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本書の内容

（電子書籍＝同時1アクセス：本体予価631,400円＋税╱同時3アクセス：本体予1,262,800円＋税）
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国共内戦から朝鮮戦争に至る中国大陸・朝鮮半島の動向を分析した外務省の報告書。占領期における日本の対中国・朝鮮認識を示す重要資料。

刊行にあたって　　　　　大澤武司

　1945年10月25日、連合国軍最高司令官総司令部（ＧＨＱ）の指令により、第二次世界大戦に敗れた日本の外交権は停止された。それまで外交を主管してきた外務省は、その機能の大部分をＧＨＱの占領管理に関する事務に向けることとなり、日本の対外関係は中立国との接触も含めてＧＨＱによって管理・統制されることとなった。
　とはいえ、活動が制限されるなかでも外務省は、東西冷戦が深化する戦後の国際情勢にもちろん無関心ではなかった。新たな戦後国際秩序の混沌を前にして、日本の外務当局はその果たすべき任務を着実に遂行していた。すなわち、将来の日本独立を見据え、アメリカの対中政策はもとより、中国の国内情勢や国共内戦の動向、さらには米ソが強く関与する朝鮮半島の南北対立の趨勢など、主に外電を通じて獲得した現地の公然情報をはじめとする膨大な情報を丹念に収集・分析することで来るべき時代の東アジアの政治・外交情勢を見出そうとする努力を続けていたのである。
　本資料『外務省戦後中国・朝鮮動向資料』は、外務省外交史料館に所蔵される、連合国軍占領下で外務省の関係部門が行った中国および朝鮮に関する情報の調査・収集、分析ならびに考察の成果をまとめた報告書を時系列かつ体系的に収録したものである。中国関係では、1946年１月発行の「中華民国関係旬報」にはじまり、「中華民国政情旬報」「中国旬報」「中国半月報」「東亜月報」「中国月報」など、1951年末に至るまで定期的に発行された報告書が含まれる。また、朝鮮関係では、朝鮮半島の分断が間近となった1948年４月発行の「朝鮮旬報」から「朝鮮半月報」「朝鮮週報」、さらには断続的に発行された「朝鮮論評」も含め、1952年１月発行の「中国・朝鮮月報」に統合されるまで発行が続けられた。
　本資料の最大の特徴は、敗戦国となった日本の外務省が、東アジア国際情勢のいかなる情報に強い関心を有していたのか、という点がきわめて明確に読み取れる点にある。特に国共内戦の趨勢を見極めるため、各種の外電を通じて網羅的かつ体系的に収集された現地情報は、米中関係や中国内政、経済関係、さらには軍事関係にまで及んだ。そして、これらを基礎として今後の展開を検討・予測するなど、外交の基礎となる情報の調査・収集、分析ならびに考察が、占領下においても脈々と続けられていたことが確認でき、まさに戦後日本外交の胎動のありようを理解することが可能となっている。
　すなわち、本資料を構成する数々の報告書は、「外交」を支える情報収集に関する外務省の強いこだわりを強く印象づける資料群であるといえる。そして、読み手が自らの研究関心に基づきこれらを読み解くとき、いわゆる日本外交の戦前と戦後における連続性と非連続性をはじめ、さまざまな問題を考えるうえで数多くの示唆を得ることが期待できると考える。
（福岡大学人文学部教授）

本書の特色

●中国・朝鮮半島の情勢に関し、外務省内で発行された「中国半月報」、「朝鮮半月報」などの資料（1946年～1952年）を影印形式で復刻。
●中国の国共内戦から共産革命、朝鮮半島における南北政権の対立から朝鮮戦争の展開に関し、詳細な情報、分析を掲載。
●東アジアの国際関係が流動的であった時期について、政治・経済・軍事の状況が容易に把握可能。
●占領下における外務省の、中国・朝鮮半島に対する情報収集・分析能力を推測する手がかりとなる。
●最終巻に総目次と解説を掲載する。