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日清戦争・「三国干渉」と帝国主義「中国分割」【new!】

日清戦争・「三国干渉」と帝国主義「中国分割」【new!】
―東アジア現代の国際関係構造の起点

[著] 佐藤公彦 東京外国語大学名誉教授

定価7,700円(本体7,000円) 
ISBN 978-4-8433-6995-1 C3321
A5判/上製/カバー装
刊行年月 2025年07月(予定)

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本書の内容

帝国主義列強による中国分割は、日本が始め、日本が終わらせた。利害の錯綜した日本・中国・欧米諸国との交渉を読み解き、国民史としての日清・日露戦争を、新たな東アジア国際関係史の中に位置づける試み。

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 「帝国主義中国分割」はいつ始まり、いつ終わったか。日本の歴史教科書では、国民史に基づき、日清戦争から義和団事変までとしている。しかし、筆者の結論から述べれば、日清戦争に始まり、日露戦争で終わったのである。国民史としては輝かしく映る日清・日露戦争間の歴史を西洋列強が関与した近代東アジア国際関係史として見ると、また違った意味を見出せよう。
 日清戦争後、日本による「遼東半島割譲」要求は中国分割の始まりであり、ロシア、フランス、ドイツの「三国干渉」により、これは阻止された。この後、ロシアは鉄道敷設権、フランスは借款条約を獲得した。しかし、こうした利益に与れなかったドイツが膠州湾を占領したのを機に、列強各国は新たな鉄道敷設や借款条約の締結、租借地の設定等、利権争奪戦を展開した。これに対して、清朝では改革派による戊戌変法運動、大衆運動として義和団蜂起が発生したが、前者は挫折し、後者は八国連合軍に鎮圧される結果となり、最終的に「北京議定書」で処理された。
 この時ロシアは東清鉄道の保護を名目として満洲を占領したため、清朝とロシアとの「満洲返還交渉」は難航した。満洲の占領と韓国への介入に対する反発して起こったのが日露戦争である。日露の対立はポーツマス条約で決着し、その後、「満洲に関する日清条約」と「日韓協約」によって、満洲と韓国に関する問題は整理された。これにより、東アジアにおける支配権確定競争は終結し、その後アメリカの「門戸開放」「機会均等」原則により、列国の競争は資本投下による経済的影響力の拡張を目標とする、新たな時代に入ったのである。
 こうした中国近代史の「起点」である中国分割は、列強によっていかに目論まれ、推進され、落着したかを考察することが、本書の中心課題である。

目次

序 章 東アジア現代の国際関係構造はどのようにして形作られたか
第一章 日清戦争と三国干渉・遼東半島のゆくえ ―東アジア分割競争の開始
 第一節 日清戦争の基本問題―朝鮮問題とは何だったのか
 第二節 日清開戦とイギリス・ロシア ―一八八六年の露清天津協定、清軍出兵の経緯、李鴻章の「以夷制夷」外交
 第三節 西洋列国の対清国外交とその外交官
     ―アフリカ分割と中国分割の相関
     ―ドイツの膠州湾占領・イタリアの三門湾要求を事例として―
第二章 三国干渉とその「報酬」―遼東半島の返還、露仏・英独の貸付競争、「露清密約」と東清鉄道契約、蘆漢鉄道借款契約、膠州湾占領―
 第一節 三国干渉と遼東半島の返還
 第二節 対日賠償金の貸付競争 ―露仏借款と英独借款
 第三節 露仏同盟の利権獲得 ―フランスの清越国境での利権獲得、ロシアの「露清密約」と東清鉄道契約獲得
 第四節 蘆漢鉄道借款契約(一)―ベルギー借款
 第五節 ドイツとイギリスの反攻 ―ドイツの「報酬」要求と英独借款
 第六節 第三次借款をめぐる英露対立(一)と西南部での英仏対立
 第七節 ドイツの膠州湾占領 ―「中国分割」狂潮の開始
第三章 膠州湾租借とロシアの旅順大連占領への総理衙門外交
    ―『翁同龢日記』『張蔭桓日記』の半年―
 第一節 膠州湾租借要求の交渉と列国の介入
 第二節 第三次借款をめぐる英露対立(二)と英独第二次借款
 第三節 ロシアの旅順口・大連湾租借とそれに続く、フランスの広州湾、イギリスの威海衛・九龍半島の租借要求、日本の福建不割譲要求
 第四節 戊戌変法と政変
第四章 中国鉄道をめぐる列国の国際競争
 第一節 鉄道建設権をめぐる列国競争―蘆漢鉄道(二)、津鎮鉄道、粤漢鉄道、京奉鉄道の英露対立と協定
 第二節 アメリカの「門戸開放」政策
 第三節 フランスの広州湾占領と「団練」の抵抗
第五章 義和団事変と北京議定書
 第一節 戊戌政変後の義和拳・大刀会の排外蜂起
 第二節 北京の五十五日―義和団事変・八国連合軍の北京占領
 第三節 ロシア軍の満洲占領問題と連合講和会議・「北京議定書」
第六章 東三省(満洲)返還交渉
 第一節 ペテルブルクにおける楊儒とウィッテ、ラムズドルフとの交渉
 第二節 楊儒の条約調印拒否、北京での李鴻章との交渉再開と不成立
 第三節 日英同盟の成立と満洲返還条約の調印―ロシアの政策転換、対清七箇条要求、不撤兵
 第四節 日露交渉と日露戦争、ポーツマス講和とその影響
 第五節 帝国主義「中国分割」(東アジア分割)期の歴史的位置
 第六節 西洋列国の資本投下への転換と利権回収運動、国際銀行団の結成
結 章 ―結論

佐藤公彦(さとう・きみひこ) 
一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。東京外国語大学名誉教授。著書に『義和団の起源とその運動 中国民衆ナショナリズムの誕生』(研文出版、1999年)、『清末のキリスト教と国際関係』(汲古書院、2010年)、『陳独秀その思想と生涯 1879-1942 胡適序言・陳独秀遺著『陳独秀の最後の見解(論文と書信)』を読む』(集広舎、2019年)、『駐米大使胡適の「真珠湾への道」 その抗日戦争と対米外交』(御茶の水書房、2022年)などがある。