
満洲文学大系 全24巻
定価624,800円(本体568,000円)
ISBN 978-4-8433-7098-8 C3391
A5判/上製╱カバー
本書の内容
満洲文学を代表する日・中・露の作家たちを集成
「満洲国」で活動した主要な作家の代表作を精選。稀覯な作品群を大系的に網羅する、満洲文学・文化研究必読のシリーズ。
『満洲文学大系』刊行にあたって 西原和海
いわゆる「満洲文学」とは、戦前、「満洲国」(中国東北)において展開された文学運動と、そこで生まれた文学作品のことを指すわけだが、その実態に対する関心と研究とが熱を帯び始めるのは、日本においても中国においても、一九八〇年代半ばあたりからのことであった。以来、出版・映画・演劇・美術など、文学周辺の文化諸ジャンルをも巻き込みながら、この分野への研究が着実に進められてきた。
しかし、その熱意が高揚を見せるのは、一九九〇年代から二〇一〇年代初期あたりまでであって、その後、研究状況は次第に沈滞化していく……。なぜ、そうなったのだろうか。その間の事情については、いろいろと説明もできようが、その大きな理由としては、研究対象となるべき、そもそもの文学作品に接する機会を、私たちはなかなか得ることができなかったから、ということが挙げられよう。
要するに、満洲国内で刊行された文学書の類い、個々の作品が発表された多種多様な雑誌など、それらが現在、ほとんど入手困難となっているからである。例えば、満洲文壇を主導した文芸雑誌『作文』は今、滅多に見ることができないし、そこに参加した作家・詩人たちの著書も、今日、瞥見することさえ容易ではない。
このような研究上の危機状況を、どうにかして打破していかなくてはならない。それが今回、この『満洲文学大系』を企画・編纂したモチーフとなっている。もちろん、ここに収録した本たちは、満洲文学全体の一端を示すに留まる。読者の好評を得ることができたならば、さらにこの『大系』の拡大・充実を図っていきたい。
本書の特色
●「満洲国」で刊行された、在満作家の稀覯な代表作を集成。
● 日本人作家のみならず中国人作家、ロシア系作家も収録。 アンソロジー、詩集なども収録し、多様な満洲文学の諸相がうかがえるよう精選した。
● 満洲文学研究者のみならず、広く日本文学研究者・現代史研究者・植民地史研究者にとって必備・必読の資料を提供する。
●「満洲国とは何であったか」という問いかけに、文学の場から応える基本文献を紹介。
● 各巻に解説を附す。
満洲文学大系 第1回配本 全8巻
刊行年月 2025年10月(予定)
定価213,400円
(本体194,000円)
ISBN978-4-8433-7099-5 C3391
満洲文学大系 第1巻 秋原勝二『暮鼓』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価24,200円
(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-7100-8 C3391
秋原勝二 暮鼓 (北陵文庫、一九四五年)
著者の満洲時代唯一の創作集。『作文』同人。「在満日本人二世」の生き方を問うた代表作「夜の話」などを収録。
【収録内容】夜の話/草/膚/暮鼓/河や山/草莾唱/あとがき
満洲文学大系 第2巻 北村謙次郎『月牙』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価25,300円
(本体23,000円)
ISBN978-4-8433-7101-5 C3391
北村謙次郎 月牙 (吐風書房、一九四三年)
『満洲浪曼』を主宰した著者の随筆・評論集。新京を中心とする当時の文壇状況を活写して、貴重な資料ともなっている。
【収録内容】こどものつゞりかた/満洲国各民族創作選集序/寛城子にて(浅見淵氏へ)/満洲文学十年の譜/黄瀛の訃/冬の網膜/無題/寛城子にて/陰霧集/熱河風物帖/熱河讃/熱河を想ふ/この夏の記/短い旅の記/寛城子の秋/航海日記/炉辺雑記/海の御民/旅の宿/北駅/南満旅情/北辺羈旅小品
満洲文学大系 第3巻 長谷川濬『鳥爾順河』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価22,000円
(本体20,000円)
ISBN978-4-8433-7102-2 C3391
長谷川濬 鳥爾順河 (国民画報社、一九四四年)
建国ロマンを夢みた著者の、主として内モンゴルを舞台にした小説と紀行文を集める。『満洲浪曼』主宰者の一人。
