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季刊 映画研究 全3巻【new!】

季刊 映画研究 全3巻【new!】

[監修・解説] 冨田美香(国立映画アーカイブ主任研究員) [解説・解題・総目次] 三上聡太( 立命館大学客員研究員)

揃定価77,000円(揃本体70,000円) 
ISBN 978-4-8433-6518-2 C3374
B5/上製/カバー装
刊行年月 2023年10月

関連情報

本書の内容

1941年7月〜1942年12月、 戦時統制下、唯一の映画研究誌。 「武器としての日本映画」を志向した 映画研究の問題と全体像が明らかに。

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刊行にあたって          冨田美香

 日本映画の戦時統制は、製作、配給、興行、定期刊行物の各分野で重ねた官民合同の議論をとおして 問題意識 を共有し、時局の変化に応じた段階を踏みながら浸透していった。『季刊 映画研究』は、日中戦争下の第一次映画雑誌統制で、100誌近くあった民間発行の映画雑誌が七誌に整理された際に、唯一の映画研究誌として誕生した雑誌である。発行は1941年七月から1942年12月までの計五冊に終わったが、全冊所蔵している機関は極めて少なく、今回の復刻でようやく、日本における戦中までの映画研究の全体像を把握しやすくなったといえるだろう。
 本誌の特徴は、第一線の理論家から実践者まで揃えた多様な執筆陣の論考にある。編集兼発行人の滋野辰彦(上田定德)を筆頭に、共に『シナリオ研究』を発行してきたシナリオ研究十人会のメンバーである北川冬彦、飯田心美、堀場正夫、澤村勉、清水光、倉田文人、小林勝らを中心として、今村太平、長江道太郎、飯島正、清水晶、大塚恭一といった映画理論家、批評家や、伊丹万作、野淵昶、豊田四郎、宮島義勇、三木茂、深井史郎ら映画監督やスタッフが、シナリオ論や映画論、漫画映画論やモンタージュ論、映画演出の詳細まで展開している。戦時下に要請された映画研究誌の枠内で、シナリオ研究十人会の目的でもあった「日本映画向上のためのシナリオ革新運動」や、執筆者たちの 問題意識 がどのように変わっていったのかが如実にわかる史料でもある。その変化は、日中戦争から太平洋戦争の開戦、ガダルカナル島撤退に至るまでの激しい時局の変転が、毎号の内容やテーマ、掲載シナリオ、「映画法の理念」の連載といった編集方針にも大きな影響を与えていることが、季刊であるがゆえに、痛ましいほど明解に誌面にあらわれている。
 本誌は、既に復刻されている雑誌『シナリオ研究』(1937年〜1940年)や『映画科学研究』(1928年〜1932年)および『映画芸術研究』(1933年〜1935年)とあわせて読むことで、日本映画の草創期から戦中期までをとおしたシナリオ論、映画論、映画研究を通史的に概観する視野を得られるだけでなく、映画に真摯に取り組み、理知的な思考を重ねてきたモダニストたる映画人たちが、武器としての日本映画の向上を志向するに至ったプロセスをも示す史料である。映画史、芸術史、日本史、現代史、メディア史、社会学など幅広い分野にて活用されることを願う。  
(国立映画アーカイブ主任研究員)

刊行にあたって          三上聡太

 「映画の芸術性全般に関する専門研究」と「映画学の確立」を掲げて創刊された『季刊 映画研究』は、「映画雑誌新体制」と呼ばれる戦時統制下の映画研究誌である。当時の映画人たちの活動がわかる数少ない資料だが、部数が限られていたことや一年半で廃刊になったこともあり、これまでほとんど注目されずにきた。
 『季刊 映画研究』の担い手となったのはシナリオ研究十人会のメンバーである。飯田心美・飯島正・今村太平・大黒東洋士・北川冬彦・滋野辰彦らは、当局の「国民映画」の片棒を担ぐかたちで、シナリオ研究を映画研究へとスライドさせていった。そこにはかつての「シナリオ文学運動」を再始動する狙いもあった。
 そのため本誌は研究報告に加え、シナリオ発表の場をも兼ねている。すでに自由に映画をつくることも、また自由に映画を論じることもむずかしくなっていたが、映画の「代用」としてのシナリオにはまだ可能性が残されていた。シナリオがこのような時局にあやかったことは、彼らが積み上げてきた「視覚性と文学」をめぐる理論とともに、あらためて取り上げられなければならない問題点である。
 今回の復刻では、日米開戦を挟んだ第一冊(1941年7月)、第二冊(1941年12月)、第三冊(1942年4月)、第四冊(1942年8月)、第五冊(1942年12月)の全冊を揃えることができた。映画研究がますます盛んとなっている今日、その理論と実践が戦争とどのような関係にあったのか、一度振り返っておく必要があるだろう。『季刊 映画研究』がひとつの手がかりとなれば幸いである。
(立命館大学客員研究員)

【本書の特色】

●戦時統制下唯一の映画研究誌
日中戦争下の第一次映画雑誌統制で、100誌近くあった民間発行の映画雑誌が7誌に整理された際に、唯一の映画研究誌として誕生。発行は1941年7月から1942年12月までで、戦時下日本における映画研究の問題とその全体像を把握できる。
●理論家から実践者までの多様な執筆陣
編集兼発行人の滋野辰彦をはじめシナリオ研究十人会のメンバーの北川冬彦、飯田心美らを中心に、今村太平、長江道太郎、飯島正といった映画理論家、批評家や、伊丹万作、宮島義勇、三木茂ら映画人などの豪華執筆陣。
●シナリオ論、映画演出などを詳細に記述
シナリオ論や映画論、漫画映画論やモンタージュ論、映画演出の詳細まで考察しており、シナリオ研究十人会の目的であった「日本映画向上のためのシナリオ革新運動」や、執筆者たちの“問題意識”が戦時下にどのように変わっていったのかが如実にわかる。
●シナリオ論、映画論、映画研究を
 通史的に概観
既に復刻されている『シナリオ研究』や『映画科学研究』とあわせて読むことで、日本映画の草創期から戦中期までをとおしたシナリオ論、映画論、映画研究を通史的に概観する視野を得られるとともに、映画人たちが、武器としての日本映画の向上を志向するに至った過程をも理解することができる。
●最終巻末に詳細な解説と解題・総目次を附す
第3巻の巻末に詳細な解説と解題・総目次を附した。

季刊 映画研究 1 季刊 映画研究 第1冊(1941年7月)/第2冊(1941年12月)

刊行年月 2023年10月 定価27,500円 (本体25,000円) ISBN978-4-8433-6519-9

季刊 映画研究 2 季刊 映画研究 第3冊(1942年4月)/第4冊(1942年8月)

刊行年月 2023年10月 定価27,500円 (本体25,000円) ISBN978-4-8433-6520-5

季刊 映画研究 3 季刊 映画研究 第5冊(1942年12月)/解説・解題・総目次

刊行年月 2023年10月 定価22,000円 (本体20,000円) ISBN978-4-8433-6521-2