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塚田嘉信 私家版復刻集成 全7巻【new!】
揃定価169,400円(揃本体154,000円)
ISBN 978-4-8433-6978-4 C3374
A4判/上製/カバー
電子書籍 あり
本書の内容
初期映画史研究、映画雑誌創刊号 コレクションの第一人者、 塚田嘉信〝 幻 〞の業績の全貌。
(電子書籍=同時1アクセス:本体154,000円+税╱同時3アクセス:本体308,000円+税)
★電子書籍版はKinoDen/Maruzen eBook Libraryのサービスでご購入になれます。
刊行にあたって 客員研究員 本地陽彦
我が国に於ける映画史研究は、遅々たる歩みながらも、この道を進むことを選んだ決して多くはない篤志家によって、開拓され、発展を続けて来た。その篤志家の名を挙げれば、吉山旭光、水野一二三、田中純一郎といった方々が直ぐにも思い浮かぶが、それでも尚、研究の基幹たるべき映画作品そのものの全体像、例えて言えばそれらの封切日、封切館といった基本情報を始めとし、数多ある小規模な製作会社やプロダクションから送り出された作品といったものは、根拠となる確たる記録も不十分なままに映画史が語られて来たのではなかったか。否、大手の映画会社のそれでさえ、製作、公開記録もまた決して満足し得るものではなかった。そもそもが、賞味期限のある商品の如くに扱われて来た映画作品であってみれば、それもやむを得ぬこととされて済まされて来た。
だがしかし、個々の映画作品の、信頼し得るデータベース無くして、どうして映画史研究が成立し得ようか。即ち、映画界公認とも呼べる映画史の確立の為には、それらの記録の調査、発掘が最優先の課題であった。その充実、完成に挑戦しようという試みは、戦前の『キネマ旬報』誌上に連載された「日本映画史素稿」によって始まった。がしかし、この採算を度外視した折角の企画も、戦時下の雑誌統合によって中絶し、映画史最初期の素材の提供に留まって一冊に纏められることも無かったのである。
戦後になって逸早く、改めてそうした作業の再開、継続の必要性を呼び掛けたのが、若干二十代半ばの塚田嘉信氏であった。戦中の中学生時代から映画鑑賞に夢中になるとほぼ同時期に、その鑑賞作品を克明に記録しつつ、また、映画雑誌の購読と並行して映画文献の蒐集にも取り組み始める。敗戦を経てやがてのことに映画雑誌投稿欄にも、塚田氏の呼び掛けに理解を示す投稿者も現れて、互いに研究を支え合う仲間となり、更には映画ジャーナリズムとは距離を置いて独自の研究を開始する。その発表の場となったのが、所謂「私家版雑誌」である。だがしかし、こうした雑誌の多くは少部数が研究仲間に配布されるだけであった為に、専門の研究者でさえ手にすることは稀であった。
塚田氏は、そうした中でも、映画公開記録を充実させることに最も熱心であり、仲間の中でもとりわけ若い世代の研究者でありながら、常に徹底して記録、資料の探索を率先して行って来た。信頼し得る映画史の確立の為には、先ずは信頼し得る資料を手許に揃えることは当然であるという覚悟と共に、その後も生涯にわたって数多の優れた研究を私家版誌上に展開し続けた。
だがしかし、その研究も、資料コレクションの実態も殆ど知られぬままに、平成七年末に急逝された。そして亡くなられてから二十余年を経た平成三十年、氏の業績、所蔵資料、文献類を大切に保存されて来たご遺族から、ここ国立映画アーカイブがそれら一切の寄贈を受けた。
今回の復刻は、その氏の旧蔵資料から選び出した、塚田氏にとって謂わば「試作版」とも言える最初の私家版から、その決定版ともなった『映画史料発掘』に至るまでの、氏の作成、発行した私家版の全てを網羅し、更にはいずれは世に問うたであろう製作途中のものまでも重要な業績の一部と捉えてリストに加えた。未完成のものを含めることは、氏の意向に沿わないことは承知の上だが、類書の無い研究でもあるので、敢えて復刻の対象とした。
加えて、氏の研究仲間たちが手掛けた私家版研究雑誌の多くも揃えた。恐らく、これ程充実したレベルで所蔵している研究者も氏の他には居ないであろうと考えてのことだが、当然ながら同時に氏の研究姿勢をも伝える重要資料でもある。また、塚田氏が公開記録の基礎資料、文献として所蔵していた、他の機関等にも所蔵が無い、今日では入手の機会も限られた稀本をも加えた。
それでも尚、氏の研究の全貌を伝えるには不十分なのであるが、映画史研究者にとっては勿論のことだが、広く歴史研究に携わる者も、知られざる氏の業績に触れることで、インターネット、デジタル化、AIが加速度的に研究環境にも影響を及ぼす時代にあってこそ、改めて歴史研究とは何か、歴史資料とは何か、を再発見するまたとない機会となる筈である。更には、氏の遺されたこれらの基礎資料、文献を基にした今後の新たな視点での研究への挑戦も、決して大袈裟ではなしに、無限大の可能性をも秘めていることを確信する。塚田嘉信氏という一個人が成し遂げた、その偉業を正しく評価する為にも、それは私たちに求められている責務でもあろうか。
