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日華学報 全16巻

日中関係史資料叢書7
日華学報 全16巻

[監修・編集] 大里浩秋 [監修・編集] 見城悌治 [監修・編集] 孫安石

揃定価359,700円(揃本体327,000円) 
ISBN 978-4-8433-4045-5 C3321
A5判/上製/函入
刊行年月 2012年09月

関連情報

本書の内容

日本の立場から留学生を支援した、日中「交流史」28年の記録。

『日華学報』復刻版刊行の辞
大里浩秋

このたび『日華学報』の復刻版を刊行することになった。そこで、以前この雑誌をおもしろく読んで、解題を付して目次を紹介した(「『日華学報』目次」、神奈川大学人文学研究所『人文学研究所報』№38)ことがある者として、刊行の辞を記すことにした。
 まず、この雑誌の発行母体である日華学会について述べる。この名前からは日本と中国を研究対象にする学会組織を思わせるのだが、実際はそうではなく、中華民国から日本に留学した学生のために、学校の選択、入学・転学、宿舎の世話をし、銀行、工場等の実習や見学を紹介し、さらに教育研究に関する中国人の視察等に便宜を与えることを目的にして、大正七(一九一八)年に創設され昭和二十(一九四五)年の敗戦まで続いた日本人の団体であった。なぜこの時期にこのような中国人留学生を支援する団体が日本に存在したか。明治三十年代(一九〇〇年代初頭)から続々留学してきた中国人を日常生活面で十分に世話することができず、そのため反日になって帰国する者が多かったという反省があった。また、中華民国になってまもなく日本政府が二十一カ条要求を中国政府に突き付け、続いて日華共同防敵軍事協定を認めさせて中国への実効支配を強化しようとする意図を露わにして、日本に来ている留学生を含む多くの中国人の反発を招いていることを緩和する必要に迫られた。そこで、中国と商取引のある会社や銀行が資金を出し、文部省や外務省がバックアップして上記のような留学生の世話を主目的にする日華学会を創ったのである。しかし、満洲事変から日中戦争へと日中間の対立・緊張が深まっていくと、留学生の世話は維持しつつも、彼らを母国と対立する日本の立場を理解する「親日家」に育てる役割を担って、敗戦まで継続することになる。
 ここで、日華学会が発行した出版物に触れると、創立の年から五年間(大正七〜十一年)は『日華学会報告』、次いで名前を変えて『日華学会年報』が二十三年間(大正十一〜昭和十九年)発行されて、取り組んだ内容を一年ごとに紹介しているが、それとは別に昭和二(一九二七)年から発行されたのが『日華学報』であった。創立から九年を経て、その間に上記の報告や年報に載せる中身とは違う、各種の留学に関する情報を豊富に盛った機関誌の発行が待望されるようになって、ついにこの雑誌の誕生を見たのである。
 発行の間隔は、十一号まではほぼ季刊で出され、十二号から三十四号まではほぼ月刊であり、その後は二カ月か三カ月の間隔で発行された。月刊に定着させるのが目標であったようであるが、そうはいかず、最後の二号については、九十六号は前号から一年経った昭和十九年六月に出され、事実上の終刊号である九十七号の場合は敗戦後の二十年十月に出ているのである。この間隔のちぐはぐさにそれぞれの時期の日華学会が抱えていた事情が潜んでいるのであろう。
 内容について言うならば、留学に関する文部省・外務省の規則類、駐日中華民国公使館・学生監督処が出す留学生関係規定、留学生を収容する各種学校についての入学等に関する情報、留学生を収容する学校ごとの入学・在籍・卒業等の記録、留学生総会・各省同窓会に関する情報、留学生史に関わる論述、専門家の論説・講演記録、留学生による研究発表等々、多岐にわたっている。
 そして、この雑誌の編集方針として、「政治外交に亘らざる」(第一号の「編輯余録」)、つまり、政治外交には触れないことを謳って、それを守りつつ誌面を構成してしばらく経るのであるが、満洲事変勃発前後で(第三十七号を境にして)徐々に変化を生じていることに気づく。事変が起こって中国側の反応が気になり、まもなく「満洲国」留学生の受け入れも始まって、日中両国の政治外交上の対立がいっそう無視できなくなってきたという事情が底辺にあるからに違いないが、自らに律していたはずの政治に触れないという方針を思わず破ってしまっている記事が次第に多くなり、とくに日中戦争が始まってから(第六十三号から)は、号を追うごとに日本の侵略の正当性を説教して、留学生をその方向に動員しようとする傾向が目立っていく。
 総じて、『日華学報』は、一九二〇年代から四十五年の日本敗戦までの中国人日本留学に関する情報を豊富に具えている雑誌である。その時期の留学生の実態を知る上で、またその時期の受け入れ側の日本の実態を知る上で、この雑誌に載った各種の記事や統計は役立つに違いない。活用していただければ幸いである。            (神奈川大学)


