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本書の内容

政変・戦乱や感染症、災害、 そして中国人との友好・対立の荒波に生きた 在華居留邦人の詳細な記録。第II期は天津、営口、ハルピン等の資料を収録。

刊行にあたって　　　　　ゆまに書房編集部

　本シリーズは、先に刊行した『在中国居留民団史集成』第㈵期の続編である。第㈵期においては上海、南京、安東等の居留民団・民会の公式史を収録した。本第㈼期においては、天津居留民団の公式史に加え、東北（満洲）・華中・華南等地域の居留民団・居留民会に関する非公式資料を収録する。
　明治期から日本の敗戦まで中国の諸都市に日本人の居留民団・民会が存在したが、これらの団体の中には公式資料を刊行しないまま、消滅したものも多い。そのため、第㈼期においては、居留民団・民会の周辺において活動した団体・人物による資料を収録することに努めた。
　例えば、営口居留民団は、明治四十年に居留民団法の指定を受け最初に設立された民団の一つであるが、その公式史の存在は確認できないため、営口商工公会による現地邦人史を加える。
　また、華中・華南地域の一部都市でも日本人会や居留民会が存在したが、その多くは発展を見ないまま消滅している。今回収録した台湾銀行による調査資料は、これら団体の活動を知る数少ない手がかりの一つである。
　これら非公式資料の記述の方式は様々である。日本人入植の沿革、団体の成立、日本人学校の建設等、公式史同様のスタイルを取るものもあれば、座談会によってざっくばらんに過去を回想するというものもある。
　形式が様々であるとはいえ、これら非公式資料が居留民団・民会史研究に対して持つ価値は些かも失われるわけではない。こうした資料においても、中国社会との関わりや生活のための施設整備の苦労、数少ない日本人同士のネットワーク等、大陸で生きようとした日本人の努力が切々と語られている。
　第㈵期と同様に、第㈼期収録の諸資料も、在外邦人に関する研究に広く役立てていただければ、望外の喜びである。

【本書の特色と収録内容】

●天津居留民団の公式史、東北（満洲）や華中・華南地域の諸都
　市に存在した居留民団・民会に関する調査資料等を収録。

●日本人の居住開始の経緯、現地領事館の活動、公共施設の整
備、日本人学校の設立、自然災害や感染症への対応など、日本人が中国で生活するために行った努力を伝える。

●居留民団体の所有する文書や在住者からの聴き取り、座談会
等を情報源としており、他の史資料には見られない記述を豊富に含む。

●辛亥革命、北伐、満洲事変、日中戦争等、多くの政変・戦乱が
発生した時期において、現地中国人との間で発生した摩擦を克明に記録。

●居留地における住居、企業、神社、学校等の施設、及び居留民
　団体の中心となった人物等の写真を多数掲載。

●第十四巻に詳細な解説を附す。

●特におすすめしたい方●　
中国・日本近現代史研究者、植民地史研究者、
各大学の図書館、公共図書館など。