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大陸新報 全23リール + 別巻2巻

大陸新報 全23リール + 別巻2巻

[監修] 金丸裕一

揃定価1,129,700円(揃本体1,027,000円) 
ISBN 978-4-8433-3261-0 C3821
35mmポジティブロール
刊行年月 2009年11月

関連情報

本書の内容

総発売元 株式会社紀伊國屋書店営業総本部

昭和14年1月1日~同20年9月10日まで、戦況、経済、時事、そして文学等の日中両国の文化動向をも詳細に記録。上海をはじめとした華中地域における、数少ない邦字新聞資料。

◆第1回配本 大陸新報(昭和14年1月1日~昭和20年9月10日) 全22リール+補遺リール1+別巻1
揃定価1,055,250円(本体1,005,000円・分売不可) 
ISBN978-4-8433-3262-7
※2009年11月刊行

◆第2回配本 大陸新報 別巻2  
定価23,100円(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-3263-4
※2011年7月刊行


監修にあたって    財団法人東洋文庫研究員・立命館大学教授 金丸裕一
 『大陸新報』という微妙な性格が付与された二次史料について、このたび『朝日新聞外地版』の影印という優れた実績を有するゆまに書房からマイクロフィルムによって復刻することとなった。保存される部数も限定され、さらに戦時中の日刊紙である故、紙質も劣悪であるこの史料が、今回の復刻を通じて心ある研究機関によって所蔵されることは、稀少史料の実質的な分散といった側面もあり、いまだ本格的研究が展開したとは評価しがたい戦時中国占領地(傀儡政権支配地域)研究の将来にとって、裨益するところが大きいであろう。
 今回、この作業を監修するにあたって、わたくしは三つの点について、特に留意しながら作業を進めている。
 第一に、今後は訪れることがないであろう貴重な機会を利用して、『大陸新報』のより完全に近い形での復刻をめざすこと。各地の資源を有効に活用しながら、この目標は完遂されなければならない。日程的に無理が生じた場合であっても、補遺版など何らかの方策を講じて、今次のリプリントを以って「完全版」とする。
 しかし第二に、接近が困難であるとはいえ、既存の史料を再現するだけでは、学術的貢献度が高いとはいえない。既存の状況にプラスアルファがあって、復刻事業はその意義を深いものとする。今回は、各方面からの利用者による要請に汎用的にこたえるために、記事目次の作成に編集部は全力を注ぐ。この工具書をブラウジングする地味な努力によって、利用者は思わぬ発見や閃きに出会うことだろう。
 そして第三に、『大陸新報』を利用して仕事を進めつつある各分野の研究者による、さまざまな視点からの「解題的論文」を集大成することによって、利用者の問題意識の客観化、あるいは明確化への一助としたい。その意味において今回の復刻は、一書肆が中心となって進める事業ではあるが、現在の日本において『大陸新報』という厄介な史料と格闘している多くの研究者による、実質的な共同作業と呼べるものであろう。
 「謀略新聞」とも評価される『大陸新報』が、いかほどまでに戦時中国研究に援用可能であるのか、その解答は是非とも利用者諸賢によるペンをもって提示していただきたいと、強く願うものである。少なくとも、南京の中国第二歴史档案館に保管される大量の日本語史料が開放されるまでの期間、『大陸新報』は、日本人研究者によって重点的に分析されるべき対象であることは、多言を要すまい。


