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近代日本の地方統治と「島嶼」

近代日本の地方統治と「島嶼」

[著] 高江洲昌哉

定価7,260円(本体6,600円) 
ISBN 978-4-8433-3324-2 C3021
A5判上製/函入
刊行年月 2009年11月 ※品切れ

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本書の内容

近代日本の地方制度研究の空白、「島嶼」に関する本格的研究。

刊行にあたって
 近代日本の地方制度研究は、北海道や沖縄県を除き画一的な制度のもとに置かれたように議論されてきた。しかしながら実際は、郡役所の代わりに島庁が、また町村制が未施行に指定された「島嶼」と呼ばれる地域が存在していた。本研究が対象とする「島嶼」は、これら地方制度上の特例を有する五つの「島嶼」(小笠原諸島・伊豆諸島・隠岐・対馬・奄美諸島(大島郡))についてである。
 これまで余り取り上げられてこなかった「島嶼」を取り上げたのは、単に研究上の空白であるという消極的な理由ではなく、日本近代史においても研究テーマとして、積極的な意義を有するものと認めるからである。そこで本研究の課題を提示し、研究上の位置づけを確認したいと思う。
 第一の課題は、地方制度特例の評価についてである。従来の研究では、近代日本は国民国家建設を目指し、その統合機能として、画一的で中央集権的な地方制度の制定を目指してきたといわれてきた。このような前提を踏まえるならば、なぜ「島嶼」という特定地域を対象とする例外的な地方制度が成立したのかを十分に説明することはできない。そのため、画一化論理と例外化の論理がどのように並存していたのかを説明する必要があると考える。
 第二の課題は、何故これらの「島嶼」が選ばれたのかという、各「島嶼」の背景と契機の解明である。
 第三の課題は、このような「島嶼」を対象とする制度はどのような論理をもって成立したのかという点である。
 本書の各章は、これら課題を念頭に置きつつ分析を行ったものである。これら課題は、国民国家形成期における周辺領域の国家統合の問題としてまとめることができる。そして、この問題を明らかにすることで、均質性が強調されがちな国民国家の形成期の本国において、序列的支配の構図が存在したことを明らかにすることを、本書の目的とする。つまり、画一的な統合原理と多元的な支配制度を備えた統治形態が、近代日本の地方統治の歴史的実態であったことを、「島嶼」を通して浮かび上がらせることにある。

【著者紹介】
高江洲昌哉(たかえす まさや)
1972年、沖縄県生まれ。琉球大学卒業、神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。博士(歴史民俗資料学)。神奈川大学外国語学部非常勤講師。
(主な業績)「近代沖縄の地方制度と議会」、「戦後南風原の議会活動」、「議会議員選挙」(『南風原町議会史』所収)など。
(※本データはこの書籍の刊行時のものです)

目次

序章 島嶼地方制度研究の意義と課題
 一 研究史の整理
 二 島嶼地方制度の特徴
 三 島嶼地方制度の編成過程
 四 本書の構成と方法
第一章 町村制の成立過程と「島嶼」
 一 明治一三年の郡区町村編制法の改定
 二 明治一三年から二〇年までの町村制制定の流れと「島嶼」
 三 元老院における町村制の審議と「島嶼」
 四 町村制の施行と「島嶼」
第二章 小笠原諸島における地方統治政策の展開
 一 東京府移管後における小笠原諸島の統治機構の整備
 二 小笠原島町村制の施行計画
 三 沖縄県及島嶼町村制と小笠原諸島の対応
第三章 伊豆諸島における地方統治政策の展開
 一 明治一四年の改革前後の状況
 二 明治一四年の改革と役人層の動向
 三 明治一八年の八丈島の統治状況
 四 明治一九年から二〇年代後半までの島制改革
 五 明治三〇年代の島制改革
第四章 隠岐における地方統治政策の展開
 一 隠岐における島庁設置
 二 町村制の代案をめぐる第一段階
 三 隠岐「島制」案の制定と内容
第五章 対馬における地方統治政策の展開
 一 支庁設置をめぐる動向
 二 支庁長の権限問題と島司への移行
 三 対馬の防衛問題と軍人島司の問題
第六章 大島郡(奄美諸島)における地方統治政策の展開
 一 甘蔗栽培と奄美諸島の租税問題
 二 大島県構想と大島大支庁の設置
 三 行政組織の改編と地方税独立経済
第七章 沖縄県及島嶼町村制についての考察
    ―伊豆諸島を事例にして―
 一 沖縄県及島嶼町村制案の推移
 二 伊豆諸島における「議員」選挙規定の推移
 三 伊豆諸島から見た町村長任免
 四 税率・税目の自治と日清・日露戦後経営との関係
終 章 近代日本の地方統治にとって
   「島嶼」とは何か
参考文献目録
未刊行史料を中心にした史料案内
参考資料
初出論文一覧・索引(件名/人名)

本書の特色

●近代日本の地方制度研究のなかで空白となっていた「島嶼」に関する本格的な研究。
●近代国家の成立という大きな問題意識に基づきながら史料に立脚した緻密な考察。
●近代史研究者ばかりでなく、政治学・地方行政の分野の研究者、また、島嶼振興を担う行政担当者等必見の書。