぎりぎりの表現を駆使して、「言うべきこと」を筆に託さざるを得なかった。それゆえ文章は複雑であり、表現は曖昧であった。
 「満洲国」は14年に満たない短い期間で幕を下ろした。「五四文学」の流れを引き継ぐ新文学の作家たちは、「建国」後に創作を始めた人ばかりである。そして年齢も若い。ここに取りあげた作家についてみても、1945年「満洲国」崩壊の時点で、もっとも若い袁犀、関沫南が26歳前後、もっとも年長である王秋蛍、疑遅、田兵ですら32歳前後であった。これら作品はすべて20歳代の若者が、身の危険も顧みずに、屈辱に耐える鬱屈した胸のうちを筆に託した、青春時代の栄光ある記念品とも言えるものであった。
 「満洲国」崩壊後、中国東北地方は国共内戦に勝利した共産党によって統一され、1949年の中華人民共和国の成立を迎えることになる。共産党の政策から異端とみなされた人びとは「整風運動」という名の批判運動に、繰り返し晒されることになる。かつて「満洲国」で筆を執ったことそれ自体が批判の対象とされ、かれらの青春時代の「記念品」が罪証の一つとして持ちだされたのである。理不尽な汚名が取り除かれ、「満洲国」時代の文学に対する再検討が始まるのは、1980年代に入ってからのことであった。
 かれらの青春時代の「記念品」を日本語に移し変えながら、「満洲国」を生きた中国人作家の苛酷な人生に思いを致し、わたしの筆もしばし滞ることもあった。日本においても、また中国においても、これら「在満」作家の生きた証として、その作品を埋もれさせたままであってはならないと思う。この「翻訳作品集」が、その役割の一端を担えればと願っている。

【収録作品】
・「血の報復」王 秋蛍/・「本のはなし」舒 柯(王 秋蛍) 
・「ユスラウメの花」疑遅 /・「山海外経」古丁
・「臭い排気ガスのなかで」山丁
・「荒野を開拓した人たち」山丁
・掌篇小説三篇─「風」「柴を刈る女」「忽瑪河の夜」─ 但 娣
・「放牧地にて」磊磊生
・「十日間」袁 犀/「ある街の一夜」関 沫南
・「河面の秋」田 兵 /「香妃」爵青
【附 録】「在満」中国人作家の日訳作品目録