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『旅』附 全国汽車汽船発着表 全6巻

『旅』附 全国汽車汽船発着表 全6巻
 

[監修・解題] 前坊 洋

揃定価140,800円(揃本体128,000円) 
ISBN 978-4-8433-4618-1 C3326
B5判/上製/カバー装
刊行年月 2014年10月

関連情報

本書の内容

明治の人々の旅行がいきいきと伝わる幻の旅行雑誌、全15号を復刻。

どうぞ『旅』を     前坊 洋

 旅好きのみなさまに『旅』の復刻版をおとどけいたします。二十世紀の初めに東京で刊行された、この旅の雑誌全十五号を座右に置いていただいて、手軽に御覧いただけることとなりました。  
 といっても、『旅』が現代の読書界においてすでにポピュラーな雑誌となっているとは到底おもわれません。なにしろ日清、日露の戦間期に一瞬の光芒をのこして、サヨナラもいわずに消えてしまったのですから。同時代に創刊された『能楽』や『馬酔木』のようには関心を惹かなかったのも無理のない話です。  
 しかし、『旅』はおもしろいですよ。ちょうど「活動の都会、憩いの田舎」というイメージが定着してきたところに、鉄道網が張りめぐらされて、『旅』第一号の表紙はSLと自転車という移動手段によってかざられています。名犬も疾走していますけれど、これはたぶんスピード感を強調しているのでしょう。薩摩の芋掘役人ばかりか娼妓も書生も田舎出ですから、それは郷里がなつかしい。ミヤコとフルサトがセットになって、『旅』の需要を喚起します。  
 現実には出郷できない人、望郷のみにとどまる人にとっても、『旅』はカタルシスとなるでしょう。第八号の表紙のお嬢ちゃんの髪をかざるリボンは、当時の都会の最新流行です。同様に、食い詰めたけれど海外雄飛とまでは決心の附き兼ねる人、立身の階段を上っているけれど洋行できるほどのエリートではない人にとって、第十一号の表紙の波止場の風景はきっと涙の出るほどのものだったことでしょう。
 こうして、現代の旅好きのみなさまにとっても、『旅』はお役立ち情報満載の旅の雑誌です。ちょうど時刻表も付録になっていることですから、乗り鉄や撮り鉄と一諸になって、『旅』鉄に耽溺してみられてはいかがでしょう。百年以上昔の第一村人発見という幸運が待っているかもしれません。 (まえのぼう・よう )

●雑誌『旅』とは●

『旅』は明治35(1902)年12月から明治37(1904)年2月まで、全15号にわたって報知社より発行された雑誌。旅行がブームとなり始めたこの時期は、「旅行」がどうあるべきか模索されていた。そのなかにあって、『旅』は旅行に関する歴史や知識、小説、評論のほか、旅行体験談やマナーなどのあらゆる情報を掲載した「旅行事典」ともいえる雑誌だった。明治30年代に発行された幻の旅行雑誌に表れる「旅行」を通して、旅行が近代化していく様相を捉えることができるだろう。第15号発行から8日後、日本はロシアに宣戦布告を行い日露戦争が始まった。その後『旅』は継続して発行されることはなかった。

【収録記事から】 ★第1号:旅行の心得書 昔と今/旅行の準備/恐い東京/ ほか ★第2号:日本国中名物博覧会/小説 女の旅/世界一周切符 ほか ★第3号:東京掏児人名簿/沖縄学生雪見/山陽鉄道と観梅 ほか ★第4号:汽車落語/洋行船客/諸国温泉番附 ほか ★第5号:内外旅行家/東武鉄道無銭旅行/汽車旅行御注意御用心 ほか ★第6号:久松伯爵夫人仏蘭西旅行/家庭と旅行/旅費工面 ほか ★第7号:旅中笑話/掏児画報/安楽旅行寝台汽車 ほか ★第8号:汽車遊び/旅行用の臥床と吊床/東京新繁昌記 ほか ★第9号:婦人と旅行/狂歌旅百首/旅行読本 ほか ★第10号:旅費才覚/旅の掟/九州鉄道旅行 ほか ★第11号:汽車と衛生/秋の旅行世界/旅の注意 ほか ★第12号:航海百物語/旅人七癖/鹿児島鉄道の名所案内 ほか ★第13号:眠むる方法/旅費の製造/汽車と金儲/新婚旅行 ほか ★第14号:令嬢と旅行/交通と商業(三井呉服店理事高橋義雄氏談)/小説 旅行好き ほか ★第15号:汽車乗客あら探し/新橋より浜松迄車窓のパノラマ/戦争と温泉 ほか

【本書の特色】

●日本における旅行専門雑誌の嚆矢として発行された幻の雑誌全15号を復刻。
●女性の旅行推奨、旅行の注意、旅行の利便性研究、国内旅行批評、旅中の娯楽など、旅行が近代化していく様子がうかがえる多種多様な記事を数多く掲載。当時の旅行の実態がよく分かる。
●全号に極めて興味深い「全国汽車(汽船)発着表」、「遺失物月報」等を収録。

小社刊行『シリーズ 明治・大正の旅行』第Ⅰ期は近代における旅行のあゆみを「旅行案内書」の変遷からたどるものです。近代社会の中であらたにうみだされた旅行とはどのようなものであったか、また旅行が社会の中にいかにして浸透しブームとなっていたのか、うかがい知ることのできる構成となっています。同シリーズでは収録しきれなかった「旅行雑誌」を今回復刻することとなりました。「旅行」という視点から近代日本を捉えた2つの資料を活用していただければ幸いです。

●特におすすめしたい方● 観光学、地理学、人文地理学、社会史、文化史、交通史、日本近代史、近代文学、メディア史、ジャーナリズム論、社会学の研究者、関係機関、大学図書館、公共図書館など。

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第1巻 第1号 明治35(1902)年12月

刊行年月 2014年10月 定価7,700円 (本体7,000円) ISBN978-4-8433-4619-8

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第2巻 第2号~第4号 明治36(1903)年1月〜3月

刊行年月 2014年10月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-4620-4

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第3巻 第5号~第7号 明治36(1903)年4月〜6月

刊行年月 2014年10月 定価25,300円 (本体23,000円) ISBN978-4-8433-4621-1

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第4巻 第8号~第10号 明治36(1903)年7月〜9月

刊行年月 2014年10月 定価30,800円 (本体28,000円) ISBN978-4-8433-4622-8

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第5巻 第11号~第13号 明治36(1903)年10月〜12月

刊行年月 2014年10月 定価30,800円 (本体28,000円) ISBN978-4-8433-4623-5

『旅』附 全国汽車汽船発着表 第6巻 第14号~第15号 明治37(1904)年1月〜2月

刊行年月 2014年10月 定価22,000円 (本体20,000円) ISBN978-4-8433-4624-2