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新・プロレタリア文学精選集 全20巻

新・プロレタリア文学精選集 全20巻

[監修] 浦西和彦

揃定価264,000円(揃本体240,000円) 
ISBN 978-4-8433-1200-1 C3393
A5判/上製/函入
刊行年月 2004年05月

本書の内容

★「すばる」2007年7月号「サルコジと『都会双曲線』」(181-184ページ)にて取り上げられました

近現代社会における文学・歴史・思想・文化に大きな影響を及ぼしたプロレタリア文学。近年、モダニズムとの関連からも改めて注目をあつめていますが、これまではごく一部の作家たちにのみ集中して光が当てられてきました。本叢書では、現在ではいずれの刊本でも読むことの出来ない著書を精選。昭和という時代の文学・歴史を実質に即して理解するために不可欠のものです。

【特色】
●現在どの刊本でも読むことが出来ないプロレタリア文学の傑作を精選。
●プロレタリア文学は、モダニズム文学との関連から今日ふたたび脚光を浴びているジャンルです。
●巻末に第一線の研究者による解説(作家紹介、作品の背景、歴史的価値など)を付しました。
●付録として1945(昭和20)年までに刊行された各収録作家の著書目録を付けました。
●大正末期から昭和にかけての時代と文学の流れを俯瞰する上で、昭和文学の研究に必須の資料です。
●文学のみならず、近代史の研究にも大いに有益な資料です。

新・プロレタリア文学精選集』刊行にあたって
浦西和彦 近現代社会における文学・歴史・思想・文化の流れの中で、日本のプロレタリア文学運動は、大きな影響を及ぼした。
 大正から昭和のはじめにかけてのプロレタリア文学は、社会の変革をめざして、権力と直接に真っ向から激しく厳しく対峙した。文学者たちが作品のテーマに政治や思想を追求するだけでなく、自ら直接に非合法の政治活動に参加していったのである。このプロレタリア文学運動を無視しては、昭和という時代の文学や歴史を語ることはできないであろう。
 周知のように、プロレタリア文学運動は、小林多喜二・中野重治らのナップ系の文学者たちの活動を中心に展開された。そのため、戦後のプロレタリア文学研究は、ナップ系の一部の作家たちに集中し、光があてられてきた。特定の作者たちについては、数度も個人全集が刊行されたが、その反面、全くなおざりにされてきた作家や作品が数多くあるのが現状である。それにはそれなりの理由があるのであろうが、今まで無視されてきた作家や作品を改めて検討することによって、新たに見えてくるものも多くあるであろう。これら無視されてきた作品群のほうが、むしろ、当時のプロレタリア文学の特有のもの、その時代の雰囲気や空気を醸し出しているのではないか。歴史を実質に即して把握するためには、これまで無視されてきた作品群に光をあてる必要があるであろう。
 新・プロレタリア文学精選集は、現在では、いずれの刊本でも読むことのできない著書を精選したものである。それらは既に入手の極めて困難な稀覯本となっている。プロレタリア文学研究だけでなく、近現代の時代の流れを理解するには不可欠のものといえよう。

新・プロレタリア文学精選集 第1巻 荒川義英『一青年の手記』大正9年 聚英閣

定価9,900円 (本体9,000円) ISBN978-4-8433-1180-6 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]黒瀬貴将

その無頼により多くの人から憎まれ、また愛された夭折作家の遺稿集。陰鬱な心と無為の中に日々を送る青年の屈折を描いた表題作を含む八篇。編者堺利彦のほか佐藤春夫、尾崎士郎らの追悼文を収録。

[著者紹介]
荒川義英 あらかわ・よしひで ?~大正8(1919)・10・1
小説家。堺利彦の友人荒川銜次郎の子。「一青年の手記」(大正3)により注目された。アナキズムに共感し、大杉栄らと交流。大正4年には雑誌『近代思想』に参加。佐藤春夫がいうところの「不良性」を持ち、満州放浪の末、26歳にて夭折した。廃兵慈善運動の内幕を描いた「廃兵救慰会」(大正3)や、「生田長江氏を論ず」(大正4)などがある。

