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史料集 公と私の構造 全5巻・別巻1

史料集 公と私の構造 全5巻・別巻1
―日本における公共を考えるために―

[監修] 小路田泰直

定価88,550円(本体80,500円) 
ISBN 978-4-8433-0908-7 C3330
刊行年月 2003年04月 ※在庫僅少

本書の内容

人は本来、公共的な存在なのか。私利私欲的な存在なのか。この国の公を官の支配から解き放つために。

※第1巻 お品切れです。

「史料集 公と私の構造」刊行の辞   小路田泰直
 人を本来公共的な存在とみたり、公共的であるべき存在とみたりする人々にとって公と私の融合はさほど不思議なことではない。私もまた公だからである。しかし人は本質的に利己的で私利私欲を逞しくする存在だとみる人々にとって、公と私の融合はそれほど簡単なことではない。それが融合しているとすれば、それは本来水と油のような関係にあるものが融合していることになるからである。
 はたしてどちらが正しいのか。ここでの仮説は後者が正しいということになる。なぜならば近代の起点には、人の欲望に対する強烈な諦めが存在しているからである。人の欲望は抑えがたい。ならば抑えて人の反発をかうよりも、認めて人の歓心をかう方がましだという考え方がある。
 たとえば福沢諭吉は『民情一新』という論考において、人の社会は「理」によってではなく「情」によって動く、したがって「千八百年代に発明工夫したる蒸気船車、電信、印刷、郵便」の働きによって人の欲望が増大すれば、もうそれは手のつけようのないものとなるといっている。この諦めが、人々の奢侈に対する国家理性の介入を無意味なものとして排除したとき、近代の自由は生まれたのである。だからそれは利己主義に満ちたものと考えるのが自然なのである。
 ではそう考えて見えてくるものは何か。公と私の予定不調和である。したがってその調和を維持していくためには、何らかの制度の力、あるいは媒介が必要だということになる。
 そしてその公と私の無理矢理な調和のさせ方が民主主義なのである。したがって民主主義にはその公と私をつなぐ法や制度、あるいは共同体意識の創造が必要になる。
 そこで近代日本において、それらの法や制度、共同体意識の産出に深く関わった人々や、行為をとりあげ、史料集に編んだのが本書である。その制度・媒介には肯定的に受け止められるものも、受け止められないものもある。帝国主義も暴力も、ある意味でその制度・媒介である。しかし直視することが大事である。まず、法や制度の創り手として美濃部達吉と後藤新平をとりあげ、共同体意識の産出に深く関わる行為として、1912年の日本大博覧会の計画、1900年のパリ万国博覧会への『稿本日本帝国美術略史』の出品という事業をとりあげた。
 今、第二の戦後(冷戦後)が始まる中で、急速に第一の戦後(第二次大戦後)につくられた体制の見直しが進み、憲法や教育基本法の改正さえ公然と語られるようになってきている。そうした中で、我々は今この国の主権者として、一人一人が公とは何か、私とは何かを真剣に考えなくてはならない時代に入っている。
 そのための一助になればと思って本史料集を世に送る。

史料集 公と私の構造 第1巻 美濃部憲法学と政治・1 『憲法講話』(美濃部達吉著・1912年)

刊行年月 2003年04月 定価9,350円 (本体8,500円) ISBN978-4-8433-0902-5
※品切れ

[解説]頴原善徳

1911年夏、文部省主催の中東教員講習会で行った憲法に関する講話を纏めたもの。全十講からなり、教育実務者に語りかける形で、美濃部の明治憲法解釈が詳細に説かれる。特に、天皇機関説については周到に論じられ、美濃部憲法学の真髄を伝える書。                             

史料集 公と私の構造 第2巻 美濃部憲法学と政治・2 『現代憲政評論』(美濃部達吉著・1930年)

刊行年月 2003年04月 定価9,350円 (本体8,500円) ISBN978-4-8433-0903-2
※在庫僅少

[解説]小関素明

大正末から昭和初期にかけて、主として著者がジャーナリズムに発表した政治的時事問題に関する文章を集めたもの。当時の憲法解釈の第一人者である著者が政治の現実にいかなる論評を加えたかを知ることができる貴重書。

史料集 公と私の構造 第3巻 美濃部憲法学と政治・3 『議会政治の検討』(美濃部達吉著・1934年)

刊行年月 2003年04月 定価9,350円 (本体8,500円) ISBN978-4-8433-0904-9
※在庫僅少

[解説]小関素明

『現代憲政評論』刊行以後、1934年3月までの政治評論を集めたもの。美濃部が天皇機関説事件の奇禍に遭う前年に出版されたものであり、満州事変、五・一五事件と、軍の台頭著しい中で編まれる。瀕死の政党政治への憂慮が語られ、ロンドン海軍軍縮条約から滝川事件までのトピックスを扱う。

史料集 公と私の構造 第4巻 後藤新平と帝国と自治 『国家衛生原理』(後藤新平著・1889年・初版)、『東京市政論』(チャールズ・エー・ビ―アド著・東京市政調査会編・1923年・初版)、『日本膨脹論』(後藤新平著・1924年・再版本を底本にした新組版) 、『政治の倫理化』(後藤新平著・1926年・初版)

刊行年月 2003年04月 定価9,350円 (本体8,500円) ISBN978-4-8433-0905-6
※在庫僅少

[解説]尾崎耕司

衛生行政、植民地行政に辣腕を振るい、初代満鉄総裁等を経て、東京市長として意欲的な都市計画を推進し、東京市政調査会も設立、関東大震災後、内相として東京復興計画も指揮した後藤新平の著作及び編集書。

史料集 公と私の構造 第5巻 日本大博覧会と明治神宮 1.日本大博覧会関係史料 『日本大博覧会経営ノ方針』(金子堅太郎著・1908年・東京商工会議所経済資料センター所蔵)、「日本大博覧会 第二」(抄録・東京都公文書館所蔵ほか) 2.明治神宮関係史料「明治神宮ニ関スル書類」(抄録・東京都公文書館所蔵)、「明治神宮奉賛会」(『渋沢栄一伝記資料』第41巻所収) 3.参考 大博覧会関係新聞史料(『時事新報』『東京朝日新聞』『東京日日新聞』三紙より大博覧会関係の社説・記事を収集し新たに組み直した。)

刊行年月 2003年04月 定価9,350円 (本体8,500円) ISBN978-4-8433-0906-3
※在庫僅少

[解説]布川 宏

1912年開催を目指し、万国博覧会に準じた規模で構想された「幻の大博覧会」。1907年、日露戦後の国家上昇気運に乗り政府主催で着手されるも、財政難のため一旦は延期、後に中止となる。同大博覧会会長の金子堅太郎は、この博覧会を日本で開催する意義、国際社会における万国博覧会の重要性をさまざまな観点から述べている。ここでは中止後博覧会予定地が明治神宮となっていく過程までを含めて、史料でたどり、公の表象としての共同体意識産出過程を考える。

史料集 公と私の構造 別巻 ナショナリズムと美 『稿本日本帝国美術略史』(農商務省刊・1901年)

刊行年月 2003年04月 定価41,800円 (本体38,000円) ISBN978-4-8433-0907-0
※在庫僅少

[解説]小路田泰直

1900年パリ万国博覧会にあわせて帝室博物館が編纂し、フランス語版・日本語版で出版。日本美術史叙述の先駆を成すものであり、帝室博物館が総力を挙げて「日本美術」を内外にアピールする目的から編まれる。コロタイプ図版322点、多色木版5点と図版が豊富に入れられ、「日本美」の立体的追体験ができる内容。