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近世有栖川宮歴代行実集成 全7巻

近世有栖川宮歴代行実集成 全7巻

[監修・解題] 岩壁義光

揃定価170,500円(揃本体155,000円) 
ISBN 978-4-8433-4099-8 C3321
A5判/上製
刊行年月 2012年11月

関連情報

本書の内容

高松宮宣仁親王の命によって編纂された第一級の皇室関係史料。歌道と書道を家学とし、皇室のなかでも重きをなした有栖川宮の近世における全体像を探ることが出来る唯一の史料をはじめて復刊。『天皇皇族実録』に記述のない「四親王家」各実録が公刊されていない現状を埋める唯一の資料。

≪刊行のことば≫ 岩壁義光

このたび、伏見宮・桂宮・閑院宮と共に四親王家を構成する有栖川宮の歴世行実のうち、近世の親王の行実を「近世有栖川宮歴代行実集成」として復刻刊行することになった。近年、天皇・皇族の研究が盛んとなっているが、その背景の一つとして戦前期に宮内省図書寮により編修された『天皇皇族実録』(ゆまに書房復刻刊行)を、基礎的な資料として一般に利用出来るようになったことを挙げることが出来る。しかし、同実録は大部ではあるものの、残念ながら四親王家に関する行実は盛り込まれてはいない。四親王家の実録は、これとは別に編修が開始され、終戦による頓挫を経て、戦後も昭和五十九年に至りようやく宮内庁書陵部によって「四親王家実録」として完成をみた。同実録は、『天皇皇族実録』と同様に、主要な記事の摘要である「綱文」と、典拠となった史料の抄録である「目」からなる編年綱目体で編纂され、現在、宮内公文書館において要審査ながらも特定歴史公文書として閲覧に供されている。これとは別に、有栖川宮の祭祀を継承した高松宮宣仁親王は、有栖川宮の多岐にわたる事蹟を正確に後世に伝えたいという主旨から、高松宮文庫収蔵資料は固より、諸社寺、伏見宮、徳川慶喜家、水戸徳川家など縁戚諸家等の所蔵文書などを幅広く渉猟し編纂したのが、「有栖川宮歴世行実」である。編纂にあたり、叙述の形式も紀事本末体を採用し比較的平易な文体で叙述され、その内容も有栖川宮の学芸活動を含む、幅広い叙述となっている。歴世行実は昭和一五年(一九四〇)に編纂を終え、皇族やごく限られた研究機関に頒布されたものの、殆ど巷間には流布してはいない。このたび刊行される集成には、初代好仁親王から幟仁親王に至る八代にわたる親王の行実のほか、各々の親王妃および王子女の行実も収録されており、広く流布することで、秀でた学芸活動も含め、有栖川宮への理解が進むことを期待し、さらには近世における天皇・皇族および公家研究の更なる進展に貢献出来ることを願う。 

【有栖川宮】

有栖川宮は、近世に世襲が許された四親王家の一つである。始祖は後陽成天皇第七皇子好仁親王。最初、高松宮と称したが、第三代幸仁親王のときに有栖川と改称。第五代職仁親王は「有栖川流」書法を創始、歌道にも秀で、以後、当主は天皇の書道・歌道師範を務める。将軍家・水戸徳川家のほか有力大名の姻戚ともなる。第八代幟仁親王は国事に奔走する一方、書法の「有栖川流」を大成。第九代熾仁親王は明治国家建設期に軍人として活躍、実弟第十代威仁親王も軍務と共に嘉仁親王(大正天皇)の補佐を務めたが、王子栽仁王の早世により嗣子は絶え、威仁親王妃慰子の死後、有栖川宮は廃絶となった。しかし、大正二年(一九一三)威仁親王の死後、大正天皇の特旨で第三王子宣仁親王は高松宮の称号を与えられ、祭祀を継承した。


● 好仁親王〔よしひと・しんのう〕
慶長八年(一六〇三)〜寛永一五年(一六三八)
後陽成天皇の第七皇子。はじめ七宮、後に三宮と称される。慶長一七年親王宣下。寛永二年に高松宮の宮号を賜わる。寛永四年高仁親王(母・徳川和子)誕生祝賀のため、同九年徳川秀忠薨去の弔問のため江戸に下向。同七年、秀忠養女・寧子を妃とするが、同一五年嗣子が無いまま薨去。甥の良仁親王(後水尾天皇の第七皇子〔『良仁親王行実』による〕。後の後西天皇)が継嗣となる。後西天皇の代に宮号が高松宮から有栖川宮へ改められたため、同宮の祖とされる。

● 良仁親王(後西天皇)〔ながひと・しんのう(ごさい・てんのう)〕
寛永一四年(一六三七)〜貞享二年(一六八五)
後水尾天皇の第七皇子。秀宮と称され、正保四年(一六四七)高松宮を継承。翌慶安元年に親王宣下、同四年高松宮好仁親王の王女を娶る。承応三年(一六五四)に後光明天皇が実子無く崩御し、養嗣子・識仁親王も幼少であったため、皇弟である良仁親王が践祚。寛文三年(一六六三)、在位十年で識仁親王(霊元天皇)に譲位。同七年、長仁親王(第一皇子)に八條宮(後の桂宮)を継承させ、幸仁親王(第二皇子)を高松宮継嗣に定める。同一二年、後水尾法皇の命により宮号を高松から有栖川に改める。後西院の追号は、兄の跡を襲い、甥に譲位した淳和天皇(別称・西院天皇)に因んでいる。