【収録内容】蘇へる花束/鳥爾順河/鷺/三つの世界/野火/耕地/海拉爾の宿/或るマクシムの手記/早春/バルヂャコン草原にて/ウスチ・シユルホーワヤ修道院/カムチャーツカ紀行
満洲文学大系 第4巻 青木實『花筵』『北方の歌』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価33,000円
(本体30,000円)
ISBN978-4-8433-7103-9 C3391
青木實 花筵 (大連詩書俱楽部、一九三四年)
【収録内容】大正十一年四月のこと/待機/レコード/秋思記/喫茶店/稲城/旅中日記抄/雨の汽車旅/旅/伊豆土肥道
青木實 北方の歌 (国民画報社、一九四二年)
著者は『作文』の実質上の主宰者。『北方の歌』は、満洲国がかかえる民族的・社会的問題に果敢に挑戦した小説作品を集める。初期の詩的散文集『花筵』も併録。
【収録内容】呼倫貝爾/農業倉庫/農事合作社職員の手帳/屯のはなし/青服の少女/沙塵/北辺/あとがき
満洲文学大系 第5巻 日向伸夫『邊土旅情』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価25,300円
(本体23,000円)
ISBN978-4-8433-7104-6 C3391
日向伸夫 邊土旅情 (北陵文庫、一九四三年)
「白頭山紀行」はじめ、満鉄旅客課に勤務した著者ならではの紀行・随筆を集める。『作文』同人。
【収録内容】白頭山紀行/撫松県城/秋風旅情/松花江紀行/熱河自動車路線紀行/北の沃野/秋深き農場にて/哈爾濱の憂鬱/普及版の本/昨日感じたこと/凍る夜々/氷花の季節/海軍記念日/己れの道/第八号転轍器について/作文編集の回顧/二十九歳/科学一語/早春随筆/校正室にて/第二次勝戦祝賀の日に/京都の春/暮春日記/竹内正一氏と「復活祭」/北の旅/臨江にて/鳥籠/少年/あとがき
満洲文学大系 第6巻 三宅豊子『塒の歌』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価26,400円
(本体24,000円)
ISBN978-4-8433-7105-3 C3391
三宅豊子 塒の歌 (吐風書房、一九四一年)
満洲文壇にあって、もっとも著名だった女性作家。この地に生きる女たちの生活・恋愛・育児などの姿を描いた小説六篇を収める。『作文』同人。
【収録内容】羽音/朝げ/乱菊/静かな風/帰郷/塒の歌
満洲文学大系 第7巻 爵青 『黄金の窄き門』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価22,000円
(本体20,000円)
ISBN978-4-8433-7106-0 C3391
爵青(大内隆雄・訳)
黄金の窄き門 (満洲公論社、一九四五年)
当時の文壇にあって「鬼才」と目された爵青の幻の長篇。満洲国壊滅直前、大内隆雄訳で刊行された。大東亜文学賞授賞作品。
【収録内容】黄金の窄き門
満洲文学大系 第8巻 大内隆雄『満洲文学二十年』
刊行年月 2025年10月(予定)
定価35,200円
(本体32,000円)
ISBN978-4-8433-7107-7 C3391
大内隆雄
満洲文学二十年 (国民画報社、一九四四年)
評論家・翻訳家として活躍した著者の回想録。満洲文学の年代的記録としては唯一のものである。
【収録内容】同人雑誌『黎明』の頃/続、詩人たち、『塞外詩集』『三人集』『燕人街』など/稲葉亨二、石原巖徹や『街』『線』など/『『胡同』『曙人』と『満洲文学パンフレット』そして『満洲文芸年誌』/満洲事変と文芸界、『高梁』の創刊/『高梁』のその後、『作文』/『満洲行政』と『モダン満洲』/満洲文話会が出来て/『原野』刊行の頃/『満洲浪曼』/満系文学史の展望/満洲文芸家協会結成さる/康徳九年以後の概況 ほか
満洲文学大系 第2回配本 全8巻
定価213,400円
(本体198,000円)
ISBN978-4-8433-7108-4 C3391
満洲文学大系 第9巻 竹内正一『復活祭』
定価30,800円
(本体28,000円)
ISBN978-4-8433-7109-1 C3391
竹内正一 復活祭 (満鉄社員会、一九四二年)
著者の得意とする「哈爾濱もの」を中心とした短篇小説集。うらぶれた白系ロシア人・日本人などの姿を活写する。『作文』同人。
【収録内容】馬家溝/白眠堂径租/復活祭/山裾の街/孤児/寒暖/故郷/ギルマン・アパート点描/寧安覚え書
満洲文学大系 第10巻 町原幸二『是好日』
定価19,800円
(本体18,000円)
