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南方共栄圏の財政と金融【new!】
定価16,500円(本体15,000円)
ISBN 978-4-8433-7152-7 C3033
A5判/並製/カバー装
刊行年月 2025年11月(予定)
電子書籍 あり
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本書の内容
アジア太平洋戦争期、日本が「南方共栄圏」で展開した金融政策の核心とは何か。各地域における財政論と金融論の分析を通じて、経済的支配の実態を解明する、著者積年にわたる研究の集大成。
(電子書籍=同時1アクセス:本体16,500円+税╱同時3アクセス:本体33,000円+税) ★電子書籍版はKinoDen/Maruzen eBook Libraryのサービスでご購入になれます。
プリント版 2025年11月刊行予定
電子書籍版 2025年12月刊行予定
日本がアジア太平洋戦争の展開に伴い占領した南方は、北はベトナムから南はティモール島まで、西はミャンマーから東はソロモン諸島にまで及ぶ広大な地域であった。本書は、これらの地域を「南方共栄圏」と定義し、日本軍当局が実施した財政金融政策の実態を明らかにするのが目的である。
一言で「南方共栄圏」と言っても、旧宗主国の制度や流通していた通貨、輸出入品目、及び日本軍当局による軍政の実施・非実施等、政治・経済の状況は一様ではなく、そのため、軍当局もその地域毎の財政金融政策を策定した。こうした経緯を踏まえ、本書では、仏領インドシナ、マラヤ・スマトラ、北部ボルネオ、ジャワ、フィリピン、海軍軍政地、タイなど、地域毎の財政金融政策の特徴の記述に力を入れた。
無論、日本占領期の同地域に関する先行研究は多数存在する。しかし、地域間の差異の過小評価や、統計資料の分析の不十分なことなどから、その解明には至っていない。
本書では、先行研究の残した課題に対して、横浜正金銀行資料、大蔵省資料、外務省資料、防衛省資料を中心として、精緻な分析を加えるとともに、財政論と金融論の両面からのアプローチを試みる。財政論では、臨時軍事費会計の財政制度史分析と軍政財政予算編成の軍政地域比較を行う。これにより、臨時軍事費会計の支出負担範囲及び軍政財政予算編成から見た軍事財政の特質を解明する。
金融論では、占領地と乙地域(軍政を敷かず、独立政府を存続させた地域)とで金融制度地域比較史的分析を行う。占領地においては、軍票の流通により新たな金融制度が構築され、さらに1943年4月南発券への制度転換で、資金供給体制が激変するが、その段差を踏まえた制度確立を分析する。乙地域ではインドシナ銀行やタイ銀行等における活動の事例を通じて、特別円決済に統合するプロセスを明らかにする。
こうした方法論から、本書では南方共栄圏の財政と金融の既存研究を超え、臨時軍事費会計制度及び軍政予算と、金融制度・政策の分析を深化させ、全地域における視野を広げることが本書の目標である。
目次
序 章 南方共栄圏の財政と金融研究の課題と方法
第1節 本書の課題 第2節 分析視角 第3節 先行研究の概要
第4節 本書の概要
第1章 仏領インドシナ軍事展開に伴う財政金融措置
第1節 軍進展開の財政金融状況 第2節 日本軍進駐後の軍票発行
第3節 ピアストルの調達
第2章 南方共栄圏の軍事財政
第1節 占領地における外貨軍票の発行
第2節 臨時軍事費特別会計の南方関係支出と買取貿易
第3節 南方占領地軍政財政方針 第4節 マラヤ・スマトラの軍政財政
第5節 北部ボルネオの軍政財政 第6節 ジャワにおける軍政財政
第7節 フィリピンにおける軍政財政 第8節 ビルマにおける軍政財政
第9節 海軍占領地における軍政財政 第10節 仏印における軍事支出
第11節 タイにおける軍事支出
第3章 南方共栄圏金融体制の構築
第1節 占領初期通貨金融政策の概要 第2節 南方開発金庫の設立
第3節 マラヤ・スマトラの金融体制の構築
第4節 北部ボルネオの金融体制の構築
第5節 ジャワの金融体制の構築 第6節 フィリピン金融体制の構築
第7節 ビルマ金融体制の構築 第8節 海軍軍政地域金融体制の構築
第9節 仏領インドシナの域内金融 第10節 タイの内国金融
第4章 南方共栄圏金融体制の拡大と解体
第1節 占領地における外貨軍票の発行
第2節 臨時軍事費特別会計の南方関係支出と買取貿易
第3節 南方占領地軍政財政方針 第4節 マラヤ・スマトラの軍政財政
第5節 北部ボルネオの軍政財政 第6節 ジャワにおける軍政財政
第7節 フィリピンにおける軍政財政 第8節 ビルマにおける軍政財政
第9節 海軍占領地における軍政財政 第10節 仏印における軍事支出
第11節 タイにおける軍事支出
第5章 南方共栄圏為替決済体制
第1節 南方共栄圏における為替相場
第2節 仏領インドシナ進駐後の軍事費以外の為替取引
第3節 タイの対日バーツ決済と特別円 第4節 占領地為替管理体制
第5節 南方為替持高集中 第6節 華僑送金対策
終 章 南方共栄圏の財政と金融の解体と結語
第1節 南方共栄圏財政と金融の解体 第2節 本書の総括と結語
参照文献一覧╱地図
柴田善雅(しばた・よしまさ)
1949年新潟市生まれ。1973年早稲田大学政治経済学部卒業。1975年早稲田大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。1983年大蔵省入省。同年一橋大学大学院経済学研究科経済史及び経済政策専攻博士課程単位取得退学。1995年大東文化大学国際関係学部教授。2020年同大学名誉教授。2005年、博士(学術)(早稲田大学)。
