中国庭園図解辞典
定価16,500円(本体15,000円)
ISBN 978-4-8433-6704-9 C1070
B5判/上製/カバー装/オールカラー/300頁
刊行年月 2024年08月
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本書の内容
日本庭園をより深く理解し、 中国庭園を基礎から 学ぶことのできる辞典。
発行:科学出版社東京/発売:ゆまに書房
設計理念、造営手法、歴史、地域性、建築、置物、装飾、各地の実例……。
中国庭園の全てを満載した画期的辞典。
目次
●第一章 庭園設計
造景/点景/綴景/障景/借景/遠借/近借/実借/虚借/仰借 ほか
●第二章 庭園の類別
皇室庭園/私邸庭園/風景庭園/寺院庭園/秦代庭園/漢代庭園/南北朝庭園/隋唐庭園/宋代庭園/明清庭園 ほか
●第三章 庭園建築
庁堂軒館/扁作庁/円堂/鴛鴦庁/四面庁/花庁/門庁/轎庁/荷花庁 ほか
●第四章 庭園小品
盆景/盆景石/樹盆景/樹石盆景/草石盆景/松石盆景/海参石/諸葛拝斗石/木変石/石卓 ほか
●第五章 庭園鋪地
鋪地材料/鵞卵石鋪地/幾何紋鋪地/氷裂紋鋪地/盤長紋鋪地/五福捧寿鋪地/葉紋鋪地/鹿紋鋪地/金魚紋鋪地 ほか
●第六章 外部造作
洞門/月亮門/瓶形門/海棠門/漏窓/空窓/什錦窓/琉璃欄杆/美人靠 ほか
●第七章 内部造作
花罩/飛罩/天彎罩/落地明罩/屏風/折屏/画屏/曲屏/紗隔/博古架 ほか
●第八章 家具
八仙卓/円卓/半円卓/琴卓/折畳卓/太師椅/玫瑰椅/方凳/開光墩 ほか
●第九章 彩色画
和璽彩画/旋子彩画/金線大点金/墨線大点金/墨線小点金/石碾玉/金琢墨石碾玉/蘇式彩画/金琢墨蘇画/海墁蘇画
●第十章 天井・藻井装飾
平棋/平闇/井口天花/花草平棋/団龍平棋/円形藻井/八角藻井/盤龍藻井/晋祠難老泉亭藻井 ほか
●第十一章 扁額・対聯・陳列品
横扁/竪扁/華帯牌/此君聯/蕉葉聯/古琴聯/書/画/琺瑯/掛屏 ほか
●第十二章 庭園彫刻・牌坊
石彫欄杆/石刻書画/塼彫牌坊式門楼/
塼彫漏窓/塼彫扁額/木彫罩/頤和園雲輝玉宇坊/頤和園知魚橋坊/虎丘坊
●第十三章 庭園の実例
環秀山荘/拙政園/留園/芸圃/獅子林/怡園/滄浪亭/耦園/寄暢園 ほか
『中国庭園図解辞典』日本語版の刊行にあたって —庭園散策の道しるべ 向井 佑介
中国庭園には不思議な魅力がある。庭園内に足を踏み入れると、石を積み重ねた山があり、奇妙な形の太湖石や樹木があちこちに置かれ、池に臨んで建てられた亭からそれを観賞する。曲がりくねった小道の路面には、綺麗な石とタイルを組み合わせたさまざまな紋様があらわされ、その上をゆったりと散策する。漢詩に詠まれ、水墨画に描かれた情景が、そこにある。このように、現在の私たちが思い浮かべる中国の古典庭園は、文人の精神——「詩情画意」を体現したもので、日本庭園とは異なった情趣がある。庭園ごとにそれぞれ個性があり、また地域と時代ごとに流行形式が異なるとはいえ、その設計には一定の約束事がある。本書は、こうした中国庭園の設計理念・造営手法から、その歴史と地域性、園内の建築・置物・装飾、そして各地の庭園の実例にいたるまで、あらゆる事柄を解説する辞典である。
著者の王其鈞氏は、北京の中央美術学院において教授を務める建築学者である。その著作は、中国の古建築・庭園のみならず、現代建築、さらには西洋建築にまで及んでいる。画家としても著名で、その作品は油彩画を中心として、水彩画・水墨画など多岐にわたり、とりわけ建築を描いた絵画は高い評価を得ている。その学術研究と芸術創作の活動は相互に関係し、本書を含めた王其鈞氏の著作には、彼自身が描いた多くの挿絵が掲載されている。この辞典には750以上もの項目が収録され、そのほぼすべてに手描きの挿絵や写真が添えられている。一般的に、辞典の見出し語の配列には、アルファベット順や五十音順、漢字の筆画順などが用いられるのに対し、この辞典はそうではない。内容ごとに章をわけて各項目を解説していくという手法をとる。その章立てもよく工夫されており、感覚的に目次をたどっていけば、自然と必要な情報にたどり着くことができる。辞書として知りたい項目を検索するだけでなく、一冊の書籍として頭から順に読んでいくのもおもしろい。
中国庭園の設計理念や用語には、日本の庭園と共通する部分が少なくない。例えば、「借景」は中国庭園の基本的な設計手法であると同時に、日本の伝統的な庭園でも多く用いられ、一般によく知られた概念である。京都嵐山の天龍寺や北山の鹿苑寺(金閣寺)の回遊式庭園をはじめとして、日本の著名な庭園は、借景なくして成立しえない。また、日本の伝統文化の一つとして世界的に知られる「盆栽」は、中国庭園において古くから用いられてきた「盆景」から発展したものである。中国の庭園は、人工的に山と水を配置し、理想化した自然を限られた空間のなかにあらわしている。こうした庭園の基本理念は、最古の造園書である平安時代の『作庭記』にも記され、日本を含む東アジア各地の庭園の設計思想に通底する。
このように本書は、庭園に関心をもつ日本の読者にとって、中国庭園を基礎から学ぶための入門的辞典であるだけでなく、日本庭園をより深く理解するための参考書にもなりうるはずである。中国庭園についてまとめた日本語の書物は、過去にいくつか出版されているとはいえ、その数は少なく、現在では入手困難なものも多い。とりわけ初学者や愛好者が利用可能な辞典となると、これまで日本において利用できるものはほとんど存在しなかった。本書は、庭園を愛し、芸術を愛する著者が、同じく庭園に関心をもつすべての読者に贈る芸術的辞典であり、中国庭園の世界を探索し、散策するための道しるべである。
【特色1】中国庭園に関する用語を750項目以上収録
庭園設計、庭園建築、庭園の置物、庭園装飾、庭園の実例など、中国庭園とそれに関係する専門用語、750項目以上を収録。
【特色2】テキストとビジュアルの見事な融合
建築学者であり画家としても高名な著者による、充実した解説文と丁寧に手描きされた挿図や写真を豊富に掲載。
【特色3】日本語で読める貴重な文献
日本語で読める中国庭園に関する書籍が少ないなか、高い学術性に裏付けられた入門的辞典として最適。
【特色4】日本庭園の理解にも
中国庭園の基本的な設計手法である「借景」や、日本の盆栽のルーツである「盆景」など、日本庭園をより深く理解するための参考書として。
【特色5】幅広い読者の方へ
庭園の設計・研究に従事する庭園景観、建築学、室内設計を専門とされる方から、中国庭園の初学者・愛好者など中国庭園を基礎から学びたい方まで、幅広くおすすめ。