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歌掛けのアジア【new!】

歌掛けのアジア【new!】
―雲南省リス族の歌掛けと日本古代文学―

[著] 遠藤耕太郎(共立女子大学文芸学部教授)

定価16,500円(本体15,000円) 
ISBN 978-4-8433-6233-4 C3092
A5判/上製/カバー装/632頁
刊行年月 2023年03月

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本書の内容

抒情の原型を求めて— 中国西南部・雲南省の少数民族 リス族の貴重な声の歌掛けを採集。 アジアにおける口承文芸から 日本古代文学へと連なる 「抒情の方法」を探る。

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価格等は、KinoDen/Maruzen eBook Library/EBSCO eBooks ほか各サービスにお問い合わせ下さい。

 私の入った少数民族の村々の歌垣は2000年代初頭にはほぼ消えていった。歌垣の中心になる若者の多くが出稼ぎに出てしまったからである。(中略)彼らの最後の歌垣や喪葬儀礼に出会い、その姿を記録した者として、その記録を資料化して次の世代に残すことが、私の責務だろうと感じる。
 本書は1997年以来、断続的に調査を行なってきたリス族の歌掛け歌を資料化したものを中心としている。それぞれのストーリーの分析を施すとともに、資料にはリス語国際音声記号、中国語による逐語訳・中国語による大意、日本語による大意を付した。
 資料というと、何か無味乾燥なものというイメージがあるかもしれないが、彼らの歌掛け資料はかなり面白いし、悲しい。共同体への信頼が根底にありつつも、そこからはみ出してしまう心を上手に表現している。
 資料は歌掛けのある一部分を切り取るのではなく、その歌掛け全体を資料化するよう心掛けた。口誦の歌掛けは数時間続くところに特徴がある。どうやって数時間も歌掛けを続けられるのか。そこにはストーリーを停滞させるという基本的な技術の上に、さまざまな技術が用いられている。
 是非、資料そのものを読むことで口誦の歌掛けのストーリーの中で漂い、そこに滲む面白さや悲しさを実感していただきたい。「㈵ 歌掛けにおける抒情の方法」分析はそれを実感するための補助線でもある。
 また、「㈼リス族の歌掛けと日本古代文学」に収めたのは、リス族の歌掛け歌のありようから、七、八世紀の王権(貴族)社会の中で書かれた『古事記』や『万葉集』の文字の歌を考える論文である。文字で書かれる歌が、声の歌掛けにおける抒情の方法を、歌であることの本質として継承していると考えた。
(「はじめに」より)

目次

はじめに
●序章:リス族の暮らしと歌掛け歌

Ⅰ 歌掛けにおける抒情の方法
●第一章:〈駆け落ちストーリー〉における抒情の方法 ●第二章:〈生産ストーリー〉における抒情の方法 ●第三章:〈送魂ストーリー〉における抒情の方法

Ⅱ リス族の歌掛けと日本古代文学
●第四章:国風歌謡東歌の創出 ●第五章:歌謡物語前後 ●第六章:大御葬歌の抒情の起源 ●第七章:記載文学における異伝の源へ

Ⅲ 資料〈駆け落ちストーリー〉と歌掛け歌
●資料1:歌裁判における〈駆け落ちストーリー〉 ●資料2:歌垣における〈駆け落ちストーリー〉 ●資料3:年越し祭における〈駆け落ちストーリー〉

Ⅳ 資料〈生産ストーリー〉と歌掛け歌
●資料4:年越し祭における〈生産ストーリー〉① ●資料5:年越し祭における〈生産ストーリー〉② ●資料6:歌垣における〈生産ストーリー〉

Ⅴ 資料〈送魂ストーリー〉と歌掛け歌
●資料7:独詠形式の喪葬歌 ① ●資料8:独詠形式の喪葬歌 ②
●資料9:対詠形式の喪葬歌
●終章:声の歌掛けと書かれる歌

おわりに

【著者紹介】 遠藤耕太郎(えんどう・こうたろう) 1966年長野県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。共立女子短期大学非常勤講師等を経て、現在、共立女子大学文芸学部教授。専攻・日本古代文学、中国少数民族文化。 著書『モソ人母系社会の歌世界調査記録』(大修館書店、2003)、『古代の歌 アジアの歌文化と日本古代文学』(瑞木書房、2009)、『万葉集の起源—東アジアに息づく叙情の系譜』(中公新書、2021)などがある。