■推薦のことば
華中地域での数少ない貴重新聞資料    早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 小林英夫
 このたび『大陸新報』が復刻される。私は、かつて『日中戦争と汪兆銘』という著作を吉川弘文館から、『日中戦争史論』を御茶の水書房から、『日中戦争』を講談社からそれぞれ上梓した。いずれの著作でも汪兆銘政権下での日本の占領政策に関して論じた章を設けて分析したのだが、基本的文献の欠如に悩まされた。占領地の実態などに関しては、多くの小説などを通じてそれなりに把握することができたのだが、やはり時々刻々と変化する現地の状況に関しては、新聞が何よりである。ところが、その新聞で適切なものが少ないのだ。中国占領地といっても、特にその中心をなす華中地域のそれが不可欠なのだが、意外と依拠できる新聞類が少ないことに悩まされた。そんな中で、今回復刻される『大陸新報』は、数少ない貴重な新聞である。一九三九年元日創刊され、その後四三年二月には『上海毎日新聞』を合併して華中での唯一の日本語新聞となり、終戦まで継続し、一時休刊したものの戦後しばらくは継続再刊された。掲載された記事が時事性に富むだけでなく、連載小説や論評などを通じて、当時の占領地の日本人の活動が鮮やかに再現されてくる。この資料の復刻で、日中戦争期の日本人の活動がいっそう具体性を帯びて再現されることを望んでやまない。

■推薦のことば
日本占領下における苦渋に満ちた日中文化界交流の軌跡    東京大学文学部教授 藤井省三
 近代中国において上海は経済・文化の中心的存在であった。しかし、一九三七年に日中戦争が始まり上海租界区がいわゆる”孤島“期を迎え、続けて一九四一年太平洋戦争が始まり”孤島“の租界も日本軍に接収されるに至ると、上海文化界は大きな変貌を強いられた。
 戦前の上海には二万を越す邦人が滞在し、三種の邦字日刊紙が刊行されていた。これら邦字紙は太平洋戦争間近になると、新聞紙統制のため『大陸新報』一紙に統合される一方、上海の邦人数は十万に達する。厳しい言論統制下にあったとはいえ、『大陸新報』はこれら邦人の動向及びその中国観、そして日中文化界の交流を日々報じ続けたのである。
 たとえば本紙は一九四四年六月二〇日号に「愛愛玲記」という張愛玲(チャン・アイリン、ちょうあいれい、一九二〇~九五)賛美のエッセーを掲載し、続けて彼女による香港戦争の回想「燼余録」を七回連載している。張愛玲とは太平洋戦争勃発後に留学先の香港から占領下上海に舞い戻り、新人作家として彗星の如くデビュー、現代中国文学史において魯迅と並び称される作家である。
 張愛玲賛美のエッセイストは若江得行で、彼は中国語および中国学の専門家養成で知られていた上海・東亜同文書院の英文学教授であった。
 そして張愛玲エッセー「燼余録」を翻訳したのは室伏クララという現代中国文学者である。彼女は、自ら志願して祖国の軍靴が踏みにじる上海に渡り、胸を引き裂かれるような思いで同時代の中国文学を流麗な日本語に訳し続けていたのである。
 このように苦渋に満ちた日本占領下の上海で、日本人に中国との最も豊かな出会いの場を提供していたメディアが『大陸新報』であったといえよう。

◆『大陸新報』について

 『大陸新報』とは、日本占領期に、当時「中支那」とも呼ばれた華中地域で、日本の陸海軍及び外務省と興亜院の肝いりで設立された「国策新聞」である。上海に本社を置き、朝日新聞が積極的に協力し、そのスタッフも多く同社から送られたという。一九三九年一月一日に創刊。一九四五年九月までの六年半の間刊行。同地域の有力邦字新聞として、また戦時下の新聞統合で『上海毎日新聞』を併合することで(一九四三年二月)、「中支那における唯一の邦字新聞」(同社社告より)となる。同地域、特に上海の情勢および日常のディテールを詳細に伝える紙面と大陸を中心とした戦局、特に汪兆銘政権の動向も頻繁に取り上げる。
 国際的に孤立していた戦時下の日本とは違い、国際情報が飛び交う上海にあった『大陸新報』から日本を取り巻く国際的雰囲気も窺える内容。また、当時著名な作家(片岡鉄兵など)の小説も掲載され、戦時下の文学研究の欠落を埋める側面を持ち、言論統制の厳しい日本内地と比べ、比較的に自由な上海を拠点とした日本の文学者、知識人の活動や中国側知識人との戦時下の「交流」を知る手がかりともなる。戦時研究における貴重資料である。