最後に、個人的なことを記すことをお許し頂きたいが、私自身二十代半ばから氏の最晩年までの十五年程の間、極めて親しく接し、指導を仰いだ一人である。この復刻を契機として、私もまたもう一度立ち止まって歴史研究の「原点」を見つめ直し、研究の次なる新世紀をも切り開く作業に加わりたいと考える。その成果を、いまだ待ち続けているであろう塚田氏の許に届ける為にも。
塚田嘉信氏資料の受け入れと、その後の経過 本地陽彦
映画史家・塚田嘉信氏旧蔵資料の受け入れは、平成三十年四月二十五日、ご遺族(嘉信氏令妹)の当・国立映画アーカイブへの来館に始まる。「兄塚田嘉信の資料寄贈の相談」がそのご用件とのことであったが、すぐさま準備の為、先ずは館職員によるご自宅をお訪ねしての所蔵状況の確認を行い、その後の輸送業者との打ち合わせ、受け入れの為の専用書架の設置等を経て、同年七月四日にダンボール箱三百二十五箱分の資料、書籍類を京橋本館と相模原分館とに分けて搬入した。
塚田氏は生前、初期映画史研究の第一人者として、又は映画雑誌創刊号の厖大な数の所蔵者としては既に知られてはいたものの、そのコレクションの全容は、氏が例え求められようとも安易に公開することが無かったことも手伝って、寧ろ「幻」でもあった。従って、大まかな下見は済ませてはいたものの、搬入後は、一層の慎重を期すために改めて本館と分館での架蔵の選別を行った。
その資料類の特質はと言えば、氏は早くから熱狂的な映画ファンでもあったから、一般的な映画愛好家が所蔵するレベルのものもある程度含まれてはいるが、一方で映画史の基礎資料を徹底して手許に揃えることを生涯の目的としていたことから、重要な映画文献、雑誌類は勿論のこと、今回の復刻でも取り上げる私家版の数々や、企業の内部資料、公的な機関による特殊な刊行物といったものも、それが映画史を語る上で欠かせないものと評価したものであれば、殆どが欠号無く揃ってもいる。また、小さなプログラムやスチール写真一枚、新聞広告等のスクラップにしても、必ずと言っていい程、体系的映画史資料に位置付けられるものであり、同時に多くが手製のファイルに整然と収められてもいる。私の知る限りにおいても、それは個人での力量を遥かに超えるような空前の規模と質を持つものであり、ここ国立映画アーカイブにとっても最も相応しい、否、待ち焦がれた資料群とも言えるものである。
それらは今後の一般公開、利用へと向けて順次整理を進めつつあるが、その第一段階として、科学研究費の助成を受けて、『映画史家・塚田嘉信 そのコレクションと業績』と題して、受け入れ経過、資料の特質、整理を終えた雑誌類の詳細なリスト、塚田氏年譜等を収録の上、成果報告書として二〇二三年三月に刊行(非売)した。A4版三百八十頁に及ぶ大冊である。執筆者は、入江良郎、岡田秀則、紙屋牧子、大傍正規、佐崎順昭の各氏と本地である。更には、同助成事業の一環として、刊行と前後する三月十八日に館の小ホールを利用して一般向けの報告会をも行った。その際、ホール入口脇に、私家版を含む塚田氏の著作刊行物全冊を展示した。恐らく、その全てを纏めて眼にするのは、来館者全員が初めてのことだった筈である。
今回の復刻版刊行は、従って謂わば塚田氏旧蔵コレクション公開への、第二段階とも言えるものである。資料の全容公開へは、まだ多くのハードルを超えねばならないが、この復刻版刊行の成果が、間違いなくそれを後押しする力ともなるであろう。
塚田嘉信 つかだ・よしのぶ
昭和4年10月28日、東京の湯島に生まれる。生家は、関東大震災、東京大空襲と、二度にわたって被災する。昭和17年、第三東京市立中学校(現・都立文京高校)に入学するが、肺結核で一年休学する。翌18年、福島の飯坂温泉に疎開し福島中学(現・福島高等学校)に転校。翌19年4月、初めて映画雑誌『新映画』を購入。この頃から猛烈な勢いでの映画館通いが始まる。敗戦を経て昭和23年に湯島へと戻り、翌24年、日本大学専門部映画学科に入学するがやがて中退する。昭和28年8月、『キネマ旬報』の投稿欄「旬報サロン」に初めて投稿が採用される。同30年、『キネマ旬報』に三回に分けて「日本映画封切総目録」、「外国映画総目録」、「内外映画作品題名総索引」が掲載される。これを契機にして編集部員に迎えられる。同年11月、「封切目録」を一冊に纏めた『内外映画総目録』が『キネマ旬報』別冊として刊行される。氏の実質的な処女著作。昭和32年、キネマ旬報社を退社。同年4月、田中純一郎氏の『日本映画発達史』全三巻の索引作成に協力する。同年10月、塚田氏宅を事務局として、私家版雑誌『映画資料』を創刊。昭和34年2月、渋谷の古書展で「映画雑誌創刊号百十四種」を購入、映画雑誌創刊号コレクションの柱となる。