新・プロレタリア文学精選集 第2巻 秋田雨雀『仏陀と幼児の死』大正9年 叢文閣

定価14,300円 (本体13,000円) ISBN978-4-8433-1181-3 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]井上理恵

愛児を失った母ゴータミは遺骸を抱きしめて家を飛び出す。そこに現れたのは医者と名乗る貧しい男だった。生死と精神の昇華を描く異色の表題作や自由恋愛の悲劇を描く「颱風前後」など9篇。

[著者紹介]
秋田雨雀 あきた・うじゃく 明治16(1883)・1・30~昭和37(1962)・5・12
劇作家。青森生れ。本名徳三。明治40年早稲田大学英文科卒。同年、島村抱月の推挙により『早稲田文学』に小説「同性の恋」を発表。自由劇場・芸術座に参加後、美術劇場を結成し「埋れた春」を上演(大正3)。演劇活動の傍らエスペラント研究、社会主義運動に努め、戦後共産党に入党。戯曲に「国境の夜」(大正9)、「骸骨の舞踏」(大正13)など。

新・プロレタリア文学精選集 第3巻 井東憲『地獄の出来事』大正12年 総文館

定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-1182-0 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]小川直美

妹の身売りを止めようとする恋子。金の力を振るう男に抗う波路。身請けされながらも悲しみに囚われる貞子。借金のため苦海に身を沈めた遊女の物語に、社会の底辺と廓の悲惨さを描き出した名作。

[著者紹介]
井東憲 いとう・けん 明治28(1895)・8・27~昭和20(1945)
小説家、評論家。東京生れ。本名伊藤憲。大正8年明治大学法科卒業。多くの職を転々とする。『種蒔く人』『新興文学』『文芸戦線』で活躍。ナップに属し、著作に研究書『有島武郎の芸術と生涯』(大正15)、『変態人情史』(大正15)や、昭和2年の上海の革命を描く『赤い魔窟と血の旗』(昭和5)など。晩年は主に中国関連の翻訳・啓蒙書を手掛けた。

新・プロレタリア文学精選集 第4巻 前田河広一郎『大暴風雨時代』大正13年 新詩壇社

定価16,500円 (本体15,000円) ISBN978-4-8433-1183-7 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]浅田隆

絶望の中でも死ぬに死ねない周吉、肉欲に懊悩する保、愛と貧困の中に破滅してゆく清。新天地を求めて渡米した日本人青年たちの運命を描く長編群作。左翼文学の闘将によるアメリカ体験の集大成。

[著者紹介]
前田河広一郎 まえだこう・ひろいちろう 明治21(1888)・11・13~昭和32(1957)・12・4
小説家。仙台生れ。中学退学後、徳富蘆花の門を叩く。明治40年渡米、貧困に耐えつつ英文小説を発表。大正9年帰国し「三等船客」を発表、注目される。以後、菊池寛らブルジョア文学を否定するなど左翼文学陣営の雄として活躍。著書に小説集『赤い馬車』(大正12)、『蘆花伝』三部作(昭和13~23)、翻訳にシンクレア『ジャングル』(大正14)など。

新・プロレタリア文学精選集 第5巻 加藤一夫『村に襲ふ波』大正14年 大阪屋号書店

定価11,000円 (本体10,000円) ISBN978-4-8433-1184-4 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]大和田茂

資本家山内による砂利採集の影響で津波に襲われる村。文士の熊本と共に蜂起する青年たちに資本の壁が迫る。その時、芸者桃香の心は山内と熊本の間で揺れていた。寒村の争議を克明に描く活劇小説。

[著者紹介]
加藤一夫 かとう・かずお 明治20(1887)・2・28~昭和26(1951)・1・25
評論家、詩人。和歌山生れ。明治43年明治学院神学部卒。伝道中トルストイに影響される。西村伊作の援助で『科学と文芸』を創刊(大正4)、民衆芸術運動に尽す。大正7年、福田正夫の詩誌『民衆』に参加。春秋社を興し『トルストイ全集』などを刊行する一方、アナキズムに傾倒。のちに半農生活に入り、農本主義を唱える。著書に『民衆芸術論』(大正8)など。 