ISBN978-4-8433-7110-7 C3391
町原幸二 是好日 (作文発行所、一九四〇年)
日々の暮らしの中、人や本との出会いなどを慎ましく綴った小品・随筆を収める。『作文』同人として活躍。
【収録内容】汽車見物/南天の実/ある町角の本屋/睡蓮咲く頃/カルタと川原君/岡山君の年賀状/友の転勤/三月一日の日記/「夢二追憶特集号」/絵の挿話/奉天に行く小杉君/「父」の小説/一市民の一票/本の挿話/出版記念会/木田と妹のこと/絵の旅 ほか
満洲文学大系 第11巻 筒井俊一『北邊抒情』
定価22,000円
(本体20,000円)
ISBN978-4-8433-7111-4 C3391
筒井俊一 北邊抒情 (千代田書房、一九四四年)
新聞社学芸部に勤務しながら、代表作「林檎園」など、旺盛な創作活動を見せた。小説十一篇を収録。
【収録内容】北辺抒情 /娘子軍/土の倫理/雉/主従/姉妹の宿/粉雪/名刺/林檎園/流水の頃/美しい訣別
満洲文学大系 第12巻 加納三郎『満洲文化のために』
定価28,600円
(本体26,000円)
ISBN978-4-8433-7112-1 C3391
加納三郎
満洲文化のために (作文発行所、一九四一年)
・司法官だった著者は、異色の『作文』同人として文芸評論、社会時評を執筆。その主要作を集成した作品集。
【収録内容】満洲文化のために/満洲国の文化運動は如何に為すべきか/国民文化運動の主体としての満洲文話会/満洲ジャーナリズム論/満洲文学の独自性/満洲文学の新たなる課題/郷愁雑記/斉々哈爾の死刑場/島の三日間 ほか
満洲文学大系 第13巻 上野市三郎『縣城の空』
定価24,200円
(本体22,000円)
ISBN978-4-8433-7113-8 C3391
上野市三郎 縣城の空 (国民画報社、一九四四年)
興農合作社に勤務のかたわら書かれた満洲農村ルポ。序文は山田清三郎。表題作ほか、「実験農村の話」、「屯長の笛」など。
【収録内容】実験農村の話/屯長の笛/北の楽天主義/分家の話/農村/泥濘の交易場院子/農産物交易場風景/隠れた殊勲者/合作会社訪問記/ある興農会の家で/乾媽/終列車の出來事/硫安と瓢箪/蒲と戦ふ人々/縣城の空 ほか
満洲文学大系 第14巻 満洲文話会 編『大陸の相貌』
定価33,000円
(本体30,000円)
ISBN978-4-8433-7114-5 C3391
満洲文話会 編 大陸の相貌 (吐風書房、一九四四年)
随筆、詩、短歌、俳句など、満洲文壇の主要な書き手一一六名による作品アンソロジー。牛島春子、望月百合子、三宅豊子などが登場。
【収録内容】満洲篇 「二太太の命」牛島春子/「田舎で会つた日本人」富田寿/「霜ふる」金丸精哉/「都会と農村の同志たち」望月百合子/「愛路運動雑話」青木實/「屯子のことなど」野川隆 ほか/北支篇 「日本色雑観」高木健夫/「北京雑記」江崎磐太郎/「黄琉璃の破片」飯塚朗/「胡同の酒場」近東綺十郎/「支那劇の観賞態度」石原厳徹/「北京に於ける美術文化の現状」一氏義良 ほか/詩 「叢原に死す」坂井艶司/「星ヶ浦の海のやうに」藤原定/「暁市場にて」小杉茂樹/「雪の夜」古川賢一郎/「たむろ記」島崎曙海/「水仙花」城小碓 ほか/短歌/俳句
満洲文学大系 第15巻 趙孟原(小松)編『黄土の花』
定価19,800円
(本体18,000円)
ISBN978-4-8433-7115-2 C3391
趙孟原(小松)編 黄土の花 (藝文書房、一九四五年)
満洲国崩壊直前、中国人作家経営の出版社から発行された日本人作家による短篇小説集。青木實、長谷川濬、小林實などが寄稿。
収録内容】先遣隊物語 菅忠行/野の病院 小林實/部落の掟 濱崎初好/根の帰農兵 上野凌嵱/鉄警分所日誌 青木實/関家三戸開拓団 長谷川濬
満洲文学大系 第16巻 城小碓『絹街道』/『塞外詩集』ほか
定価39,600円
(本体36,000円)
ISBN978-4-8433-7116-9 C3391
城 小碓『絹街道』/『塞外詩集』ほか
塞外詩集 (塞外社、一九三〇年)
塞外詩集 第2輯(大連詩書倶楽部、一九三三年)
城 小碓『絹街道』(吐風書房、一九四三年)
蒙古十月(多以良書房、一九三一年)
廿地 満 巡礼の歌(第一北方詩社、一九三九年)
坂井艶司 崖つぷちの歌(作文発行所、一九三九年)
満洲詩壇の代表的詩集六冊を収める。安西冬衛、城小碓、古川賢一郎、廿地満、坂井艶司などが集合。
満洲文学大系 第3回配本 全8巻
定価193,600円
(本体176,000円)
ISBN978-4-8433-7117-6 C3391
