ゆまに書房YUMANI SHOBOU ONLINE

本書の内容

※全巻品切です

戦前における宮内省の動向の詳細。天皇を始め、皇室の細かな動きをも各月毎に記録。日本近代政治史の基礎史料。

【本書の特色】
●明治43年10月から刊行された宮内省の省報「宮内省省報」（月刊）を復刻。宮内省の各種の省令・通達や人事・予算など、近代史・近代政治史のための基礎資料である。

●明治の終わりから大平洋戦争期まで毎月発行された本報は、宮内省の動向を知る基礎資料であり、すなわち日本近代史・政治史研究にとって貴重な情報の宝庫である。

●祭事・行幸啓・恩賜や、いわゆる皇室外交など、天皇・皇族の行動の記録は近代天皇制の研究に不可欠な資料である。

●宮内省の管轄にあった博物館・牧場・林野などについての報告が、継続的に掲載されており、それぞれの分野の研究に有益なデータが残されている。

■推薦
★小玉 正任（財団法人沖縄協会会長・元国立公文書館館長）
「明治43年から30年あまりの、皇室と宮内省の月々の動向が綿密に記録されているこの史料が今まで埋もれていたことに驚くとともに、本書によって、日本近代史研究の深化と展開が進むことを期待して止まない」

★阪本 是丸（國學院大学教授）
「近代天皇制国家を支えたのは憲法と同時に制定された『旧皇室典範』であったことは常識に属するが、その『典範』を実質的に運営・機能させたのは皇族会議令を最初とする一連の諸皇室令であった。その皇室令をはじめとして、およそ皇室に関わるすべての省令や告示などあらゆる関連法令や彙報を網羅し、その時々の皇室の動向を報知したのが『宮内省省報』である」

★波多野 勝（常磐大学教授）
「皇室が所有していた牧場や林野にいたるまで報告が掲載されており、天皇の祭事や行幸啓を含めて戦前の天皇制の実像をより鮮明に浮かびあがらせることが可能となった」

「監修の言葉」　　 広瀬 順皓（駿河台大学教授）
　宮内省による『明治天皇紀』が、近代史研究の必須文献であることから知られるように、日本近代史において天皇および天皇制が果たした役割は大きいし、研究論文も枚挙にいとまもない。しかしそうした研究の基礎となるべき史料は数少ない。宮内庁書陵部で公開されている『明治天皇紀』編纂史料や、「伊藤博文関係文書」や「岩倉具視関係文書」など政府要人の個人文書、あるいは国立公文書館の内閣文書等が、研究者の目に触れるに過ぎない。第一、基本史料となるべき「宮内省文書」や「内大臣府文書」も公開されていないし、政府から天皇に提出されたさまざまな上奏書類の所在も不明である。
　こうした史料の欠を補うため、従来比較的知られることの少なかった『宮内省省報』を今回刊行することになった。周知のごとく、明治２年７月、太政官の一省として設置された宮内省は、明治18年の内閣制度創設によって内閣から離れたものの、昭和20年に至るまで一貫して皇室事務を所管してきた。明治19年の宮内省官制を見るに、その所管事項は、帝室の事務を総判し、宮中職員、皇族職員を総監し、華族を管理するとある。そして明治43年10月から昭和19年に至る『宮内省省報』には、皇室令、省令を始め、皇室に含まれるさまざまな機関、帝室博物館や林野局の報告、天皇・皇后・皇太子あるいは各皇族の細部にわたる動向が克明に記録されている。試みに昭和２年の『宮内省省報』の項目を示せば、「皇室令」「省令」「告示」「達」「訓令」「通牒」「叙任及辞令」「彙報」「外国に関する記事」であり、さらに「彙報」欄には、宮中祭典、行幸行啓、勅使御使、皇族事項、王公族事項（李王家）、参拝拝謁、儀式、恩賜、報告等が含まれている。
　ここに明らかなように、『宮内省省報』は、天皇そしてその周辺の動向を知る第一級の史料である。日本近代史が天皇および天皇制を無視して語れないとすれば、本書は天皇および天皇制から見た日本近代史の一面を示すものである。特に「彙報」中の各項目は、従来把握が困難であった皇族の動きや恩賜拝謁など、細部にわたる皇室の活動を明らかにするものであり、その分析によって日本近代史に新たな視点を提供するかもしれない。今回『宮内省省報』を復刻刊行する所以である。