新・プロレタリア文学精選集 第6巻 中西伊之助『武左衛門一揆』昭和2年 解放社

定価9,900円 (本体9,000円) ISBN978-4-8433-1185-1 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]前田角蔵

寛政五年、吉田藩八六ヶ村を率いて苛烈な紙専売に抗議の一揆を起こした義農武左衛門。日本近世史上に名高い武左衛門一揆を独特の解釈で戯曲化した痛快なる一篇。知恵と団結で立ち上がる農民の姿。

[著者紹介]
中西伊之助 なかにし・いのすけ 明治26(1893)・2・7~昭和33(1958)・9・1
小説家、労働運動家。京都生れ。木下尚江らのキリスト教社会主義に共感、職を転々としながら苦学する。朝鮮に渡り新聞記者となり政府・資本家への抗議活動を繰り広げるが下獄。昭和3年には無産大衆党を結成、運動を主導する。戦後日本共産党の衆議院議員となるが離党。作品に『赫土に芽ぐむもの』(大正11)『農夫喜兵衛の死』(大正12)など多数。

新・プロレタリア文学精選集 第7巻 田口運蔵『赤旗の靡くところ』昭和4年 文芸戦線社出版部

定価11,000円 (本体10,000円) ISBN978-4-8433-1186-8 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]荻野正博

日本社会主義史上稀に見る国際的活動家の熱気溢れるエッセイ集。北米・ロシアでの見聞を生かして運動の内実を説き明かし、革命光景やトロツキーら要人の横顔を描き出す。資料的価値の高い一冊。

[著者紹介]
田口運蔵 たぐち・うんぞう 明治25(1892)・5・1~昭和8(1933)・12・26
社会主義者。新潟生れ。二高中退後、海外を放浪。大正7年アメリカに渡り片山潜に親炙。同9年に在米日本人社会主義団を結成、翌年のコミンテルン第3回大会に日本代表として参加。ソビエト代表ヨッフェの来日に尽力。同12年、日本共産党機関誌『進め』主幹。昭和期は肺結核に苦しみ、執筆活動に終始。著書に『赤い広場を横ぎる』(昭和5)など。

新・プロレタリア文学精選集 第8巻 岩藤雪夫『賃銀奴隷宣言』昭和4年 南蛮書房

定価17,600円 (本体16,000円) ISBN978-4-8433-1187-5 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]浦西和彦

外国資本の日本産業への投資、企業のトラスト化などをからめて蓄音機会社の大争議を描いた表題作、革鞭と樫の棒が支配する北海道の監獄部屋を取り上げた「吹雪」。出世作「ガトフ・フセグダア」など6篇。

[著者紹介]
岩藤雪夫 いわとう・ゆきお 明治35(1902)・4・1~平成元(1989)・8・28
小説家。岡山生れ。本名俤。大正8年早稲田工手学校機械科卒。職工、船員などを経て、葉山嘉樹の紹介で労農芸術家連盟に参加。「ガトフ・フセグダア」(昭和3)、「鉄」(昭和4)で脚光を浴びる。労農分裂後は共産主義に共鳴。戦後は京浜工場地帯に居住し、新日本文学会へ参加、労働・文化運動に尽力。作品に「屍の海」(昭和5)、「歯車」(昭和23)など。

新・プロレタリア文学精選集 第9巻 林房雄『都会双曲線』昭和5年 先進社

定価16,500円 (本体15,000円) ISBN978-4-8433-1188-2 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]中川成美

プリズムの都市が輝く。素封家水野が抱く理想、彼の財産を狙う不良記者黒田の企み、モダンガール良子の純情を時代が飲み込んでゆく。香り立つモダニズムの中から狙い撃つ社会の欺瞞。他8篇。

