HOME書籍検索 > 日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 全5巻

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 全5巻

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 全5巻

[監修・解説] 金丸裕一 [解説] 吉田建一郎

揃定価135,300円(揃本体123,000円) 
ISBN 978-4-8433-2807-1 C3321
A5判上製/函入
刊行年月 2008年09月

関連情報

本書の内容

1942(昭和17)年以降の激変する中支那の政治・経済界の3ヶ月(のち半年)ごとの動向及び見通しを、現地編集で分析した貴重資料。

刊行にあたって   金丸裕一(財団法人東洋文庫研究員・立命館大学教授)

 日中戦争からアジア太平洋戦争、そして敗戦や引揚、続く内戦にいたる期間の中国本土の歴史、とりわけ日本の実質的支配地域(傀儡政権支配地域)における各種施策の動向や、政治・経済・社会・民生などの実態についての研究は、現在なお発展途上の段階にある。これは、大後方(国民党支配地域)や辺区政権(共産党支配地域)に対する研究が、特に一九八〇年代後半以降から飛躍的に展開した潮流と、好対照をなしているといえるであろう。
 中国近代史の文脈でいえば、後者は民族的「抵抗」の主体であり、国民党と共産党との間で、その手法には明らかな相違があったとはいえ、戦後中国の民族的「建設」の青写真は、大後方や辺区に起源を有するのであるから、これは至極当然な現象であるかも知れない。しかし、わたくしたちの日常生活を想起するまでもなく、圧倒的多数の生活者にとって、暮らしの「場」というものは、政治的あるいは軍事的圧力の加重を勘案しても、容易に移動できるものではない。別言すれば、数多くの生活者にとって、戦争や内乱を事由に居住地を転じるということは、信念や節操を遵守するといった次元とは全く異なる、極めて困難な行動なのである。
 かかる観点から当該時期を考えた場合、研究史の空白はやはり埋めねばならぬ。とりわけ、華北・華中・華南などの中国本土における経済的先進地域が、日本が発動した侵略戦争の結果として「不正常」な状況への突入を余儀なくされたことは銘記されねばならない。加之、中国近代史の中でも、この時期の記録は日本語によって残されている事例が多いが故に、史料発掘や解読、そして歴史叙述に対する運用といった基礎的作業の遂行は、われわれ日本人の原罪を認識するためにも、不可避の義務といえるのである。
 今回は、『中支那経済年報』という報告書を復刻の対象に選定した。同書は、上海共同租界の蘇州河北側、外白渡橋(ガーデン・ブリッジ)を渡った直近に位置するアスターハウス八八号(現在の浦江飯店)に拠点を置く、「中国政治経済研究所」(第一輯、一九四二年九月)、及び「中支那経済年報刊行会」(第二輯~第五・六輯、一九四二年一二月~一九四四年九月序)が「現地発行」を宣伝文句にしていた刊行物である。周知の通り、いわゆる「大東亜戦争」勃発後、英国・米国・オランダなどの連合国在華権益、そして上海ではその象徴たる共同租界の行政権自体が、日本によって全面接収された。したがって、『中支那経済年報』は、日本による華中の中枢たる上海完全占領という新局面を背景に登場したという時代性を帯びている。
 このため本書では、従来はあまり知られていなかった一九四二年五月から一九四四年六月に到る期間の、戦況・政治経済・各種統計などの公式発表、及び法規類が網羅的に紹介されるほか、各産業や経済の動向・統制政策、あるいは政治外交問題といった幅広い主題が、すべて署名論文において執筆・掲載されている。いうまでもなく、それらには当然、日本側による操作が加えられていた。伏字や記事の削除などが散見され、無批判的には用いるべきでない。同じく、発行主体や編集者、及び署名論文執筆者などについても、解題において詳述する通り、曖昧な部分が多くある。しかしながら、この時期の日本語一次史料、更に汪兆銘政権による中国語一次史料を所蔵する南京市の「中国第二歴史档案館(公文書館)」が、これらを何らかの理由で一般公開する気配すら見せぬ現況にあって、『中支那経済年報』に掲載される各種記録は、『大陸年鑑』や『朝日新聞中支版』、あるいは『大陸新報』と同じ程度において、未知の歴史を知るための重要な手がかりとなるのである。
 繰り返しになるが、特に本書成立の背景には謎の部分も多く、編集意図の分析などを含めて、わたくしたちに与えられた課題は大きい。願わくばこの復刻版の利用者諸賢は、みずからもまた解題者の立場に身を置きながら、「操作」されたことが明確な大部の二次史料を、いかにして客観的歴史叙述に援用するのかという問題群について、その重き課題を担い考えつつ、共に歩んで欲しいと思う。

【本書の特色】

●太平洋戦争中に、上海を中心とする「中支那」地域の政治・経済・社会・文化の実情をまとめた四季報(収録期間:1942年5月~1944年7月)。現地・上海にて、生の情報に基づき作成された貴重資料。

●年鑑とは異なり、3ヶ月から半年ごとにまとめられた編纂物として他に類書が無く、戦時下の上海及び「中支那」地域の動向が、刻々の変化とともに詳細に分かる資料。

●物価指数などの上海等の統計資料を巻末に多数収め、市民生活の実際を窺う情報も広く収録。

●在上海の日系企業の広告も多数収められるなど、その動向を知る手がかりともなる。

●一次史料の発掘が難しい戦時期の上海、及び「中支那」地域の政治・経済・社会・民生などの実態を知らせる好個の資料。

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 第1巻 第1輯 昭和17年 民国31年 第二・四半期

刊行年月 2008年09月 定価26,400円 (本体24,000円) ISBN978-4-8433-2808-8 C3321
A5判上製/函入

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 第2巻 第2輯 昭和17年 民国31年 第三・四半期

刊行年月 2008年09月 定価33,000円 (本体30,000円) ISBN978-4-8433-2809-5 C3321
A5判上製/函入

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 第3巻 第3輯 昭和18年 民国32年 第一期

刊行年月 2008年09月 定価26,400円 (本体24,000円) ISBN978-4-8433-2810-1 C3321
A5判上製/函入

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 第4巻 第4輯 昭和18年 民国32年 第二期

刊行年月 2008年09月 定価25,300円 (本体23,000円) ISBN978-4-8433-2811-8 C3321
A5判上製/函入

日中関係史資料叢書6 中支那経済年報 第5巻 第5・6合輯 昭和19年 民国33年 第一・二期

刊行年月 2008年09月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-2812-5 C3321
A5判上製/函入