【本書の特色】

●日華学会と『日華学報』
 日華学会は、中国人留学生支援のために組織された半官半民の団体で、創設は、大正7年(1918)4月。解散は昭和20年(1945)の敗戦後である。活動のメインは日露戦後(1900年代初頭)から増え始めた中華民国からの留学生支援であり、特に劣悪な下宿の改善があげられている。具体的には、寄宿舎の提供、経済援助、東亜学校(日本語予備校)の経営、会社の実習の紹介など多岐にわたった。
 『日華学報』は、日華学会の機関誌であり、学会創立から9年後に創刊された、中国人留学生に関するすべてが盛り込まれた雑誌であった。(詳細は「刊行の辞」を参照されたい)第1号(昭和5年、1927年)〜第97号(昭和20年、1945年)まで存続。なお、日華学会草創期の状況を鳥瞰することができる『日華学会報告』(第1回〜第5回、大正7年〜同11年)も復刻した。

●日華学会の性格と歴史的変化
 日華学会は、財界有志(山本条太郎、白岩龍平ら)が「支那留学生同情会」を結成し、多額の寄付金を集め、それを基盤とする半官半民的的団体としてスタートした。初代会長は小松原英太郎(元文部大臣)。渋沢栄一は顧問に就任した。1921年(大正10年)に文部・外務両大臣の許可で財団法人となり、文部省から国庫補助を受け、大震災以後は外務省文化事業部から国庫補助を受ける。また、財界からも寄付金を募った。その後、1938年に日華学会は興亜院の管轄下に、1942年には大東亜省の管轄下となる。そして、1945年1月に「財団法人日華協会」へ統合されたが、同年8月の敗戦によって活動を停止した。

●日中文化交流上の重要資料
『日華学報』は、1920年代から45年までの中国人留学生に関する情報を豊富に備えている雑誌である。当時の留学生の実態を知る上で、また、その受け入れ側である日本の実態を知る上で、この雑誌に載った各種の記事や統計は一級の史料といえよう。当時の中国人日本留学史さらには、日中教育交流史の実態を明らかにするのにこの雑誌は欠くことのできないものであり、かつ日中文化交流の歴史的一端を明らかにしてくれる文献資料である。異文化交流史のうえからも貴重な資料である。

●日本語教育との関連
 東亜高等予備学校の創始者であり、周恩来と魯迅の先生として知られる松本亀次郎(1866-1945)の研究などにも『日華学報』が使われている。 来日した中国人留学生たちはどんな日本語教育を受けてきたのか、松本亀次郎たちはどんな教育理念を持っていたのか等、まだ今後も解明するべき点は多い中で、『日華学報』はその格好の資料となるだろう。

日中関係史資料叢書7 日華学報 第1回配本 全4巻

刊行年月 2012年09月 揃定価84,700円 (揃本体77,000円) ISBN978-4-8433-4046-2 C3321
A5判/上製/函入

日中関係史資料叢書7 日華学報 第1巻 日華学会報告 第1回〜第5回(大正7年5月〜大正11年3月)

刊行年月 2012年09月 定価11,000円 (本体10,000円) ISBN978-4-8433-4049-3

日中関係史資料叢書7 日華学報 第2巻 日華学報 1号〜4号(昭和2年8月・11月/昭和3年2月・6月)

刊行年月 2012年09月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-4050-9

日中関係史資料叢書7 日華学報 第2回配本 全6巻

刊行年月 2012年12月 定価138,600円 (本体126,000円) ISBN978-4-8433-4047-9 C3321
A5判/上製/函入

日中関係史資料叢書7 日華学報 第5巻 日華学報 14号〜19号(昭和5年7月〜10月/昭和6年1月)

刊行年月 2012年12月 定価23,100円 (本体21,000円) ISBN978-4-8433-4053-0 C3321

日中関係史資料叢書7 日華学報 第6巻 日華学報 20号〜26号(昭和6年2月/昭和6年4月〜8月)

刊行年月 2012年12月 定価23,100円 (本体21,000円) ISBN978-4-8433-4054-7

日中関係史資料叢書7 日華学報 第7巻 日華学報 27号〜34号(昭和6年9月〜昭和7年4月)

刊行年月 2012年12月 定価23,100円 (本体21,000円) ISBN978-4-8433-4055-4

日中関係史資料叢書7 日華学報 第3回配本 全6巻

刊行年月 2013年03月 揃定価136,400円 (揃本体124,000円) ISBN978-4-8433-4048-6 C3321
A5判/上製/函入

日中関係史資料叢書7 日華学報 第11巻 日華学報 56号〜60号(昭和11年6月・8月・11月)

刊行年月 2013年03月 定価22,000円 (本体20,000円) ISBN978-4-8433-4059-2

日中関係史資料叢書7 日華学報 第12巻 日華学報 61号〜66号(昭和12年3月・12月/昭和13年2月)

刊行年月 2013年03月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-4060-8