[著者紹介]
林房雄 はやし・ふさお 明治36(1903)5・3~昭和50(1975)・10・9
小説家。大分生れ。本名後藤寿夫。東大在学中に中野重治らとマルクス主義芸術研究会を指導、『文芸戦線』に「林檎」(大正15)を掲載し著名となる。京大事件に連座し出獄後「青年」(昭和7)発表。昭和8年小林秀雄らと『文学界』を創刊、同11年にはプロレタリア作家廃業を宣言。戦後は流行作家となり、『大東亜戦争肯定論』(昭和39)で物議をかもした。

新・プロレタリア文学精選集 第10巻 江馬修『阿片戦争』昭和5年 戦旗社

定価11,000円 (本体10,000円) ISBN978-4-8433-1189-9 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]長谷川啓

清朝末期、大英帝国の暴虐の中に沸き起こる阿片戦争を追った表題作の他、西洋人による東洋人差別を描いた「黒人の兄弟」、戦時下の狂気に捲き込まれる哀れな老婆を描いた「名誉婆さん」など7篇。

[著者紹介]
江馬修 えま・なかし 大正2(1889)・12・12~昭和50(1975)・1・23
小説家。岐阜県高山生れ。斐太中学中退。20歳で上京、人道主義の影響を受ける。『受難者』(大正5)がベストセラーとなり文壇に地位を築く。大震災時に社会主義へ傾倒、渡欧後にプロレタリア作家同盟中央委員となる。昭和7年弾圧のため帰郷し郷土文化の研究活動に没頭、代表作『山の民』(昭和13~15)を発表。他に『本郷村善九郎』(昭和24)など。

新・プロレタリア文学精選集 第11巻 落合三郎(佐々木孝丸)『慶安太平記後日譚』昭和5年 塩川書房

定価7,700円 (本体7,000円) ISBN978-4-8433-1190-5 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]真銅正宏

由比正雪の乱に揺れる江戸。騒乱の陰に農民と決起しようとする若き侍達がいた……。革命物語を徳川の世に翻案した表題作や、弁慶話に左翼的味付けをしたユニークな小品「勧進帳」を含む戯曲4篇。

[著者紹介]
落合三郎 おちあい・さぶろう 明治31(1893)・1・30~昭和61(1986)・12・28
小説家、劇作家。本名の佐々木孝丸で演出家、俳優として活躍。釧路監獄教誨師の三男に生れる。島村抱月の芸術座に刺激され上京、アテネ・フランセに通う。秋田雨雀の「土の会」から出発、先駆座、前衛劇場などを経てプロット初代執行委員長。戦後は養子・千秋実の薔薇座に関係、映画・テレビ俳優として活躍。著書に『風雪新劇志』(昭和34)など。

新・プロレタリア文学精選集 第12巻 金子洋文『部落と金解禁』昭和5年 塩川書房

定価8,800円 (本体8,000円) ISBN978-4-8433-1191-2 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]須田久美

金解禁たぁ何だべか? 魚の相場がこんなに下がっておらたちが苦しむのも、この怪物のせいだんべ……。不況と選挙に揺れる秋田の漁村を舞台に、無産者の主張をユーモラスに描いた表題作など7篇。

[著者紹介]
金子洋文 かねこ・ようぶん 明治27(1894)・4・8~昭和60(1985)・3・21
小説家、劇作家。秋田生れ。本名吉太郎。大正2年秋田県立秋田工業機械科卒。同10年、小牧近江、今野賢三らと『種蒔く人』を創刊。「地獄」(大正12)により文壇に認められた。一方、『文芸戦線』系の劇作家、演出家としても活躍。戦後一時期、社会党の代議士となったが、一貫して新派、新国劇の発展に尽した。『洗濯屋と詩人』(昭和2)他、著書多数。

新・プロレタリア文学精選集 第13巻 明石鉄也『失業者の歌』昭和5年 先進社

定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-1192-9 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]堀部功夫

大震災の混乱の中、賃金切下げを断行した資本家と、社会への参画に目覚めた虚無主義者俊彦。争議に挑んだ若者達の青春群像「火花と体温表」と、失業者問題を表現主義的に戯曲化した表題作の2篇。