● 幸仁親王〔ゆきひと・しんのう〕
明暦二年(一六五六)〜元禄一二年(一六九九)
後西天皇の第二皇子。はじめ二宮、後に多嘉宮と称される。寛文七年(一六六七)高松宮を継承、同九年に親王宣下。同一二年有栖川宮に改称される。延宝八年(一六八〇)高松宮継承会釈のため、また貞享元年(一六八四)徳川綱吉の代継慶賀のため江戸に下向。謡や能楽、牡丹の栽培を好み、貞享三年に霊元天皇より能書方伝授、元禄二年には飛鳥井雅豊から蹴鞠免許。同年、徳川光圀編『扶桑拾葉集』の序文を記している。同七年に伏見宮貞致親王の薨去により若くして四親王家の長老となるが、生来蒲柳の質であり、自身も五年後に薨去。

● 正仁親王〔ただひと・しんのう〕
元禄七年(一六九四)〜享保元年(一七一六)
父は有栖川宮幸仁親王。母は家女房児島氏。多嘉宮と号する。宝永五年(一七〇八)に東山天皇猶子となり、同年親王宣下。宝永四年には家蔵の後西天皇画像を複製し泉涌寺へ奉納。同寺が護持する歴代天皇肖像の内、唯一欠けていた後西天皇の御影を補完する。宝永七年、徳川家宣の代継慶賀の使者として江戸に下向。同年に前将軍綱吉の養女・竹姫(綱吉側室寿光院の姪)と婚約するが、親王が薨去したため輿入は行われなかった。

● 職仁親王〔よりひと・しんのう〕
正徳三年(一七一三)〜明和六年(一七六九)
霊元天皇の第一七皇子。はじめ明宮と号する。嗣子無く薨去した正仁親王の遺命により有栖川宮の継嗣となる。享保一一年(一七二六)親王宣下。幼少より歌学に励み、元文五年(一七四〇)に烏丸光栄より和歌の奥義を伝授される。以後、桃園・後桜町・後桃園と三代に渡り天皇の歌道師範を務める。歌学の門人は二百数十名を数え、門人表(『有栖川宮職仁親王行実』に附載)には著名な和学者谷川士清・富士谷成章らの名が見える。また書にも秀で、父霊元天皇直伝の筆法(所謂「御宸翰流」)に独特の工夫を加えた書を創始し、のち有栖川流と称される。

● 織仁親王〔おりひと・しんのう〕
宝暦三年(一七五三)〜文政三年(一八二〇)
父は有栖川宮職仁親王。母は家女房後藤氏。寿手宮と号する。落飾後は龍淵と号した。宝暦一二年桃園天皇の猶子となり、同一三年に親王宣下。明和六年(一七六九)に後桜町天皇より和歌の奥義を伝授され、翌七年より地下門人の稽古始当座を催す。寛政一一年(一七九九)には御内和歌御会始を復旧するなど歌道に励み、歌学の門人は百二十名を数えた。安永八年(一七七九)には広橋兼胤より能書方伝授を受け、書道・歌学を有栖川宮の家学として確立するとともに、富裕な畿内郷士を家臣に加え、薬種商に紋章の使用を許すなど経済活動も積極的に行った。

● 韶仁親王〔つなひと・しんのう〕
天明四年(一七八四)〜弘化二年(一八四四)
父は有栖川宮織仁親王。母は家女房高木氏。はじめ若宮と号する。文化四年(一八〇七)に光格天皇猶子となり、翌五年親王宣下。姉妹に将軍徳川家慶室、水戸徳川斉昭室。生来「騎馬・楊弓・蹴鞠等武技を好ま」れるとともに、文化八年に有栖川宮流書道を相伝。文政三年(一八二〇)には光格上皇より和歌の奥義の伝授を受け、諸家和歌の添削を許される。以後、家学の維持に努める一方、幕府の助成を仰ぎ、これをもとに京都町奉行所管内の農・商・寺社に貸付けを行うなど利殖の途を探り、有栖川宮の窮乏打開を図った。

● 幟仁親王〔たかひと・しんのう〕
文化九年(一八一二)〜明治一九(一八八六)
父は有栖川宮韶仁親王。母は豊島勝子(近習島岡氏の女)。はじめ八穂宮と号する。文政五年(一八二二)に光格天皇猶子となり、翌年親王宣下。子女に水戸徳川慶篤室、井伊直憲(大老井伊直弼次男)室。家臣に飯田忠彦(安政大獄で自害)、歌道門人に毛利慶親(長州藩主)がいる。また、嗣子熾仁親王が皇女和宮の婚約者であったため、和宮の将軍家降嫁の一方の当事者となる。元治元年(一八六四)には国事御用掛に叙せられるが、禁門の変に際し長州藩を擁護したため蟄居謹慎となる。明治六年(一八七三)に陸海軍掛を内示されるも固辞、以後は神道教導職総裁・皇典研究所総裁を務め、明治天皇に書道を教授した。終生髷を切らず洋装を拒んだといわれる。

近世有栖川宮歴代行実集成 第1巻 有栖川宮総記/解題

刊行年月 2012年11月 定価19,800円 (本体18,000円) ISBN978-4-8433-4100-1

近世有栖川宮歴代行実集成 第2巻 好仁親王行実/良仁親王行実/幸仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-4101-8

近世有栖川宮歴代行実集成 第3巻 正仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価16,500円 (本体15,000円) ISBN978-4-8433-4103-2

近世有栖川宮歴代行実集成 第4巻 職仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価25,300円 (本体23,000円) ISBN978-4-8433-4102-5

近世有栖川宮歴代行実集成 第5巻 織仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価33,000円 (本体30,000円) ISBN978-4-8433-4104-9

近世有栖川宮歴代行実集成 第6巻 韶仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価24,200円 (本体22,000円) ISBN978-4-8433-4105-6

近世有栖川宮歴代行実集成 第7巻 幟仁親王行実

刊行年月 2012年11月 定価27,500円 (本体25,000円) ISBN978-4-8433-4106-3