◆各リールの収録内容

【1】昭和14(1939)年1月~3月
【2】昭和14(1939)年4月~6月
【3】昭和14(1939)年7月~9月
【4】昭和14(1939)年10月~12月
【5】昭和15(1940)年1月~3月
【6】昭和15(1940)年4月~6月
【7】昭和15(1940)年7月~9月
【8】昭和15(1940)年10月~12月
【9】昭和16(1941)年1月~3月
【10】昭和16(1941)年4月~6月
【11】昭和16(1941)年7月~9月
【12】昭和16(1941)年10月~12月
【13】昭和17(1942)年1月~3月
【14】昭和17(1942)年4月~6月
【15】昭和17(1942)年7月~9月
【16】昭和17(1942)年10月~12月
【17】昭和18(1943)年1月~4月
【18】昭和18(1943)年5月~8月
【19】昭和18(1943)年9月~12月
【20】昭和19(1944)年1月~4月
【21】昭和19(1944)年5月~8月
【22】昭和19(1944)年9月~同20(1945)年9月
【23】補遺

◆本書の特色

◆汪兆銘(精衛)政権下、日本の占領地域の基本的文献の少なさを補う第一級史料
昭和14年(1939)1月1日の創刊から敗戦後の昭和20年(1945)9月10日までの約6年半にわたって、汪兆銘政権の動向、戦況、経済状況、占領地の実態を詳細に知らせてくれる唯一の日刊邦字新聞。従来「国策新聞」として研究対象にされなかった新聞に新たな光をあて、分析対象とすることの意味は大きい。

◆内地では得ることの出来ない情報を提供
国際的に孤立していた戦時下の日本とは異なり、国際面から社会・文化面まで、内地では得ることの出来ない情報が数多く掲載されている。

◆日本占領地域上海での唯一の邦字新聞
昭和15年(1940)年末には65,000人、のち10万人をこえた上海在留邦人を対象とする、毎日刊行される唯一の詳細な邦字新聞であったことは、「国策新聞」という側面を持ちつつも、政治史・軍事史の側面ばかりでなく、これまで見落とされていた日本人社会の種々の位相の襞の部分をも含む、新たな占領地研究の一側面を掘り起こすことができる。

◆戦時下の日本文学及び文化研究に新たな視野を提供
特に文化面の記事は充実しており、質・内容共に優れ、小説・随筆から映画・音楽・絵画・教育・思想までの多岐にわたり、戦時下の日本文学研究に新たな視点を付与する。連載小説を発表した代表的作家は片岡鉄兵、丹羽文雄、草野心平、日比野士朗、小田嶽夫等々、その他多くの作家、女性作家が随筆を掲載。

◆「魔都上海」のカオスとエネルギー、文化的出会いを伝える唯一の新聞
「魔都」と言われ、多くの日本人を惹き付けた上海。『大陸新報』の文化面の記事内容の詳細さと豊富さは、占領期と言う状況ながら、日本と中国との出会い、その文化的交流の実相を日々報じ続けた新聞として目を離すことが出来ない価値を持つ。文学を超えた文化全体の新しい視点と素材を提供する。

◆出来るだけきれいな紙面の提供
戦時下に上海で刊行され、戦後の混乱期をくぐり抜けた新聞紙であることにつきまとう紙面の劣化、読みにくさを出来るだけ払拭するため、新たに原紙からの撮影も行い、読みやすい紙面を提供することにつとめた。それにもかかわらず一部読みにくい紙面が残った点はご承諾ください。

◆補遺リールを付す
日本の所蔵機関の欠号分を出来るだけ補う補遺リールを付す。

◆「別巻1、2」に主要記事目次を付す
約6年半継続した新聞の全体像を知るためにも、主要記事目次を、「別巻1、2」として付す。