[著者紹介]
明石鉄也 あかし・てつや 明治38(1905)・1・10~昭和44(1969)・1・31
小説家。鳥取生れ。本名永井恭。東大仏文科中退。アナキズム運動に参加の後、左翼芸術同盟の機関誌『左翼芸術』に小説「起重機」「メーデーの歴史」(昭和3)を発表。労働運動に挺身する学生を描く「故郷」(昭和4)が『改造』の懸賞に入選、ナップ派作家として活躍。『鉄の規律』(昭和5)などを刊行後、大衆小説に転じた。他に『川上音二郎』(昭和18)。

新・プロレタリア文学精選集 第14巻 貴司山治『同志愛』昭和5年 先進社

定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-1193-6 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]増田周子

活動のため人は愛を犠牲に出来るのか。若き運動家篤夫と恋人美智子、組合幹部の夫との不和に悩む綾子、三人の愛と革命への願いが渦巻く中に争議は勃興する。他、ウィットに富んだ掌編など11作。

[著者紹介]
貴司山治 きし・やまじ 明治32(1899)・12・22~昭和48(1973)・11・20
小説家。徳島県鳴門生れ。本名伊藤好市。大阪で新聞記者勤務の傍ら小説を書く。大正15年上京し作家生活に入り、昭和4年日本プロレタリア作家同盟に参加。長編「ゴー・ストップ」(昭和3~4)が労働者の支持を受ける。一貫して左翼文学と大衆文学の関連を追及、戦後は大衆小説や農地運動、郷土の文化活動に活躍。他に「忍術武勇伝」(昭和5)など。

新・プロレタリア文学精選集 第15巻 今野賢三『女工戦』昭和5年 日本評論社

定価13,200円 (本体12,000円) ISBN978-4-8433-1194-3 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]高橋秀晴

社会と男から二重に抑圧される女。だが、真の連帯を求めて颯爽と立ち上がったのは女工達だった。岡山の紡績工場での労働争議を果敢に戦った彼女たちの軌跡を、脈動する情熱と冷徹な分析力で綴る。

[著者紹介]
今野賢三 いまの・けんぞう 明治26(1893)・8・26~昭和44(1969)・10・18
小説家。秋田生れ。本名賢蔵。高等小学校卒業後、様々な職を経る。大正10年、『種蒔く人』の創刊に参加し文学活動を開始。短編「火事の夜まで」(大正13)で注目を浴びる。以後、映画批評、演劇活動、労農運動などに邁進。戦後は秋田の農民運動に参加、『秋田県労農運動史』(昭和29)が高く評価される。他に自伝小説『暁』三部作(大正13~昭2)など。

新・プロレタリア文学精選集 第16巻 村山知義『勝利の記録』昭和6年 内外社

定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-1195-0 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]北川秋雄

メーデーが近づく上海。帝国主義打倒のため黄兄弟たち闘士はデモに奔走する。左翼劇場で上演された表題作と異色作「ジャンヌ・ダルク」、極左を告発する「血と学生」など革命への貢献を謳う8篇。

[著者紹介]
村山知義 むらやま・ともよし 明治34(1901)・1・18~昭和52(1977)・3・22
劇作家、演出家、小説家、美術家。東京生れ。大正10年東大哲学科を中退、翌年ベルリンへ留学。表現主義に魅了され帰国後、柳瀬正夢らと前衛芸術集団マヴォを結成、前衛美術運動を主導。次第に左翼演劇に傾倒し昭和3年に左翼劇場を結成、プロレタリア演劇の中心人物として活躍。戯曲に「暴力団記」(昭和4)、「志村夏江」(昭和7)、その他著書多数。

新・プロレタリア文学精選集 第17巻 阪本勝『戯曲資本論』昭和6年 日本評論社

定価15,400円 (本体14,000円) ISBN978-4-8433-1196-7 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]佐藤和夫

機械が席巻するドイツの織物業。辛苦にもがくロンドンの労働者。資本はいかにして人民から搾取を続けてきたか。メタフィクション、劇中劇を駆使してマルクス『資本論』を戯曲化した特筆すべき奇書!

