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台湾における「日本」の過去と現在【new!】

台湾における「日本」の過去と現在【new!】
─糖業移民村を視座として─

[著] 野口英佑

定価2,970円(本体2,700円) 
ISBN 978-4-8433-6482-6 C3022
A5判/上製/208頁
刊行年月 2023年03月

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本書の内容

日本人がまだ知らない「台湾」の貌(かお)。

※2023年9月27日重版出来!

現代台湾社会において「日本」はどのように位置付けられ、どのような意味を有しているのか。
かつての糖業移民村に残された神社の再建から見えてくる、重層的な台湾社会の相貌。

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目次

序章 現代台湾における「日本」を再考する
 1「親日台湾」イメージの由来
 2「親日台湾」言説の限界
 3 台湾における「日本」の過去、そして現在
第1章 台湾東部の歴史的条件としての糖業移民史
 1 はじめに
 2 台湾に住む人々、台湾東部に住む人々
 3 台湾東部の歴史的特殊性と移民事業
 4 旧日本人移民村における前提条件としての糖業移民史
 5 戦後における糖業移民史の連続性
 6「台湾の縮図」
第2章 地方政府と民間組織による日本統治時代の神社再建計画
 1 日本統治時代の神社の再利用についての先行研究
 2 調査の概要
 3 鹿野村社の歴史
 4 戦後最初の鹿野村社再建計画
 5 民間組織による龍田文物館の設置
第3章 中央政府による日本統治時代の神社再建計画
 1 二〇〇〇年代の鹿野村社再建計画のその後
 2 龍田村の住民コミュニティと鹿野村社再建に対するスタンス
   (1) 日本統治時代の知識人の子孫 —日本統治時代の歴史との連続性—
   (2) 二次移民とその子孫 —行政機関との窓口—
   (3) 新移民 —「よそ者」集団—
 3 再建計画主導者・陳崇賢の原点
 4 鹿野村社再建の礎 —主導者の戦略—
 5 まとめ
第4章 地元住民にとっての日本統治時代の神社─着工後の鹿野村社再建計画
 1 はじめに
 2 着工直前に行われた政策的調整
 3 着工直後の地元住民による抗議活動
 4 地元住民との和解、そして鹿野村社の再建完了へ
 5 地元住民の鹿野村社再建をめぐる言動の裏側
  (1)龍田村に溶け込みたい新移民
  (2)地方議会議員としての「面子」
 6 まとめ
第5章 「よそ者」にとっての日本統治時代の建築物
      ─鹿野区役場の修復と新移民コミュニティ
 1 トップダウン型の歴史的建築物保存活動が主流な訳
 2 鹿野区役場跡地が「空白」となった経緯
 3 ボトムアップ型による鹿野区役場の修復と新移民コミュニティ
 4 まとめ
終章 「空白の場所」における日本統治時代の建築物の再利用が映し出すもの   
 1 はじめに
 2 日本統治時代の建築物再建から見えてくるもの
 3 おわりに
補論 再建後の鹿野村社をめぐる政治過程
 1 はじめに
 2 地方政府(鹿野郷公所)の取り組み
 3 民主進歩党の国会議員(劉櫂豪立法委員)の取り組み
 4 地元住民(龍田社区発展協会)の取り組み
 5 まとめ
あとがき

 2015年、台東県鹿野郷龍田村で日本統治時代に建てられた神社が再建された。これは、台湾において、初めて日本統治時代と同じ場所で再建された神社であり、なおかつ、初めて台湾の大工と日本の宮大工が協力して再建した事例であるといわれている。
 その鹿野村社が位置する台東県鹿野郷龍田村は、台北から遠く離れた台湾東部の田舎の小さな農村であり、かつて、砂糖の原料となるサトウキビ栽培のために日本から集められた移民(糖業移民)たちが生活をしていた移民村である。日本統治時代の終了とともに住民はすべて日本に帰国しているため、現在の村内には日本統治時代の鹿野村社を知る人々はほとんどいない。そもそもその時代には、この地で生活をしていた台湾の人々はほとんどいなかった。
 多くの日本人観光客にとって、保存され、リノベーションされている日本統治時代の建築物は、台湾で親日性を感じるひとつの象徴である。しかし実際に、台湾の人々は、単に日本が好きだから多額の資金を費やして建築物を再利用するのだろうか。(中略)行政の側から、住民の側から、個々の立場の人々の働きや相互関係に焦点を当てた上で、日本統治時代の建築物が再利用された経緯について分析を行っていく。
 日本統治時代を経験した台湾の人々、そして現代台湾社会において「日本」はどのように位置付けられ、どのような意味を有しているのか。台湾研究におけるこの大きなテーマに、新たな視点を提示することを目的に、かつて糖業移民村であった龍田村の神社の再建を通して、「親日台湾」イメージで語られる世界とは異なる、重層的な台湾社会の複雑性について議論を展開する。
(序章より抜粋)

●著者紹介● 野口 英佑(のぐち えいすけ)1995年生まれ。2018年、神戸大学発達科学部人間環境学科卒業。2020年、人事院(〜現在)。2023年、神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。【著作】「台湾における日本統治時代の神社の再建に関する一研究 —キーパーソンの働きから見る鹿野村社の再建前夜—」(『次世代人文社会研究』第17号、日韓次世代学術フォーラム、2021年4月、241〜263頁)/「台湾における日本統治時代の神社の再建と地域社会 —各アクターにとっての「鹿野神社」の位置付け—」(『東アジアへの視点』第33巻第1号、公益財団法人アジア成長研究所、2022年6月、27〜43頁)/「台湾東部の旧日本人移民村におけるコミュニティ形成過程 —「空間」と「オーセンティシティ」—」(『問題と研究』第51巻3号、国立政治大学国際関係研究センター、2022年9月、95〜129頁)/「台湾における日本統治時代の神社再建計画をめぐる政治過程 —2000年代前半鹿野村社の事例から—」(『歴史資料学』第2巻第1号、東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門、2022年11月、1〜15頁)