英語圏版 マンガ『坊っちゃん』

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役立つコラム集

エッセイ

ジョーン・E・エリクソン

 

現代の日本語学習者は、夏目漱石の『坊っちゃん』をどのように読むべきでしょうか ?

著者である夏目漱石は、語学教師は言うまでもなく、読者が何かを「得る」ことを期待しているのでしょうか ?

 

夏目漱石(1867 ~ 1916)は最も有名で愛されてきた近代日本小説家の一人であり、 漱石の作品は明治時代の日本がどのように西洋社会と関わってきたかを象徴する文学として読まれてきました。明治時代の小説は、特に言文一致運動(文語体で書かれていたものを話し言葉としての口語に一致させようとした運動)に見られるように、それまでの文学的伝統からは、明らかに異なった特徴をもっています。この時期の現代文学を作りだそうとした日本人作家らは、写実主義や自然主義といった西洋の文学 ジャンルに新しい発想を得、自我という概念を深く見つめ始めました。それゆえ、明治時代の文学は、江戸時代後期のしばしばユーモラスな戯作文学とは大きく異なり、その作風は深刻な相を帯びていると言えるでしょう。

 

 

夏目漱石の翻訳者として名作なエドウィン・マクレランは、漱石の小説は「ドラマ性が高く現代の知性を持ち合わせた作品」と特徴づけました。1 しかし、実際に一般的大衆の注目を集めたのは『吾輩は猫である』(1905)や『坊っちゃん』(1906)などの初期の喜劇小説でした。彼が他の作品で探求した斬新な形式や文体群は、簡単に分類したり要約できるものではないでしょう。さて、このエッセイでは『坊っちゃん』のユーモアや他の特徴が、 なぜ他の日本人作家らと一線を画しているのかを読者に紹介したいと思います。

 

続く