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昭和初期 世界名作翻訳全集 全230巻

昭和初期 世界名作翻訳全集 全230巻

定価1,023,440円(本体930,400円) 
ISBN 978-4-8433-3167-5 C0397
四六判並製/カバー装
刊行年月 2004年06月

関連情報

本書の内容

※本全集のうち第1期~第4期(第1巻~200巻)は、オンデマンド版のため、ご注文より製作に2~3週間ほどお時間をいただいております。

春陽堂の世界名作文庫、待望の復活!

ゆまに書房はこのたび、春陽堂書店と協力して、昭和初期、春陽堂書店が世界名作文庫として刊行した世界の名作230点を「再生」することとなりました。今ではなかなか手に入らない稀覯本を、当時の姿を残し、復刻します。


推薦のことば    小野寺健(横浜市立大学名誉教授)
 昭和の初期の『円本』の登場が、出版界に革命を起こしたことはよく知られている。皮切りは、改造社が大正15年から刊行した全38巻の「現代日本文学全集」。1巻1円という低価格で出版し、35万部という空前の売上を達成した。円本という呼び名は、当時、東京市内の乗車料金を1円均一として走るタクシーを「円タク」と呼んだことに由来するが、この全集、じつは私には特別の思い入れがある。文学よりむしろ哲学や社会学が好きだった父がなぜかこの全集を買いそろえておいてくれたおかげで、本のなかった戦争中の中学時代に片端からこれを耽読し、今ではその名を聞くこともない、しかし忘れがたい多くの作品にふれることができたのだ。最近とつぜん復活した「真珠夫人」にとりつかれて徹夜で読みあげたばかりに、中学へ入って最初の幾何の試験に落第点をとったり、蘆花の「思ひ出の記」に魅せられて恋愛観の基礎を植えつけられたことなど、ほんの一例にすぎない。大げさにいうとこうして私の人生を決定した円本の出現は、ちょうど英国の「エブリマンズ・ライブラリー」のように、知識階級の大衆化、大衆文化時代の到来という、歴史的変化を占うものだったのである。社会には、さらに広い視野をもとめる読者の群が待ちかまえていた。
 その欲求に応えたのが、「現代日本文学全集」についで、文芸出版の老舗新潮社が昭和2年 1月を期して刊行を開始した「世界文学全集」全38巻で、これは改造社の全集を上まわる50万部の売上を記録した。「神曲」をはじめ、伏字だらけだった「デカメロン」「地獄」、その後はめったに出会わないラーゲルレーヴなど北欧文学の数々、さらには新時代を告げる戯曲集までふくめた作品選択は、編集部の意欲を窺わせるのに充分である。この翻訳全集が、日本人の想像力と精神の世界にどれほど斬新な趣味をもたらし、文学観にとどまらず文化全体を豊かにしたかは計り知れまい。その訳文の多くがいまなお古びていず、むしろ味わいふかいことは一驚に値する。
 だが、明治以来の翻訳には、ロシア文学などを典型的な例として、英訳からのいわゆる重訳が慣行として行われていて、この「世界文学全集」も例外ではなかった。
 このたび復刊される春陽堂版『昭和初期世界名作翻訳全集』第1期・全50巻は、原則として重訳を排し、第一級の作家・翻訳家による原語からの「直訳」を多く収めているという。時代との関わりにおける作品の選択といい翻訳の技術といい興味津々だが、近代日本の文化に多大な貢献をした翻訳の歴史と意義を再考する資料として、その価値はきわめて大きい。