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武蔵屋本考その他 全1巻

書誌書目シリーズ89
武蔵屋本考その他 全1巻

[著] 藤木秀吉 [編集] 戸板康二 [解説] 藤田加奈子

定価27,500円(本体25,000円) 
ISBN 978-4-8433-3228-3 C3300
A5判/上製/函入
刊行年月 2009年06月

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本書の内容

戸板康二の《学恩の大先輩》、藤木秀吉の遺稿集。明治期の近松浄瑠璃の翻刻「武蔵屋本」の書誌研究と、書物に関するエッセイ等を収める。

『武蔵屋本考 その他』(昭和一五年 戸板康二編集兼発行)は、古河電工の重役(大日電線株式会社常務取締役)であった藤木秀吉の遺稿集。著者の藤木秀吉は、古書・演劇・俳句に造詣が深い趣味人であり、演劇書の収集家であった。昭和九年、慶應義塾大学予科の学生であった戸板康二は、藤木の友人であった父・山口三郎(藤倉電線大阪支社長)を介して、藤木の知己を得る。戸板康二にとって、古今東西の演劇書が並んだ藤木の書斎と、その主との深い交流は、演劇や書物についての知識的な土壌と広範な趣味を培った場であり、後年戸板は〈学恩の大先輩〉と藤木を回顧している。表題の「武蔵屋本考」は、明治二十年代に近松門左衛門の浄瑠璃本の翻刻を叢書として刊行した武蔵屋(丸善から独立した出版社で、経営者の早矢仕民治は丸善創業者・早矢仕有的のいとこ)の出版物についての詳細な書誌研究。ほか、書物についてのエッセイや句日記などを収める。

■藤木秀吉 (ふじき・ひできち) 
明治一七年五月一五日、福岡県柳川町生れ。東京高等商業学校を卒業し、明治四一年に古河鉱業に入社。大正九年、古河電気工業に転属し、九州電線製造所所長、古河電気工業本社営業部査業課長を歴任。昭和五年、古河傘下の日本電線製造(のち大日電線)常務取締役となる。昭和九年、自ら取締役を辞任、古河合名会社参事となり、昭和一一年に退職。昭和一三年一二月、石炭鉱業聯合会に資材部長として迎えられる。昭和一四年四月二八日急逝。遺された三十冊余りの趣味研究のノートおよび句日記は、故人の「若き書斎の友」であった戸板康二に編纂が一任され、『武蔵屋本考 その他』として遺稿出版された。

■戸板康二 (といた・やすじ)
大正四年一二月一四日、東京芝生れ。演劇評論家、小説家、随筆家。慶應義塾大学予科在学中の昭和九年、「歌舞伎を滅す勿れ」が『演芸画報』の公募論文に当選。翌年、慶應義塾大学国文科に進学し折口信夫に師事。この年より『三田文学』に歌舞伎評論を毎号発表するようになり注目を受ける。昭和一四年、明治製菓に入社して宣伝誌『スヰート』の編集に従事。昭和一七年、最初の著書『俳優論』を刊行。昭和一九年、日本演劇社に入社し『日本演劇』の編集を担当。昭和二四年、『わが歌舞伎』『丸本歌舞伎』により第一回戸川秋骨賞を受賞。翌年、日本演劇社を退社しフリーの演劇評論家となる。昭和二八年、『劇場の椅子』『今日の歌舞伎』で第三回芸術選奨文部大臣賞を受賞。昭和三三年、江戸川乱歩の勧めで、歌舞伎界を題材に老優中村雅楽を主人公とした推理小説「車引殺人事件」を発表。翌年、「團十郎切腹事件」その他により直木賞を受賞し、以後、推理小説作家としても活躍。平成三年、日本芸術院会員となる。平成五年一月二三日死去。主著に『歌舞伎への招待』『六代目菊五郎』『團十郎切腹事件』『演劇畫報・人物誌』『浪子のハンカチ』『ちょっといい話』『家元の女弟子』など。

■藤田加奈子 (ふじた・かなこ)  
ウェブサイト「戸板康二ダイジェスト」主宰