中国古典庭園
園冶図解【new!】
定価28,600円(本体26,000円)
ISBN 978-4-8433-6428-4 C1070
A4判/上製・カバー装・オールカラー/416頁
刊行年月 2023年01月
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本書の内容
造園理論書のバイブル 『園冶』初の図解を翻訳
発行:科学出版社東京/発売:ゆまに書房
【特色1】造園の第一人者による『園冶』を図解
明代の造園家・計成が著した造園論『園冶』。中国庭園史上の重要な古典文献として今なお圧倒的な地位を誇り、近年はその立地環境を重視する造園思想に注目が集まる『園冶』の内容を、中国造園の第一人者で、計成が造園した「影園」等、歴史的庭園の復元設計の経験が豊富な呉肇釗氏が『園冶』の章立てに即して丁寧に解説する。
【特色2】これまでの園冶解説書と一線を画すアプローチ
明の文人特有の筆致で詩文のように綴られた『園冶』。本書は、現存する庭園の実景を描いたスケッチや平面図を付すことで可視化を試み、さらに「園説」「借景」では山水画を用いて一句一句読み解く。解説のために収載した挿図は1000点超。
【特色3】中国古典庭園の教科書に最適
『園冶』原書も後半の建築・庭園の装飾の解説では夥しい数の挿図がある。本書はこの挿図を現代の図面として示すとともに、前半の造園論を実在する庭園の挙例によって可視化することで『園冶』の分かりにくさを解消。理論書と実践ガイドを兼ね備えた中国古典庭園の教科書という地位が鮮明に。
【特色4】中国古代庭園常用スケッチ219点を収載
自らの庭園の絵を描くことで「詩情画意」の真髄が体得できると考えた著者は、中国古典庭園を学ぶ者には国の内外を問わず大いに伝統庭園のスケッチを描いてもらいたいとの願いから、世界各地に造園した自作の中国古典庭園のスケッチを練習画の参考に供している。
目次
本書について
刊行に寄せて (1)
刊行に寄せて (2)
前書き(一)
前書き(二)
『園冶』冶叙—阮大鋮
『園冶』題詞—鄭元勲
『園冶』自序—計成
興造論
園 説
一、相 地
(一)山林地
(二)城市地
(三)村荘地
(四)郊野地
(五)傍宅地
(六)江湖地
二、立 基
(一)庁堂基
(二)楼閣基
(三)門楼基
(四)書房基
(五)亭榭基
(六)廊房基
(七)仮山基
三、屋 宇
(一)門 楼
(二)堂
(三)斎
(四)室
(五)房
(六)館
(七)楼
(八)台
(九)閣
(十)亭
(十一)榭
(十二)軒
(十三)巻
(十四)広
(十五)廊
(十六)五架梁
(十七)七架梁
(十八)九架梁
(十九)草 架
(二十)重 椽
(二十一)磨 角
(二十二)地 図
四、装 折
(一)屏 門
(二)仰 塵
(三)戸 槅
(四)風 窓
五、欄 杆
欄杆図式
六、門・窓
門・窓図式
七、墻垣
(一)白粉墻
(二)磨磚墻
(三)漏磚墻
(四)乱石墻
八、鋪 地
(一)乱石路
(二)鵞子路
(三)氷裂路
(四)諸磚地
磚鋪地図式
九、掇 山
(一)園 山
(二)庁 山
(三)楼 山
(四)閣 山
(五)書房山
(六)池 山
(七)内室山
(八)峭壁山
(九)山石池
(十)金魚缸
(十一)峰
(十二)巒
(十三)岩
(十四)洞
(十五)澗
(十六)曲 水
(十七)瀑 布
十、選 石
十一、借 景
『園冶』自識—計成
付 録
中国古代庭園常用スケ
ッチ集
参考文献
後 記
謝 辞
翻訳参考文献
『園冶』原文の校勘
中国庭園・建築用語解説
日本語版監修者のことば
日本語版監訳者あとがき
刊行のことば 中国造園家による『園冶』の図解
本書は原題『園冶図釈』の日本語版である。『園冶』は、明代の造園家・計成が明・崇禎七年(一六三四)に著した三巻からなる造園論で、日本には江戸時代に持ち込まれ明版と呼ばれる版本が残る(旧紅葉山文庫本、国立公文書館蔵)さらに『奪天工』という別名で、寛政七年(一七九五)の写本が残されているほか、『木経全書』という名でも流通したことが知られている。造園学の専門家の間では「借景」について言及した書物として有名で、これまでにも日本人研究者による解説書が複数刊行されているが、本書『園冶図釈』のように本文中に図を付して説明したものは無かった。
著者の呉肇釗氏(一九四四〜二〇二一)は、長年にわたり、中国古典園林史の思想と技術に基づいて造園実践をおこなってきた造園家で、計成が揚州に造った庭園「影園」をはじめ、数々の中国古典庭園の復元設計を指導されている。本書では、『園冶』の内容を計成の実践の総括であると位置づけた著者が、『園冶』本文の内容を読者にわかりやすく伝えるため、現存する江南地方の庭園を参考に絵を描き、解説の付図として示された。そのため、読者は実例に基づくイメージを通じて『園冶』の内容をより具体的に理解することができる。
『園冶』は、造園理論の専著でありながら、理想的な庭園景観を詩文のように綴る。これまでの日本語での『園冶』の解説書では、技術書であるという側面が強調されてきたために、詩文のように書かれた部分を美辞麗句とし排除する傾向にあった。しかし今回、漢詩文に明るい宮下和大氏の協力を得、中国文化に係わる翻訳に通じた岩谷季久子氏、中国建築史研究者の李暉氏と共に原文を検討する中で、まさにその美辞麗句にあらわれた「詩情画意」の思想こそ、著者の呉氏も強調する中国造園の特質であり、『園冶』を解説する際に不可欠なものであるという思いに至った。そこで本訳書の『園冶』原文は、古典としての文体を残した書き下し文として示すこととした。また、造園や建築の専門用語や、固有の人物や名称については、通読の妨げにならない程度に訳注として付すこととした。
本書が中国庭園の理解への手助けとなり、また現代の造園設計の参考となれば幸いである。 (文責・高橋知奈津)