昭和37年2月、『松竹七十年史』編纂の為の松竹社史編纂室勤務が始まる。9月、田中純一郎氏が保証人となって松竹と正式契約を交わす。昭和39年3月、『松竹七十年史』発行、5月に松竹退社。昭和40年6月、私家版の『映画雑誌創刊号目録 大正篇』を、十月に『同 昭和篇』、翌41年12月に『同 補遺篇』をそれぞれ上梓。この間、昭和40年から翌41年にかけて、映画世界社々主の橘弘一郎氏の許へ頻繁に通い、橘氏の片腕となって助手を務める。昭和45年11月、『映画史料発掘』第1号発行。以後、昭和55年10月までに36号(約480頁)を発行。昭和55年11月、『日本映画史の研究』(現代書館)を刊行、初期映画史研究にかつてない程の影響を与える一冊となる。昭和58年、私家版『雑誌「活動之友」総目次』、『雑誌「活動之世界」総目次』上梓。塚田氏自身がタイプライターを打って版下を作成し、それをコピーして自身で製本するという、全てが「手作り」の私家版である。以後、この手法で様々な研究成果を私家版で製作する。昭和60年8月、私家版『映画雑誌創刊号目録・続補遺篇』を限定五部で上梓。その後も私家版の発行を続けるが、平成7年12月15日、自宅で倒れて救急搬送され、同月22日、死去。享年66。(本地陽彦・稿)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第1回配本 全2巻
刊行年月 2025年05月
定価66,000円
(本体60,000円)
ISBN978-4-8433-6979-1 C3374
(電子書籍版=同時1アクセス:本体66,000円+税╱同時3アクセス:本体132,000円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第1巻 『映画史料発掘』
刊行年月 2025年05月
定価39,600円
(本体36,000円)
ISBN978-4-8433-6980-7
(電子書籍版=同時1アクセス:本体39,600円+税╱同時3アクセス:本体79,200円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第2巻 『映画雑誌創刊号目録』
刊行年月 2025年05月
定価26,400円
(本体24,000円)
ISBN978-4-8433-6981-4
(電子書籍版=同時1アクセス:本体26,400円+税╱同時3アクセス:本体52,800円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第2回配本 全3巻+補遺2
刊行年月 2025年11月(予定)
定価103,400円
(本体94,000円)
ISBN978-4-8433-6982-1 C3393
(電子書籍版=同時1アクセス:本体103,400円+税╱同時3アクセス:本体206,800円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第3巻 初期私家版雑誌等集成
刊行年月 2025年11月(予定)
定価26,400円
(本体24,000円)
ISBN978-4-8433-6983-8
(電子書籍版=同時1アクセス:本体26,400円+税╱同時3アクセス:本体52,800円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第4巻 映画雑誌総目次集成
刊行年月 2025年11月
定価18,700円
(本体17,000円)
ISBN978-4-8433-6984-5
(電子書籍版=同時1アクセス:本体18,700円+税╱同時3アクセス:本体37,400円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第5巻 映画作品公開記録集成
刊行年月 2025年11月(予定)
定価15,400円
(本体14,000円)
ISBN978-4-8433-6985-2
(電子書籍版=同時1アクセス:本体15,400円+税╱同時3アクセス:本体30,800円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第6巻 補遺1 未刊・未完・未配布・私家版集成
刊行年月 2025年11月(予定)
定価18,700円
(本体17,000円)
ISBN978-4-8433-6986-9
(電子書籍版=同時1アクセス:本体18,700円+税╱同時3アクセス:本体37,400円+税)
塚田嘉信 私家版復刻集成 第7巻 補遺2 『日本映画史素稿』集成
刊行年月 2025年11月(予定)
定価24,200円
(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-6987-6
(電子書籍版=同時1アクセス:本体24,200円+税╱同時3アクセス:本体48,400円+税)