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日本画報 ―付・「日露戦時旬報」― 全2巻(分売不可)

日本画報 ―付・「日露戦時旬報」― 全2巻(分売不可)

[監修] 有山輝雄 [編集・解題] 髙木宏治

揃定価77,000円(揃本体70,000円) 
ISBN 978-4-8433-2832-3 C3336
A3判上製/函入
刊行年月 2008年04月

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本書の内容

陸羯南『日本』の付録として発行された幻の新聞資料、写真グラフ紙のさきがけ『日本画報』全42号を復刻。その前身『日露戦時旬報』(全11号)も併載。

新聞『日本』(陸羯南主筆・明治22年~大正3年)の付録として発行されたタブロイド版の『日本画報』全42号(明治37年6月~明治39年10月、月2回発行、各号8頁または12頁)を復刻。従来、幻の新聞資料とされてきたが、平成15年に富山県で発見されたもの。日露戦争の報道写真、流行のファッション写真、力士の写真など多様であるが、政論紙であった『日本』が脱皮を図ろうとして発行したグラフ紙であり、写真の輪転印刷技術のさきがけとしても、新聞史研究上欠かせない資料である。そして、陸羯南研究者にとっても見逃せない文献である。『日本画報』の前身と考えられる『日露戦時旬報』(全11号)も付載。当時のジャーナリズムと戦争の関係を検証する手立てにも有用である。

『日本画報』復刻にあたって     有山輝雄(東京経済大学教授)

 今回復刻される『日本画報』は、もともと陸羯南の新聞『日本』の付録である。「解題」で詳しく説明されているように最初は『週報日本』として明治二八年六月一〇日に発刊され、後に近衛篤麿から資金援助を受ける際に近衛の雑誌『東洋』と合併し『日本附録』となった。さらに日露戦争が起きるや戦争報道に特化した付録として明治三七年二月一一日から発行したのが『日露戦時旬報』である。これは毎一〇日に本紙に付けるのであるから、速報性はなく、むしろ戦況などを整理して分かりやすくまとめて報ずるメディアであった。ただ注目されるのは、発刊の「社告」で「毎回戦時に関する画を挿入」することをうたっていることである。遠い外地での戦争を報道するにあたって画像・図像の挿入は大きな売り物であったのである。
 陸羯南の論文を看板とし、硬派の新聞である『日本』が、『日本画報』のようなグラフィク・メディアを刊行したこと自体なかなか興味深いことであるが、一般的に日露戦争報道において画報が大きな流行となり、画像・図像を売り物とするメディアが続々と発刊された。代表的なものは、『日露戦争写真画報』(明治三七年四月、博文館)、『戦時画報』(明治三七年二月二一日)、『軍国画報』(明治三七年四月、冨山房)、『軍事画報』(明治三七年四月、戦画研究会)などである。これらは雑誌であったが、各新聞も画像・図像による報道に力を入れた。『日本画報』のような新聞付録は、新聞本紙と雑誌の中間的な性格をもっていただろう。
 メディアは競って戦場のスペクタクルを迫真的に伝えようとしたのであるが、それには画家などが目撃したのではなく、想像図にちかい絵が多い。当時は携帯できる小型写真機はなく、ニュース性のある写真を撮影することは非常に難しかったのである。それでも写真は新しいメディアとして大いに注目されていた。
『日本画報』の売り物も「斬新なる写真」であった。日本新聞社が当時としては最新の写真印刷技術をもっていたことは「解題」で述べている通りだが、それを活用して発刊したのが『日本画報』であったのである。 
 『日本画報』が切り開いたグラフィックなジャーナリズムについては、今回の復刻を機に本格的な研究を進めていかなければならない。アメリカの歴史家ブーアスティンは、「実物そっくりのイメジ―絵や人間や景色や出来事のイメジ、人間や群衆の声のイメジ―を作り、保存し、伝達し、普及させる」技術の革新を「複製技術革命(グラフィク・リボルーション)」(ブーアスティン[星野郁美・後藤和彦訳]『幻影の時代』)と呼んでいるが、写真技術を活用した新聞や雑誌はまさに「複製技術革命」の先兵であった。
 こうした視覚的メディアが人々の社会認識をどのように変えたのは、メディア研究にとって重要な研究課題である。そこでは、思想史的方法による言論・報道活動の研究とはまったく異なる読解方法が求められることはいうまでもない。また、政治史、経済史、社会史研究においても歴史資料として積極的利用を進める必要がある。だが、これまでのところ利用できる画像・図像資料が限られていることもあって、ともすれば既存のイメージに合った画像を探して利用するトートロジーの傾向がある。さらにあるいは写真や図像をそのまま無批判に事実と受け取ってしまう傾向さえある。画像・図像資料には、独自の史料批判が必要なのである。
 今後、『日本画報』に掲載されている写真・画像をその主題や構図などを具体的に分析し、その意味するところを解釈していかなければならないが、同時に画家や写真家、機材、製作印刷技術などについての研究を進め、グラフィック・メディアが作りだす世界を考える必要があるだろう。(本書「刊行のことば」より抜粋)

【本書の特色】

●幻の新聞資料『日本画報』全42号をほぼ原寸大で復刻。
●政論紙であった『日本』が脱皮を図ろうとして発行したグラフ紙であり、写真の輪転印刷技術のさきがけとしても、新聞史研究上欠かせない資料。
●陸羯南研究者にとっても見逃せない資料である。
●『日本画報』の前身である『日露戦時旬報』(全11号)を併録。
●詳細な資料解題・総目次を付す。