[著者紹介]
阪本勝 さかもと・まさる 明治32(1899)・10・15~昭和50(1975)・3・22
政治家、作家、評論家。兵庫生れ。大正12年東大経済学部卒。毎日新聞記者などを勤めた後、戯曲「洛陽飢ゆ」(昭和6)を発表。日本労農党より出馬し兵庫県議、衆議院議員となる。戦後は尼崎市長、兵庫県知事を歴任後、兵庫県立近代美術館長。著書に『流氷の記』(昭和44)、『佐伯祐三』(昭和45)、翻訳に林語堂『人生をいかに生きるか』(昭32)など。

新・プロレタリア文学精選集 第18巻 徳永直『何処へ行く?』昭和6年 改造社

定価14,300円 (本体13,000円) ISBN978-4-8433-1197-4 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]紅野謙介

貧困に倒れた小作農はどこへ行けばいい? 東京か、地獄か、闘争か? 慶一は数奇な運命の末、孤独な上流夫人と出会う。それは嵐のような労働争議の幕開けだった。暴圧と闘う青年たちを描く長篇。

[著者紹介]
徳永直 とくなが・すなお 明治32(1899)・1・20~昭和33(1958)・2・15
小説家。熊本生れ。大正15年の共同印刷争議で指導的存在として活動。この体験に基づく長篇『太陽のない街』(昭和4)は学歴の無い労働者による最初の小説として注目を集めた。ナップに参加し、以降作家生活に入る。戦後は新日本文学会に参加、一貫して労働する庶民の姿を描き出した。著書に『八年制』(昭和14)、『妻よねむれ』(昭和23)など多数。

新・プロレタリア文学精選集 第19巻 藤森成吉『争ふ二つのもの』昭和8年 日本プロレタリア作家同盟出版部

定価7,700円 (本体7,000円) ISBN978-4-8433-1198-1 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]黒古一夫

ドイツで活動する赤木は日本から派遣された秦をモスクワへ送り込むため奔走する。ドイツの同志と共に義憤に燃える赤木。ソヴィエトの躍進に目をみはる秦。労働者の現状と希望を活写する一大絵巻。

[著者紹介]
藤森成吉 ふじもり・せいきち 明治25(1892)・8・28~昭和52(1977)・5・26
小説家、劇作家。長野生れ。大正5年東大独法科卒。在学中に発表した『波』(のち『若き日の悩み』と改題)が鈴木三重吉らに認められる。社会主義に傾倒、戯曲に進出し「何が彼女をさうさせたか」(昭和2)は流行語となる。昭和3年ナップ初代委員長就任。戦後は社会運動に奔走。戯曲に「磔茂左衛門」(大正15)、小説に「渡辺崋山」(昭和10)など。

新・プロレタリア文学精選集 第20巻 平田小六『囚はれた大地』昭和9年 ナウカ社

定価17,600円 (本体16,000円) ISBN978-4-8433-1199-8 C3393
A5判/上製/函入

[監修]浦西和彦 [解説]対馬美香

津軽で教師木村狷助が見たのは貧困と無知にあえぐ農民たちだった。煩悶する狷助、改革を志す与一青年、栄達を目論む一家、悲恋を育む若者らの群像を通して「村」という共同体の来歴を雄渾に描く。

[著者紹介]
平田小六 ひらた・ころく 明治36(1903)・11・1~昭和51(1976)・5・18
小説家。秋田生れ。大正12年、弘前中学を卒業し、青森の漁村の小学教師になる。昭和4年画家を志して上京。同7年唯物論研究会に参加し文学に転向。『文化集団』に「囚はれた大地」(昭和8)を連載し注目された。以降農村を舞台にした作品を発表。戦後は木村狷助などの名義で評論活動を展開。著書に『童児』(昭和10)『瑞穂村』(昭和14)など。